こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

何とも鬱陶(うっとう)しい蒸し暑さを感じる休日の午後になっています。

世界のニュースを見ますと、さらに鬱陶しさを感じるのは、私だけでしょうか?

たまたま、目にした記事ですが・・・「歴史」の知識がない者が多くなっているという内容のものがありました。

 

共和制ローマの政治家・哲学者であったマルクス・トゥッリウス・キケロは、現代にも通じる名言を残した人物として知られていますが次のような言葉を残しています。

 

Not to know what has been transacted in former times is to be always a child. If no use is made of the labours of past ages, the world must remain always in the infancy of knowledge.

 

過去に起きたことを知らないのは、永遠に子どものままでいることだ。過去の時代の労苦が活用されなければ、世界は知識の幼年期にとどまり続けるだろう。

 

なるほど、現代に生きる人の心にも刺さりそうだ・・・と思うのは、

私だけでしょうか?

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、「サーカディアンリズム(概日リズム)」「神経学的疼痛」の関係について、お話をしてみたいと思います。

 

「夜間に痛みが激化する」、「明け方に症状が悪化する」といった「疼痛」の強度の時間的変動は、慢性疼痛、とりわけ神経障害性疼痛(neuropathic pain)を抱える患者さんにおいて広く共有されている臨床的特徴であると言えます。

 

帯状疱疹後神経痛(PHN)、糖尿病性末梢神経障害性疼痛(DPNP)、三叉神経痛などの患者の多くが、「痛みの強さ」に明確な「日内変動(diurnal variation)」があると報告しています。

 

近年の時間生物学研究は、この現象が単なる主観的な錯覚ではなく、生物学的な根拠に基づくものであることを解明しつつあります。

その中核を担う(になう)のが「サーカディアンリズム(概日リズム)」、すなわち体内時計であるというわけです。

 

生物は約24時間周期で生命活動を律する精巧な分子時計を細胞レベルで保有しており、睡眠・覚醒サイクル、体温調節、ホルモン分泌、免疫・炎症反応など、ほぼすべての生理機能がこのシステムによって時空間的に制御されていることがわかっていいます。

 

近年の基礎医学研究は、侵害受容閾値の変動中枢および末梢の神経炎症、さらには疼痛関連神経回路の可塑性(かそせい)もまた、この「サーカディアンリズム(概日リズム)」の強力な制御下にあることが示されているのですね。


そこで、今回は「サーカディアンリズム(概日リズム)」を動かす分子のメカニズムをお話をした上で、神経障害性疼痛の発症・維持メカズムとの関わりを、末梢神経から脊髄後角、大脳皮質に至る階層的な視点からお話をしてみたいと思います。

 

そして、これらの知見をもとにした「時間医療(クロノセラピー:chronotherapy)」の可能性について、お話をしてみたいと思います。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

 

「サーカディアンリズム(概日リズム)」は、約24時間周期の自律的な振動を示す生理機能であり、その分子基盤は「時計遺伝子(clock genes)」群からなる転写・翻訳フィードバックループ(Transcription-Translation Feedback Loop: TTFL)によって形成されています(参考1)。

 

1)J Pain Res. 2025 Sep 9:18:4687-4698. 

Circadian Rhythms and Pain: A Narrative Review on Clock Genes and Circadian-Based Interventions

Zong-Qi Huangら

 

生体全体のリズムを統御(とうぎょ)する「マスタークロック(主時計)」は、視床下部の「視交叉上核(Suprachiasmatic Nucleus: SCN)」に存在します。

 

SCNは網膜の固有「視細胞」から投射する網膜視交叉上核路(RHT)を介して光情報を受け取り、外界の明暗サイクルに同調します。

 

そして、神経性・体液性シグナルを介して全身の「末梢時計」の位相(ずれ)を統合・調節しています(参考2)。

 

2)Annu Rev Neurosci. 2012:35:445-62. 

Central and peripheral circadian clocks in mammals

Jennifer A Mohawkら

 

「マスタークロック(主時計)」の存在する「視交叉上核(Suprachiasmatic Nucleus: SCN)」の代表的な出力システムとしては、次のようなものがあることが知られています。

 

松果体(しょうかたい)からの「メラトニン分泌」(夜間に上昇)および、「視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸」を介した「グルココルチコイド(ヒトではコルチゾール:朝方に上昇)」の分泌が挙げられ、これらが全身の「末梢時計」の重要な同調因子(zeitgeber)として機能することが分かっています。

 

重要なことに、「侵害受容シグナル」の一次中継組織である「後根神経節(Dorsal Root Ganglion: DRG)」や、痛みの統合・修飾を行う「脊髄後角(Dorsal Horn)」などの神経組織にも、SCNとは独立して自律的に機能する末梢時計が存在することが明らかになっています。

 

この痛みの受容・伝導路における「局所的な分子時計」の存在こそが、「神経障害性疼痛」「サーカディアンリズム」を直接結びつける解剖学的・分子生物学的基盤となるというわけですね。

 

では、ヒトにおける「痛み」の感受性に日内変動(概日変動)は、

どのようにして生じるのでしょうか?

