YAMAHA TFシリーズのHAのGAINステップを調べる | 音響・映像・電気設備が好き

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「ヒゲドライバー」「suguruka」というピコピコ・ミュージシャンが好きです。

知り合いにTFのHA、なんか一定の刻みで音が変わっているんだよね、と情報を貰い調べた結果を書いておきます。

 

結論を先に述べますが、YAMAHA TFシリーズは音が鳴っている最中に「リレー音がする点、ノイズフロアが切り替わる点」をまたいでのHAはなるべく触らない方が良い、です。後半に一覧表がありますので参考にしてください。

 

以下に何が起きているのか書いておきます。

 

YAMAHA TFシリーズのHAのGAIN幅はー6dB~+66dBです。このうち、リレーの切り替え音がするポイントが2つあります。+17dBと+18dBの間と、+41dBと+42dBの間です。

この2点は何かが起きているのは明白です。従って、音質に差異があってもおかしくはありません。

※YAMAHA LS9が出た時、従来はPADを押して対応していた調整範囲をリレー切り替え方式とし、無段階HAを導入した為に話題になりました。これはHAまで含めた遠隔制御を行う上では必須の事項でありました。

 

今回はそれ以上に踏み込んで、「なんか一定の刻みで音が変わっているんだよね」を調査しました。様々な測定方法がある中で、FFTによるフロアノイズを確認する手法を採用しました。

 

 

実際に確認を行った動画

 

 

 上の動画をご覧ください。HA -6dB~+46dBくらいまでは確かに6dB刻みでノイズフロアが変わっている事が確認できました。+46dB以降はFFTの低域に注目し、ショックノイズが起きているか・いないかを判断基準にしました。結果、全体を通して、6dB刻みで何かが起きている事が分かりました。

 

サービスマニュアルを参照し、HAのブロックダイアグラムを見てみます。

 

 

YAMAHA TFシリーズのブロックダイアグラム

 

 

なるほど・・・HAセクションは2値のPAD切り替え、2値の増幅率切り替え、5値のATT切り替えの3段構えに分かれているわけですね。これらの組み合わせでGAIN幅をカバーしているようです。

いちから整理してみます。まず、リレー切り替え音とノイズフロアが変わる点で区切ってみましょう。リレー音なので、PAD - IC101 - IC104とある中で、PADとIC101が動作しているのは間違いありません。
ここでおおよその予想を立てました。それは「YAMAHA TFシリーズのHAは1dBづつ調整しているように振る舞うため、デジタル領域で微調整をしているのではないか?」です。

 

再度、ブロックダイアグラムを確認してみますが、1dB刻みを調整できる仕組みが書いてありません。

動画ではノイズフロアが6dBごとに可変しているかのように見えていますが、実際は1dBステップごとにノイズフロアは上昇して行き、6dB刻みで下がる(元に戻る)動作をします。これは、デジタル領域での増幅が元に戻った事を意味するはずです

※IC104は型番から、Texas Instruments 74HCT4053 マルチプレクサ(アナログ)スイッチであることが分かります。

 

 

ここでGAINの切り替えの想像図を表にしてみました。

 

YAMAHA TFシリーズのHA GAIN切り替え想像図

 

 

デジタル領域は想像でしかありませんが、おおむね実際の動作と一致する為、大外れではないかと思います。高価なUSBオーディオI/Fは1dBづつGAIN変更が可能ですが、ミキサーの入力数分詳細なデジタルゲイン制御が可能なオペアンプを採用するのは高コストであるため、この様な仕組みを採用していると考えられます。

 

結論は、YAMAHA TFシリーズは音が鳴っている最中に「リレー音がする点、ノイズフロアが切り替わる点」をまたいでのHAはなるべく触らない方が良い、です。リレー切り替えはショックノイズが発生しやすく、ノイズフロアの切り替わり点はATTの変更をマルチプレクサ(アナログ)スイッチで行っている都合、一瞬の音途切れが起こる為です。どうしても触らなければならない時は音声が入力されていない瞬間を狙いましょう。

 

本記事がどなたかの参考になれば幸いです。また、本調査に情報提供、および協力をして下さった方に感謝します。

 

 

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