午前十時の映画祭13
映画「愛と悲しみのボレロ」
原題:Les Uns et les Autres
1981年 フランス 185分
<監督>
クロード・ルルーシュ
<音楽>
フランシス・レイ
ミッシェル・ルグラン
<振付>
モーリス・ペジャール
<キャスト>
シモン・メイヤー/ロベール・プラ:ロベール・オッセン、
ジャック/ジェイソン・グレン:ジェームズ・カーン、
スーザン/サラ・グレン:ジェラルデン・チャップリン、
アンヌ・メイヤー:ニコール・ガルシア、
マクダ・クレーマー:マーシャ・メリル、
カール・クレーマー:ダニエル・オルブルスキー、
ボリス/セルゲイ・イトビッチ:ジョルジュ・ドン、
エブリーヌ/エディット:エブリーヌ・ブイックス、
フィリップ:ジャン・クロード・ブーチェ、
パトリック・プラ:マニュエル・ジェラン
タチアナ/タニア・イトビッチ:リタ・ポールブールド
<モデルとなった人物>
・セルゲイ・イトビッチ - ルドルフ・ヌレエフ、
・カール・クレーマー - ヘルベルト・フォン・カラヤン、
・エブリーヌ - エデッィト・ピアフ、
・ジャック-グレン - グレン・ミラー
ただしモデルであって彼らの伝記にはなっておりません。
<内容>
フランスのクロード・ルルーシュ監督が1981年に手がけ、ルドルフ・ヌレエフ(バレエダンサー)、エディット・ピアフ(歌手)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮者)、グレン・ミラー(音楽家)という実在の4人の芸術家をモデルに、運命の糸に結ばれた人々の物語を描いた3時間を超える大作メロドラマ。
ベルリン、モスクワ、パリ、ニューヨークを舞台に、第2次世界大戦前から戦中、そして現在へと至る中で、芸術家たちのドラマチックな人生模様が描き出される。
「シェルブールの雨傘」「ロシュフォールの恋人たち」などで知られるミシェル・ルグランと「ある愛の詩」のフランシス・レイという映画音楽の巨匠2人が音楽を担当。
さらに、モーリス・ラベル作曲、モーリス・ベジャール振付によるバレエの名作「ボレロ」を天才バレエダンサー、ジョルジュ・ドンが舞う。
(映画COM)
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「人生には2つか3つの物語しかない。しかし、それは何度も繰り返されるのだ。その度ごとに初めてのような残酷さで…」
40年の時と国を超えた大河ドラマ
午前十時の映画祭13 大トリに相応しい作品
3月16日、トーホーシネマズ上大岡にて鑑賞。
1930年から1980年代にわたり、パリ、ニューヨーク、モスクワ、ベルリンを中心とする2世代3世代4家族とその周辺の人々の人生を描いた大作。
戦争に翻弄され生き残った人、
命を失った人、
失くした子供、
亡命した子供、
ナチスの収容所の悲劇や、
スタリーングラードでの勝利で終戦へと突き進む人々、
この2~3世代4つの家族は、親や子供たちが序盤では互いに散発的に交錯して物語が進行します。
しかし物語の収束点として主要人物全てが関わることになるクライマックス、フランスのチャリティ公演でのラスト15分は圧巻です。
運命の細い糸が大河の流れにのまれ、絡み合ってチャリティ会場に流れ込む、因果応報カルマの世界。
とにもかくにも衝撃のラスト15分は、固唾を呑み、瞬きすることも忘れ、スクリーンに釘付けになることでしょう。
この15分のために、それまでの3時間弱のドラマがあったといっても過言ではない程。
この作品は何度か観ておりますが、鑑賞後数年経過するとまた映画館で鑑賞したいという欲望に囚わていた作品。直近映画館で観たのは、2015年にジャック&ベティでの鑑賞ですからもう9年も経過してしまっていました。とにかく見ごたえのある大作です。
そして一番最初に観た時には、人物の相関関係については途中でショートしてしまいましたが、ただ主要人物たちが何かに導かれるようにコンサート会場に終結してクライマックスを迎えた事は理解できました。
そのクライマックス、伝説ともいえる
ラベル作曲、モーリス・ペジャール振付によるバレエ「ボレロ」を、
天才バレエダンサー「ジョルジュ・ドン」が舞う
シーンに衝撃と感動を覚えたのを昨日の事のように思い出します。
初めて観る方は、前述したように登場人物の相関関係が途中からわからなくなってくる可能性が大の内容。というのは、一人の俳優が親と子を演じたりして、なにやら散発的にそれぞれが交錯したりするので、時にパニックに陥るかと。
たとえばグレン・ミラーをモデルにしたジャックはジェームズ・カーンが演じ、その奥さんスーザン役にはジェラルデン・チャップリンが演じます。
しかしある場面からはその二人の娘役サラを、
ジェラルデン・チャップリンが演じ、その兄をジェームズ・カーンが演じるものだから、あれさっきまで父親だと思っていた人物が兄だったとは??など少々混乱したりすることはあるかもしれません。
それでも、なんとなくそれぞれがラストに終結されて、フィナーレを迎えることは感じられると思いますので、わからなくてもこんがらがっても心配ご無用ではあります。
ただ把握できていると、ラストでの印象がより感慨深く心に突き刺さってくることでしょう。
とにかく圧巻のフィナーレには鳥肌が立つことは間違いなし。
今回私は鳥肌に&ウルウル状態になってしまったのであります。
さてこの映画はラベルの「ボレロ」が曲としては印象が強いのですが、ミシェル・ルグランとフランシス・レイというフランス映画音楽の巨匠2人の挿入曲も素晴らしいのです。
↓挿入曲
そのミッシェル・ルグランですが、時折時空を超えて登場する盲目のアコーディオン弾きとして登場していますのでお見逃しなく!
