Neutrik Dシリーズレセプタクルを調べてみる話です。XLRコネクタの歴史を調べてみた、の派生記事となります。
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Neutrikは1981年に、ITT CANNON社製品では不可能だったXLRのオス・メスレセプタクルの取り付け開口穴の統一を行います。これが販売されるまで、XLRのレセプタクルの開口穴はオスとメスで変えなければなりませんでした。
このNeutrik Dシリーズレセプタクルはなんと現行製品です。このDシリーズを購入してみました。
2023年現行であるノイトリック NC3FD-V-B、NC3MD-V-B。Vは垂直基板用で現在は金メッキが同型番。発売当初の銀メッキは末尾BAG型番となる。このDシリーズは音響計測器に多く採用されている実績を持つ
上背面。PCB側のピン形状がオスメスで異なる
インサートされているロックピンの形状が異なるだけで金属製のガワもオスメス共通であることが分かる
独特のラッチ形状。これは当初は折りで再現されたが現在は写真のように耳を立てる形状に変更されている(Audiograph 3300をリペアした際に折れることが分かった)
ガワとロックを行うためのキー
カタログに掲載されているキーの解除とロック方法
1980年頃のNeutrikのカタログより。Dシリーズは1981年~1983年あたりで一般に販売が開始されたと筆者は推測する
Neutrikの1980年頃のXLRコネクタラインナップ
●【PDF】1980年頃のNeutrikのカタログ
http://lcweb2.loc.gov/master/mbrs/recording_preservation/manuals/Neutrik%20Connectors.pdf
以下がNeutrikのDレセプタクルの特許出願です。
●United States US4392699A Electrical connector
https://patents.google.com/patent/US4392699A/en
Inventor Bernhard Weingartner※
Current Assignee Neutrik AG
※Neutrikの創業者
このレセプタクルは筐体の前面だけではなく背面からの取り付けもが可能です。
※IEC-61076-2-103-2004ではITT CANNONをSize 1M、1F、NeutrikをSize 2(現在主流のPCBタイプ)、3(Dシリーズを起源としたパネルマウントサイズ)として両方が開口寸法として定められている。ITT CANNON F77は国際規格であるIEC-61076-2-103-2004に含まれていません。反対に日本国内規格であるEIAJ RC-5236にはNeutrikのDレセプタクルは含まれていません。
規格名称:IEC-61076-2-103-2004 電子機器のコネクタ-第2-103部:円形コネクタ-多極コネクタ(タイプ'XLR')のレンジの個別規格
IEC規格はこちらで購入が可能です。
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=IEC+61076-2-103+Ed.+1.0%3A2004
Neutrik Audiograph 3300
1981年 Neutrik AGが販売を開始したAudiograph 3300に採用されたNC3FD-V-B、NC3MD-V-B。特許の申請時期からしてこの製品が初搭載と考えられる。写真は筆者が手に入れた物
まさかの自社製品のみに適応させる為リップの高さを変更しているパターン・・・!!(ラッチロックのバネが折れていたので換装した後の写真)
こちらがノイトリックのCシリーズのオリジナルラッチ形状
射出したあと、ミーリングしていると思われる(もしかしたら金型から起こしてるかもしれない)
交換するぞ!と意気込んだものの、なんと基板取り付けの高さのオフセットをコネクタを切削することで対応しているカスタマイズコネクタで丸々交換は断念し、ラッチロックバネとガワの交換のみを行いました。自社製品だから成せる技!!!
今回、目的を持ってNeutrik Dシリーズレセプタクルを購入してみましたが、歴史の一部を垣間見ることが出来ました。凄い会社ですね、ノイトリック・・・。