映画「銀河鉄道の父」 | ほくとの気ままなブログ

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映画「銀河鉄道の父」

 

 

2023年 キノフィルムズ 128分

 

<監督>

成島出

<原作>

門井慶喜:銀河鉄道の父

 

<キャスト>

役所広司、

菅田将暉、

森 七菜、

坂井真紀、

豊田雄大、

田中 泯

 

<内容>

小説家・門井慶喜が宮沢賢治の父である政次郎を主人公に究極の家族愛をつづった直木賞受賞作「銀河鉄道の父」を、「八日目の蝉」「いのちの停車場」の成島出監督のメガホンで映画化。


岩手県で質屋を営む宮沢政次郎の長男・賢治は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。学校卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。

やがて、妹・トシの病気をきっかけに筆を執る賢治だったが……。


役所広司が政次郎役で主演を務め、長男・賢治を菅田将暉、賢治の妹・トシを森七菜、母・イチを坂井真紀、祖父・喜助を田中泯、弟・清六を豊田裕大がそれぞれ演じる。「かぐや姫の物語」「この道」の坂口理子が脚本を担当。

 

(映画COM)

 

******************

 

 

公開当時映画館で見逃してしまたところ、県民共済シネマにて上映しているのを発見。

1月13日鑑賞。ちなみに私は県民共済に加入しているので、鑑賞料金がなんと700円なのです。

 

岩手県花巻が生んだ、詩人・童話作家の宮沢賢治。

彼とその父を中心にした家族の物語。

 

宮沢賢治の名前や作品名などは知っているその程度で、彼のおいたちや宮沢賢治がどの様な過程を経て作品が出来上がったかなどは、全く知らないでおりました。

 

この作品は彼が誕生して亡くなるまでの物語を、彼を溺愛する父親を主役として描いた作品になっています。

そのことによって、宮沢賢治という人物を俯瞰してみることができるでしょう。

 

 

とにかく長男誕生がうれしく賢治を溺愛していた父政次郎

賢治が子どもの頃に赤痢に罹患し入院した時などは、母親にかわって病院に寝泊まりして看病するほど。実際にその時に政次郎も大腸カタルを発症しその後、生涯に渡って胃腸が弱くなってしまったようです。

ちなみに賢治が森岡中学卒業後に発疹チフスに感染した際にも政次郎は看病し、自分も感染して入院してしまったようです。

 

 

内容のところにも書いておりますが、賢治は家業を継ぐことには全く関心がない、そして人工宝石の製造や、日蓮宗入信など次々とと彼が思いついた方向へ行動していきます。

それができたのも、彼にはどうしても甘くなってしまう父親政次郎の存在と、宮沢家に財力があっての事を改めて作品から知ることができました。

宮沢家は相当の財力があったようですよ。

 

 

しかしそのような家庭の中で育った賢治は、時には奇行と思われるような行動を起こしたりします。それら一連の行動は、彼の心の奥底で悩み葛藤する事から湧き出てきた物ではないかと察しました。

 

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その彼がペンをとり、物語を書くきっかけになったのが妹トシという存在。

この妹トシがいなかったら、たぶん童話作家宮沢賢治は誕生していなかったでしょうね。

その事も今作品で知ることができ、この兄妹愛は深く深くこの作品からもあふれていました。

 

俳優陣の演技という点で役所広司さんはもちろん良し、そして今更ですが菅田将暉さんの演技がなかなか良かったです。

 

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今更なんですが、私は邦画より圧倒的に洋画を観るほうが多いので、彼の出演して映画作品は「キネマの神様」くらいでほとんど観ていません。ですからこの作品を観て、なんで作品オファーが殺到する俳優さんなのか腑に落ちました。

 

俳優陣の中で強烈に印象に残ったシーン

 

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さほど期待していなかった賢治の妹トシ演じる森七菜さんですが、空気が凍り付くような、稲妻に撃たれたような、衝撃を受けたシーンがあります。

 

 

厳格な祖父喜助が痴呆になってしまう。

家の中を徘徊する。

ある時そのような場面で、かけつけた賢治の妹トシが

 

「奇麗に死ね」

 

啖呵を切り祖父喜助の頬をビンタする

そのあと

「大丈夫だよ」

といって呆けた喜助を抱きしめる

 

この一連のシーンは強烈でありそれと同時にジ~ンと心にしみる場面でした。

この愛情を込めたビンタと「奇麗に死ね」の啖呵は作品の中でも飛び抜けていました。

森七菜さん、存在感ありました!

 

主人公演じる役所広司さんですが、ちょい前にブログアップしている映画「PERFECT DAYS」

 

 

とは違ってけっこうしゃべっておりましたw

そして今作品は、とにかく泣かせてくれるのです。

 

ネタバレになってしまいますが、賢治とトシ二人とも若くして他界してしまうのですが、その別れのシーンがですね、ウルウルなんです。

賢治に対して父がとった行動も良かったです。

 

 

「日本のアンデルセンになるんでしょ」

といつも後押ししていてくれたトシが亡くなってから賢治は、

「トシがいなければ俺は何も書けねえのです」

と嘆きます。

 

 

しかし政次郎は、

「その程度で諦めるのか、今度は私が宮沢賢治の一番の読者になるじゃ、だから書け」

と賢治を励ますのでした。

 

 

賢治の病床の場面。

賢治が病床でまさに息を引き取ろうとしている。

 

 

 

政次郎は以前賢治の手帳に書かれていた詩を見つけていました。瀕死の賢治に向かって手帳に書かれていた「雨にも負けず」を朗読します。

 

雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラッテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ

南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒドリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

 

 

役所広司、倒れた菅田将暉を抱えて涙「銀河鉄道の父」父の愛 ...

 

朗読を終えると

「とっても良い詩だ」

と告げます。

それを病の床で聞いていた賢治は

「はじめておどさんに褒められた」

と喜ぶ。

 

 

もう滂沱の涙、その詩を朗読している最中から、声を我慢してヒクヒク状態になってしまいました。

これほどまでに父親が息子に愛情を注ぐ、それも行動として。

多少の脚色はあるとは思いますが、この作品は賢治の父親を通じて、宮沢賢治を俯瞰した状態から少しでも知ることができた作品になりました。

 

美しい家族、そして本当に大きな器を持った父親政次郎を感じることができました。

とっても良かったです。

アリガト ガンシタ。

しかし当たり前ですが、役者さんの演技で作品は変わりますね。

 

映画『銀河鉄道の父』| 松竹マルチプレックスシアターズ

 

 

(おまけ)

賢治と妹トシは短命でしたが、両親そして他の兄弟は結構長生きでした。

父政次郎83歳、

母イチ86歳、

妹シゲ86歳、

弟清六97歳、

妹クニ73歳

 

 

5点満点中4,0

(画像すべてお借りしました)