 

この話題は。後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

 

image

(フェアモントホテル東京のテラスから)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

高気圧に覆われて、全国的に青空が広がっているようです。

最高気温は九州から関東で30℃以上の真夏日になる所が多いのだとか。

 

これからは「熱中症」にも気をつけなければなりませんね。

そして、「紫外線」にも・・・ということになります・

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

「皮膚」は人体最大の臓器であり、外界との物理的・化学的・微生物学的バリアとして機能しています。

加齢に伴う皮膚の変化、すなわち「皮膚老化(skin aging)は、しわ・たるみ・色素沈着といった整容的問題にとどまらず、創傷治癒の遅延、感染防御能の低下、皮膚癌リスクの上昇など、臨床的に極めて重要な問題を抱えて(かかえて)いる と言えます(参考1,2)
 

 

「皮膚老化」は、加齢そのものに起因する「内因性老化(chronological aging)」と、紫外線・大気汚染・酸化ストレスなどによる「外因性老化(extrinsic/photoaging)」に大きく分けられますが、両者は最終的に共通の細胞・分子メカニズムを呈するとされています (参考1,3)。

 

皮膚の大半の体積と力学的強度を担うのは「真皮層」であり、その構造的・機能的劣化こそが「皮膚老化」の本質であると考えられているのですね。

 

今回は、真皮層の中心的細胞である「線維芽細胞」の老化(セネッセンス)に焦点を当て、その機序と新たな治療戦略をお話ししてみたいと思います。

 

では、なぜ「皮膚老化」はその根本的な原因が「線維芽細胞」の「老化」にあると言えるのでしょうか?

真皮層に存在する「線維芽細胞」は、コラーゲン(I型・III型)、エラスチン、グリコサミノグリカン(GAG)などの細胞外マトリックス(ECM)を産生し、真皮の機械的強度を維持しています。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

加齢に伴い「線維芽細胞」は「萎縮」した形態をとり、細胞外マトリックス(ECM)との機械的相互作用が低下する。

 

その結果、c-Jun/AP-1 経路の活性化を介して MMP-1(コラーゲン分解酵素)が上昇し、「コラーゲンの断片化」が進行するという悪循環が成立するからという理由になります(参考1,4,5)。

 

さらに、老化線維芽細胞は 「SASP(senescence-associated secretory phenotype)」 を介して炎症性サイトカインを放出し、周囲の組織恒常性を破壊する(参考3)。

それならは、自分の「線維芽細胞」を培養し、投与すればよいのではないか?・・・と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

しかしながら、培養し増殖した「線維芽細胞」を血管内投与しても、全身の皮膚真皮へ均一に移行し、「老化線維芽細胞」を置き換えるという考えは、現在の医学的知見からは考えにくいとされています。

実際に「線維芽細胞」を血管内投与した実験は2007年にIWoodleyらによって報告されています。

VII型コラーゲンを発現するように改変したヒト線維芽細胞を静脈内投与すると、マウスの皮膚創傷部位へ集まり、VII型コラーゲンを届け、創傷治癒を促進したと報告されています(参考6)。

血管内投与された特定の「線維芽細胞」が、実験的創傷部位に集まり、創傷治癒を助ける可能性があることが示されたものですが

、創傷部位では炎症、血管透過性亢進、ケモカイン、ECM変化などが起こるため、繊維芽細胞などが細胞が集まりやすくなり、これが創傷の治癒を早めたことを確認した実験ということになります。

傷があれば、線維芽細胞はホーミング、つまり、血管内に投与された線維芽細胞が、損傷した組織から発せられるシグナルを感知し、自動的に集まって修復する能力がありますということであり、

これは、正常な老化皮膚やしわのある皮膚に血管内投与した「線維芽細胞」が選択的に集まり、皮膚を若返らせることを示したものではないと強調されているところなのですね。

 

それならば・・・この老化した「線維芽細胞」の活性を取り戻すには、どうしたらよいのか?・・・ということになりますね。

 

