フォンプラグのJIS規格とEIA/IEC規格~その2~ | 音響・映像・電気設備が好き

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フォンプラグのJIS規格とEIA/IEC規格という記事の続編です。

 

以前とは状況が異なり、EIA RS-453、IEC 60603-11、JIS C 6560の全規格書を手に入れました。

フォンプラグ3大規格

 

・EIA RS-453(1978)
・IEC 60603-11(1992)
・JIS C 6560(1968,1979,1994)/※EIAJ RC-6701(1977)

 

 

JIS C 6560の規格を読んで見ると、解説に大形単頭プラグはEIAJ RC-6701(1977)の寸法をそのまま採用したという記述があります。※この規格は未入手です。(EIAJ RC-6701/RC-6701Aは現在では入手不可)

 

JIS C 6560(1979)の解説より。「また、大形単頭プラグはEIAJ RC-6701の寸法をそのまま採用した。」との記述がある。

 

 

元々、3.5mmモノラルプラグ(小形単頭プラグ)のみだったJIS C 6560(1968)にEIAJ RC-6701(1977)が合流し、JIS C 6560(1979)で初めて「JISの標準プラグ」が定義された流れです。これは解説に詳細が記載されており、JIS C 6560の制定が1968年だからと言って、当時から標準プラグが規格化されていたわけではありませんでした。

 

気になるのは寸法です。驚くべきことに、EIA RS-453、IEC 60603-11のプラグ寸法は下記の部分でしか定義されていません。

 

 

EIA RS-453(1978)、IEC 60603-11(1992)、JIS C 6560(1979 & 1994)/EIAJ RC-6701(1977)の寸法比較。※JIS規格はEIA/IECに合わせる形で表記

 

 

そして、フォンプラグのJIS規格とEIA/IEC規格では「同一だろう」と仮定していたEIA/IEC規格のフォンプラグ寸法が実は異なることが分かりました。

もうこれにはビックリで、最初は何が何だか分かりませんでした。え、だって製品仕様にEIA RS-453/IEC 60603-11準拠って書いてありますよね・・・・・・書いてあるじゃん・・・・・・・・・ねぇ・・・

 

・・・気を取り直して、上記の表に、EIA/IEC両規格を統合した公差範囲内寸法を載せました。

さすがにシビア過ぎますが、恐らくはこの寸法内に収まっている(注:規格上の詳細な公差が恐らくまた別に存在するはず)ならEIA/IEC準拠と言う事でしょう。

 

 

Blog内参考リンク:

カナレ電気のフォンプラグ F-15の形状が変更された

 

 

本題はここからです。EIA/IEC規格が同じではなかった事が判明しましたが、さらなる事実としてなんとIEC/JISがほぼ同寸法である事が判明したのです。

上記の表に、EIA/IEC規格と比べやすい様に基準寸法の公差ではなくMax.とMin.表記でJIS寸法を記載しました。赤枠で囲まれた寸法は完全に同一です。

恐らく、「EIAJ RC-6701の元になった規格」とEIA RS-453規格がそもそもの分岐点だったのかと想像します。そして、この「EIAJ RC-6701の元になった規格、または製品」を参考にIEC 60603-11が定義されたと考えられます。

その証拠に、IEC 60603-11の試験プラグ寸法がJIS C 6560とほぼ同じです。

※試験プラグとはジャックの性能を試験する為に使用されるプラグ

 

 

JIS C 6560のプラグ寸法とIEC 60603-11の試験用プラグ寸法の比較

 

 

規格の見方が最初分からず、試験用プラグの寸法も参考にしなければならないと勘違いしていましたが、IEC 60603-11で定められているプラグの寸法は最初の表に記載された箇所のみです。

ですが、もし、IEC 60603-11の試験用プラグ寸法も考慮しプラグを製作したとしたら、IECとJIS寸法は寸分違わず、EIAのみが独立した形状を持つことになります。

 

 

本記事のまとめを箇条書き

 

  • フォンプラグの仕様にEIA RS-453/IEC 60603-11準拠と記載がある物が販売されているが、EIA RS-453/IEC 60603-11規格は同一寸法ではない(両規格の公差範囲内を採用していると考えられる)
  • IEC 60603-11とJIS C 6560の寸法が近似しており、IECの試験用プラグに至ってはJISとほぼ同一寸法である(言い換えると、IEC 60603-11/EIA RS-453準拠と言った場合はEIAに「寄せている」)
  • 従って、「JIS規格とEIA/IEC規格」ではなく「EIA規格とIEC/JIS規格」の2種類フォンプラグが存在すると表記しても規格上は問題がない(但し、誤解を招きます・・・)

 

以上です。

 

 

数年ほどフォンプラグを調べていますがまさかこの様な結論が出るとは思ってもおらず、驚きました・・・・・想像していた事と正反対の結論です・・・

 

これ一体、どうしたら良いのでしょうね・・・・・・・・EIA/IEC規格準拠はEIAに寸法を寄せていて、IEC規格準拠・IEC/JIS規格準拠・JIS規格準拠は同一と考えて問題が無い、と言った結論なのでしょうか・・・誰もここまで調べて考えた事もないでしょうが、腑に落ちませんね。

 

もはやプラグ製造業でないと何の参考にもならない話でしょうが、知識として是非共有できれば幸いです。