Neutrikの圧着式XLR(XXクリンプシリーズ)のNC3MXX-HA、NC3FXX-HAの紹介と端末処理の記事です。
ノイトリックには24~22AWG(0.22~0.34㎟)に対応した圧着式XLRラインナップが存在します。今回はNC3MXX-HA、NC3FXX-HAを取り上げます。
Neutrik NC3MXX-HA、NC3FXX-HA
NC3MXX-HAのパーツ構成
NC3FXX-HAのパーツ構成
一見すると、オス(ピン)側のNC3MXX-HAはパーツが足されていて、メス(ソケット)側のNC3FXX-HAは内部の端子そのものが異なり、NC3FXXとは互換性が無いように思えます。しかし、NC3FXXはコンタクト部分を90°回すことで引き抜くことが可能です。
コンタクト部分の引き抜き方法。90°ひねり抜き出す
コンタクト部分を抜いた状態
早い話が、Neutrik NC3MXX-HA、NC3FXX-HAを購入せずとも、圧着のピンとソケットである、HA-3FXX、HA-3MXXを購入してしまえば、ハンダ付けモデルであるNC3MXX、NC3FXXを圧着式に変更することが可能です。コスト的にもこちらの方がおそらく有利です。
※NC3MXX-HA、NC3FXX-HAは日本国内では入手しづらい
Neutrik CRIMP CONTACT HA-3FXX、HA-3MXX
HA-3FXXの接写。美しい端子です。この籠状がXXシリーズのポイントです
HA-3MXXの接写。この端子はXXシリーズの初期型にははめ込むことが出来ませんので注意してください(くぼみが存在しない)
圧着するには圧着工具が必要です。指定されているのは圧着工具 HX-R-BNC、圧着工具用交換ダイス DIE-R-HA-1です。
圧着工具 HX-R-BNC + 圧着工具用交換ダイス DIE-R-HA-1
なかなか美しいダイスです。オープンバレル圧着ですが、被覆側が丸いのが特徴です
握りの部分にダイス交換用のレンチがはめ込めます
圧着手順
記事が長くなる為、途中経過はすっ飛ばします。
用意したケーブルはカナレ電気 MS202-8Pです。AWGは25(0.18㎟)で、推奨範囲の24~22AWG(0.22~0.34㎟)からは1ゲージ外れます。外れますが、今回は無視します。というのも、25AWGはカナレ電気のマルチケーブル標準サイズで、これを除外してしまうと圧着可能なケーブルが無くなるためです。
※圧着ダイスとしては規定内、引き抜き強度も筆者が試験する限りは問題はありませんでした。但し、業務で行う場合は自身で試し、自身の責任の元行って下さい。
※筆者注:AWGと㎟は換算の際に誤差があり、必ずしもAWG基準で合致するわけではありません。各ケーブルメーカも㎟とAWGを並行して載せているように多少のゆらぎがあります。
参考ケーブル内線径:
カナレ電気
MR202-*AT 0.18㎟ / 24AWG
MS202-*P 0.18㎟ / 25AWG
L-2B2AT 0.18㎟ / 25AWG
L-2B5AT 0.31㎟ / 23AWG
DA202 0.18㎟ / 25AWG
カタログより引用
用意したケーブル
透明チューブ、熱収縮チューブを用いて準備します。今回はシールド線用にΦ1mmの熱収縮チューブを用意しました。通常の業務ではΦ2mmを使用していますが、被覆を圧着する都合Φ1mmを採用しています。(Φ1mmは定尺カット対応外)
被覆を剥く長さは3mmと指定されています
0.18㎟の25AWGですので一番小さなダイスで圧着を行います。ロケータがありませんので、かなりの難易度と思ってください
Neutrik NC3FXX-HA(HA-3FXX)の圧着。こちらはバレルが長いため、3本同時に差し込む必要があります
Neutrik NC3MXX-HA(HA-3MXX)の圧着。こちらは1本づつ差し込んでOKです
並べた状態
これ以上先に工程が進むと、ハンダ式と変わらないので以上で終了です。
※シールド側の熱収縮チューブがはみ出ているのは圧着した際に飛び出たものです。
参考までに、8ch仕上げた参考例の写真が以下です。
8chマルチ参考例
これはNC3MXX-BにHA-3MXXを組み合わせた例です。この作業で旧タイプのNC3MXX-BにはHA-3MXXをはめ込む溝が無いことが分かりました。細かくブラッシュアップされているのですね。この時はΦ2mmの熱収縮チューブを使用した為、しっかりと被覆がクランプできていません。
D-sub端子の圧着を調べて試した話と組み合わせると、Dsub25 to XLR 8chのフル圧着マルチケーブルの作成が可能です。実は今年の目標の一つがこちらを作成する事でした。
Dsub25 to XLR 8chのフル圧着マルチケーブル(非納品、実験・試験用途)
おまけ
さて、ノイトリックの圧着工具ですが、こちらはドイツのRENNSTEIG(レンシュタイグ)のOEM製品です。確認したことはありませんが同じです。手動圧着工具が大好きな筆者が保証しましょう。
レンシュタイグはなんとなく水平にダイスが合わさる構造をしており、軌跡が円弧をなるべく描かないように設計されている圧着ペンチです。(完全な水平ではありません)
該当特許は恐らく以下です。
Tool for crimping contact elements
US6161416A United States
1999-06-16 Application filed by Rennsteig Werkzeuge GmbH
https://patents.google.com/patent/US6161416A/en?oq=US6161416
上から、
RENNSTEIG 圧着システムプライヤ PEW12 624-000-3(クロム仕上げは624-000-6)
KNIPEX 圧着システムプライヤ 97 43 200 A
TE Connectivity 圧着工具フレーム ERGOCRIMPシリーズ 539635-1
Neutrik 圧着工具 HX-R-BNC(クロム仕上げのみ)
今回紹介した圧着ペンチの構成は、
Neutrik
圧着工具 HX-R-BNC
圧着工具用交換ダイス DIE-R-HA-1
ですが、OEM元であるレンシュタイグに当てはめると
RENNSTEIG
圧着システムプライヤー PEW12 624-000-3
圧着ダイス 624-053-3-0
となります。こうした圧着工具は輸入代理店との付き合い方で値段にかなりの差が開きますので、購入しやすい型式を選ぶのがベストです。組み合わせなど、詳しくない・間違えたら怖い方は純正品をおすすめします。
レンシュタイグとノイトリックの兄弟。レンシュタイグはロケータがついているので大きく見えますが、この2本は同じものです
ノイトリックの圧着工具 HX-R-BNCを手に入れたということは、レンシュタイグの圧着システムプライヤを手に入れたと言うことですので、つまりレンシュタイグの交換ダイスが使用可能です。試しに624-045-3-0を購入してみました。
RENNSTEIG 624-045-3-0
接写
取り付けた写真
このダイスがあると、圧着工具を指定されていないような安価なオープンバレル端子に合致するものがまれにあり、圧着が可能となります。組み合わせは採寸しトライアンドエラーとなるので、これはこれ、それはそれ、とならないのが難しい話ですね・・・
圧着工具を指定されていないようなオープンバレル端子の圧着をした例
注:被覆の圧着はオープンバレル部分が心線に到達してはいけません
Blog内参考リンク:
オープンバレル圧着端子の適正圧着については下記外部リンクが参考になります
【PDF】Visual_inspection_of_crimped_connections
【PDF】MOLEX 圧着ハンドブック注文番号 63800-0029
以上がNeutrikの圧着式XLRの紹介と端末処理の話です。
どなたかの参考になれば幸いです。・・・日本でこれ説明しているサイトは初めてですかね??