このお話の続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>5月19日


今回は、加齢に伴う「線維芽細胞」の老化をどうすればよいか?・・

・というお話をさせていただきました。

加齢に伴い、真皮層にある「線維芽細胞」の分子生物学的なミクロの変化は、どうなっているのか?・・・を見てみますと、以下のように報告されています。

p16 ↑
p21 ↑
SA-β-gal活性 ↑
SASP(IL-6, IL-8 など)↑
 

この組み合わせは、「老化細胞(セネッセンス細胞)」が同定される際に用いられる標準的な組み合わせとされています。

 

このうち、「SA-β-gal活性」は、老化細胞(cellular senescence)を同定する際に最も広く用いられる古典的マーカーのひとつですね。

そして、「老化細胞」のマーカーである「p16」が発現しています、この「p16」はG1期に細胞周期を停止させます。


つまり、「p16」の発現は細胞の老化を促進すると考えられているわけですね。さらに「p21」も発現しています。


「p16」「p21 」は、いずれも「細胞周期」を停止させるタンパク質」ですが、役割・誘導機構・には重要な違いがあるとされています。

「p16」は、慢性・不可逆的老化の指標とされます。つまり、細胞分裂が進み、テロメアの長さがそれ以上は分裂できない「ヘイフリックの限界」に達したことを示しています。そして、この「p16」は、加齢に伴い指数関数的に増加すると考えられています。

それに対して、「p21」は、DNA損傷や一時的ストレス状態により、細胞分裂が停止した状態であり、「可逆的」な変化を示すものとなります。つまり。修復後に再増殖可能であるとされています。

実際に真皮層に存在する「線維芽細胞」は加齢により、p16 ↑,p21 ↑,SA-β-gal活性 ↑が認められることが多くの研究で示されています(参考7)。


では、「p21」の多く発現した「老化細胞」は、周囲の正常細胞に「老化」させる能力は小さいのでしょうか?

残念ながら、多くのモデルで、「p21陽性老化細胞」は、炎症性サイトカインやケモカインの放出等が生じる「SASP」を示すというデータが多数あります(参考8)

さらに、Wylesらが総説で指摘するように、老化細胞化した「線維芽細胞」は単に「機能不全細胞」であるだけでなく、「SASP」を介して周囲の組織恒常性(そしきこうじょうせい)を破綻させる「能動的な加害者」として作用すると述べられています(参考9)。

つまり、DNA損傷や一時的ストレス状態により、細胞分裂が停止した状態であり、「可逆的」な変化を示す「線維芽細胞」も一旦、「老化細胞」になってしまうと・・・テロメアがそれ以上は分裂できないとことに達した「ヘイフリックの限界」に達して「老化細胞化した線維芽細胞(老化線維芽細胞)」と同様の振る舞いをする・・・ということになります。

 

では、「線維芽細胞の老化細胞化(老化線維芽細胞)」がもたらす皮膚の構造的・機能的破綻としては、どのようなことが起きてくるのでしょうか?

これについては、以下のように説明されています。


「老化線維芽細胞」のコラーゲンI/III合成能は低下する一方、MMP-1, MMP-3, MMP-9の発現が上昇し、ECMの分解優位状態が成立すると報告されています(参考10)。

結果として皮膚は薄く、弾力性を失い、しわ形成が進行し、創傷治癒が遅延するというプロセスを辿ることになります。

Quanらは、ヒト皮膚への機械的支持(架橋ヒアルロン酸注入)が「線維芽細胞」を再活性化し、コラーゲン合成を回復させることを臨床的に示しており、 これは「線維芽細胞 ⇔ ECM」の双方向相互作用が老化制御の核心であることを示しています(参考11)。

では、「老化線維芽細胞」の対する治療とは、どのようなものになるのでしょうか?

1) NAD⁺前駆体補充療法(NMN),NAD+点滴

NAD⁺の低下はサーチュイン活性低下を介して、ミトコンドリア機能低下、DNA修復障害、SASP亢進、エピジェネティック異常をもたらす[参考12,13)。

NAD+の前駆体である「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」の補充は、これらを統合的に改善することが期待されています

(参考14)。

「皮膚線維芽細胞」においては、Changらが、「酸化ストレス」でセ「老化細胞」になってしまった「ヒト真皮線維芽細胞」に対し、「NMN」が、細胞内の「活性酸素種(ROS)」と「ミトコンドリア活性酸素種(ROS)」を低減し、NF-κB  p65亢進を抑制し、SIRT1とNrf2発現を回復させ、SA-β-gal陽性細胞を減少させることを報告しています(参考15 )。

