映画
「JOGI-街が炎に包まれた日-」
原題:Sultan
2022年 インド(ヒンディ語) 116分
<監督>
アリ・アッバス・ザファール
<キャスト>
ディルジート・ドーサンジー
クムド・ミシュラー
モハメッド・ジシャン・アユップ
<内容>
1984年、10月31日シーク教徒の居住地区に住むジョギは家族と共に食事をとり、普通の朝を迎えていた。
ジョギは父とバスに乗るため、家を出た。
いつもは混んでいるはずのバスが空いている。
そして乗客のシーク教のマークでもあるターバンを巻いている自分達を見る目に何やら不穏な空気を感じる。と同時に乗客から暴行を受けバスから放り投げられてしまった。
すでに首相インディラ・ガンジーがシーク教徒から暗殺された事への反シーク教徒の暴走が始まっていたのでした。
シーク教徒が住む地区はガソリンがまかれ焼かれる。ジョギの義理の兄もシャッターを閉じられた家の中で焼き殺されてしまう。
仲間のシーク教徒が倒れていくのをみながら、ジョギは逃げるしかなかった。
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実際に起きた事件を元に作られた作品。
報復には報復を!
この物語は、インドデリーの東側地区を舞台とし、ブルースター作戦から4か月後の1984年10月31日にインディラ・ガンジー首相が暗殺された直後の、シーク教徒大虐殺の3日間を描いたドラマ。
そこには同胞(シーク教徒)を救おうとした主人公ジョギの奮戦の物語でもあり、彼を助けた友人(シーク教徒ではない)と彼を捕らえようとする友人の物語でもある。
この映画はアメリカ在住のブロ友で、「インド映画マスター」のすずめちゃんが以前記事にしていた作品。
実話をもとに描いた作品とのこと。
実話ベースの作品って、けっこう好きなんですよね。
「日本のNetflixでも配信されていますよ」
と、すずめちゃんからの親切な情報がありましたので早々に鑑賞したしだい。ただ記事アップはだいぶ遅くなりましたが^^;
さてその実話とは前述した、インドのガンジー首相がシーク教徒によって殺害される。
その事によって反シーク教徒が報復に出て虐殺が行われた事件。
信じる宗教が違うというだけで、ついこの間まで隣人だった者がその隣人によって殺害され焼き殺されていく。
またそこには、地元の議員が自分が国会議員になるために、邪魔なシーク教徒の議員を一掃してしまおうと、シーク教徒に懸賞金をかけて暴徒を野放しにしてしまった。一人男の野望が更に悲劇を生んでしまうことになるのでした。
シーク教の魂
髪を切りターバンを外す
ジョギの友人の警察官、彼はシーク教徒ではないのですがジョギと彼の家族を逃がそうとします。しかし自分達だけが逃げることはできないと悩むジョギ。せめて家族同様に過ごしてきた近所の人達だけでも一緒にと懇願する。
ここから一気にジョギたちの脱出劇へと展開していきます。
仲間たちの脱出のために、ジョギはシーク教の魂ともいえる髪の毛を切り、ターバンを外す決意をする。
トラックの荷台には細工をし、家族近所の人たちをうまく隠す。
検問所で荷台を調べられる際に見つかりそうになったり、ハラハラドキドキスリリングな展開も挿入されています。
果たして無事全員が暴徒たちから逃れることができたのでしょうか。
そしてジョギを助ける友人、また彼を捕らえようとする友人との隠れた過去が明かされるサスペンス的要素もあったりして見応えも十分。
しかしこの映画、今まで観てきたインド映画の概念を覆してくれました。
インド映画は好きですが、まだまだそんなに多くの作品を鑑賞したわけでもありません。ですから、多くを語ることはできないかもしれませんが、ちょいと感想です。
今まで観てきたインド映画はたいていヒーローが活躍してハッピーエンドだったり、あのインド映画特有の歌や踊りが挿入されてはいるのですが、この作品についてはそれらが一切なし。
扱っている内容も実話ベースでシリアスでもありますが、まったく過去観たインド映画作品とは違っていました。
ラストでは、ヒーローになるはずの主人公ジョギが・・・・・・・。
これほどまでのインド映画、このような作品内容は初めてでした。
それがまず一番の印象。
そしていつも思うのですが、宗教とは?
そして人間の私利私欲とは、何故にこれほどまで争いの種になってしまうのかを痛切に感じたしだい。
ぜひ機会があればご覧くださいね。
通常イメージするインド映画とはまた違ったティストを味わうことができるでしょう。
5点満点中3.8
(おまけ)
報復を招いてしまったブルスター作戦
さてこの物語の元になった事件、内容をより知るうえで少し予習です。
まず「ブルースター作戦」という出来事がありました。
黄金寺院事件とも呼ばれています。
1984年6月にシーク教徒の総本山であるハリマンデル・サーヒブ(黄金寺院)に拠点を置いたシーク教徒過激派を排除するために、当時のインド首相インディラ・ガンディの命によって実行された事件。
パンジャーブにおける秩序の悪化改善のために行われたたようです。グループのリーダーも殺害されたりしました。
ただこの行動は軍事的には成功しましたが、政治的には失敗だったようで、その作戦に呼応するようにシーク教徒の殺害などが広まってしまいました。
仲間の殺害またシーク教徒の寺院への冒頭などがあって、逆にシーク教徒のほうにも恨み復讐が生まれていきます、そしてそれはブルースター作戦を指示した、首相の暗殺につながっていきます。
要するに宗教的なことがやはり根底には流れていて、恨みの連鎖に繋がっていくのです。
同年10月31日、首相インディラは俳優ピータ・ユスティノフのからインタビューを受けながら歩いている途中、2人のシーク教徒の警護警官により銃撃を受け、病院に搬送される途中で死亡し暗殺されてしまいます。
この実際の出来事の後から、この映画の冒頭につながっていくのです。
インド人=ターバンではなかった!
今更ですがもうひとつこの作品を観て新たに知ったこと!
インド人=ターバンと思っておりましたがこれは違いました。
シーク教徒のアイデンティテイとして、古くからの戒律に従って生きる正式なシーク教徒の男性は、髪やひげを
「神から与えられたもの」
として決して切らないという。
彼らはその長く伸びた髪をターバンで覆い、豊かなあごひげを蓄えている。
インド軍では通常の制帽の他、シク教徒の兵士用として「制式ターバン」が設定されているようです。
シーク教徒の有名人では、ある程度の年齢の方なら覚えているかと思いますが、
歌うインド人の演歌歌手「チャダ」さん、
プロレスラー「タイガージェットシーン」
などいますね。
インドの人がみんなターバンを巻くのかと思っていました(笑)ただ最近ではシーク教徒の人もターバンを巻かない人もいるようです。
(画像全てお借りしました)