ラストシークエンス
映画史に残る15分
ユダヤ人ということで収容所へ送られるシモンとアンヌ。
その輸送される貨物の中から、自分たちの赤ん坊に僅かな希望を託し線路に捨てた。
その子供は奇跡的に助かる。
そして数年後収容所から生還できたアンヌは、捨てた息子を長年探し続けていた。
時の経過とともに、アンヌは老齢による痴呆を患ってしまっている。
自分の過去を全く知らなかったその時捨てられた子どもダビット。彼はパリで弁護士として成功していたが、あることで自分の過去と母親の存在を知る。
八方手を尽くして精神病院に入院している母アンヌを見つけ、ようやく再会を果たす。
このシーンがいいのです。
ロングショット、後ろ姿で病院のベンチに座る母親。
その母親に声をかけようかと、2度3度近づいては離れ、そして最後は母親の隣に座って話しかけるダビットでした。
そこから一切のセリフなしでフィナーレになだれ込んでいきます。
曲が流れる。
タンタタタタンタン♪
タンタタタタンタン♪
(けっしてニシタンクリニックではありませんw)
静寂の中に終始同一リズムが保たれ、2種類の旋律が繰り返される音楽ボレロ。
その旋律に合わせて全身の息吹を感じる舞
場面は1981年、パリ。
トロカデロ広場には、多くの観客がつめかけ、今からはじまるユニセフ・チャリティ・コンサートを息をのんで待ちわびていた。
その映像は世界各国へTV中継される。
TVの進行役は、パリ解放後、対独協力者として迫害を受けたシャンソン歌手エブリーヌ、その娘エディット(エブリーヌ・ブイックス)。
踊り手はモスクワでバレエの指導をするタチアナ、その息子で西側に亡命したセルゲイ(ジョルジュ・ドン)。
楽団を指揮する過去にヒトラーの前で演奏し賛辞を受けたことがあり、またシャンソン歌手エブリーヌとも関係があったエディットの父でもあるカール(ダニエル・オルブルスキー)、
歌うのはアメリカの楽団ジャックの娘サラ(ジェラルデン・チャップリン)と、シモンとアンヌの孫でもありダビッドの息子パトリック(マニュエル・ジェラン)。
それぞれが運命の糸にあやつられるように一つの曲、ラベルの“ボレロ”のもとに結集される。
そして再度申しましょう、とにもかくにも天才バレエダンサー「ジョルジュ・ドン」が舞う、この「ボレロ」のクライマックスシーンを観るだけでも価値ありの作品でございます。
時間が経ち映画の内容を忘れたとしても、必ずやこの「ボレロ」の舞のシーンは脳裏に焼き付けられていることでしょう。
これまた映画史に残るラストーが印象的な映画作品でした。
5点満点中4.2
◆主要登場人物◆
(モスクワ)
ボリショイバレエ団でプリマドンナの選考会が行われる。一人のバレリーナは少女タチアナ(リタ・ポールブールド)。しかし彼女は選ばれない。彼女の才を見抜いた選考委員ボリス・イトビッチ(ジョルジュ・ドン=二役)。
その後二人は結婚し子どもが生まれる。
ソ連のタチアナは独ソ戦最前線で民族舞踏で兵士たちを勇気づける。
タチアナと結婚したのち、徴兵されたボリスは、スターリングラードで戦死する。
その子供はのちに国際的バレエダンサーとなるセルゲイ(ジョルジュ・ドン)。
(ベルリン)
将来を嘱望されたクラシック音楽家カール(ダニエル・オルプリフスキ)は、ヒトラーの前で演奏、賛辞を受ける。
彼はのちに世界的な指揮者となる。
(パリ)
ショーサロン「フォリー・ベルジェール」に二人のバンドマンがいた。
ピアニストのシモン(ロベール・オッセン)とバイオリニストのアンヌ(ニコール・ガルシア)だ。
やがてが結婚し子供をもうける。しかし第二次世界大戦が勃発する。ユダヤ人だったシモンとアンヌは、赤ん坊と共に強制収容所へ送られる。
二人は収容所へ向かう列車から赤ん坊だけを線路に降ろす。赤ん坊は、小さな村の神父に育てられる。(赤ん坊は劇中後半、パリで活動する弁護士ロベール(ロベール・オッセン2役)となる。
(ニューヨーク)
有名なジャズビッグバンドを率いるジャック・グレン(ジェームス・カーン)。
ノルマンディ上陸作戦後にはバンドを率いてパリ解放に立ち会うことになる。その娘サラ(ジェラルデン・チャップリン)は数年後ジャズボーカリストとして成功を収める
(パリ占領とパリ開放後)
ドイツに占領されたパリでは、バーで一人のシャンソン歌手エブリーヌ(エブリーヌ・ブイックス)がドイツ軍人を相手に歌っている。
その相手はドイツ軍軍楽隊長カール。彼はベルリンでヒトラーに賛辞を受けた人物だった。
彼女はパリ解放後ドイツの協力者として迫害を受けることになる。
カールとの間にできた私生児を出産し両親の暮らす田舎町へと帰郷するが、そこでも世間から迫害を受けて自殺してしまう。
彼女の娘エディット(エブリーヌ・ブイックス)はエブリーヌの祖父母に育てられる。
(画像すべてお借りしました)