これは「NAD⁺/SIRT1(サーチュイン1)軸」の活性化が「線維芽細胞セネッセンス(老化線維芽細胞)」を実際に逆転させうることを示す重要な前臨床的証拠であると考えられています。
(ただし、ヒト皮膚における局所投与の有効性については、なお大規模臨床試験が必要であるとされています)

2) iPS細胞由来エクソソーム

 iPSC由来エクソソームとは、iPS細胞が分泌するナノサイズの細胞外小胞で、タンパク質・miRNA・mRNA などを運び、親細胞と同様の再生・保護作用を「細胞を入れずに」発揮できることから、細胞フリー再生医療の有力候補とされています (参考16)

その「iPS細胞由来のエクソソーム」は、miRNA・mRNA・成長因子・タンパク質を内包し、細胞間情報伝達を担う細胞外小胞であることが分かっていますが・・・

 

UVB照射により傷害を受けた「線維芽細胞」および、継代培養によって自然に「老化細胞」に至った「線維芽細胞」の双方で、SA-β-gal活性、MMP-1/MMP-3発現を有意に低下させ、I型コラーゲン発現を回復させることが示されています[ 参考17,18)。

さらに「p16」,「p21」への影響をみてみますと・・・
「iPS細胞由来エクソソーム」は、老化したヒト「線維芽細胞」や他の老化モデル細胞に対して、老化マーカー(p21, p16, SA‑β‑gal)の発現を抑制して、若返り効果を示すことが報告されています。


特に皮膚線維芽細胞モデルでは、i「iPS細胞由来エクソソーム」が、老化関連遺伝子発現の回復やSA‑β‑gal活性の低下、p21/p16の発現抑制などを通じて老化表現型を改善することが明らかになっています(参考19,20.21)

さらに一部の研究ではSASP因子(IL-6, TNF-α, MMP群等)も同時に抑制されることが示唆されており、「炎症環境改善」も期待できるとされています(参考22)

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い
 

参考)
1)J Cell Commun Signal 2023 Sep;17(3):523-529.
Skin aging from the perspective of dermal fibroblasts: the interplay between the adaptation to the extracellular matrix microenvironment and cell autonomous processes
Gary J Fisherら

2)Biochem Pharmacol. 2017 Oct 15:142:1-12.
The impact of cellular senescence in skin ageing: A notion of mosaic and therapeutic strategies
Marie Toutfaireら

 

3)Gerontology. 2024;70(1):7-14.
Cellular Senescence in Human Skin Aging: Leveraging Senotherapeutics
Saranya P Wylesら

 

4)Arch Dermatol. 2008 May;144(5):666-72.
Looking older: fibroblast collapse and therapeutic implications
Gary J Fisherら

5)J Invest Dermatol . 2013 Mar;133(3):658-667.
Enhancing structural support of the dermal microenvironment activates fibroblasts, endothelial cells, and keratinocytes in aged human skin in vivo

Taihao Quanら

 

6)Mol Ther . 2007 Mar;15(3):628-35.
Intravenously injected human fibroblasts home to skin wounds, deliver type VII collagen, and promote wound healing
David T Woodleyら

 

7) Int J Mol Sci. 2020 Jan 5;21(1):343.
Derivation of Cell-Engineered Nanovesicles from Human Induced Pluripotent Stem Cells and Their Protective Effect on the Senescence of Dermal Fibroblasts
Hyelim Lee ら

 

8) Mol Metab. 2023 Jan:67:101652.
p21 induces a senescence program and skeletal muscle dysfunction
Davis A Englundら

 

9) Gerontology. 2024;70(1):7-14. 
Cellular Senescence in Human Skin Aging: Leveraging Senotherapeutics
Saranya P Wyles ら

 

10) Arch Dermatol. 2008 May;144(5):666-72.
Looking older: fibroblast collapse and therapeutic implications
Gary J Fisherら

 

11) J Invest Dermatol. 2013 Mar;133(3):658-667.
Enhancing structural support of the dermal microenvironment activates fibroblasts, endothelial cells, and keratinocytes in aged human skin in vivo
Taihao Quan ら

 

12) Trends Cell Biol. 2014 Aug;24(8):464-71.
NAD+ and sirtuins in aging and disease
Shin-ichiro Imai ら

13) NPJ Aging Mech Dis. 2016 Aug 18:2:16017.ら
It takes two to tango: NAD+ and sirtuins in aging/longevity control
Shin-Ichiro Imai ら

 

14) Nat Rev Mol Cell Biol. 2016 Nov;17(11):679-690. 
Slowing ageing by design: the rise of NAD+ and sirtuin-activating compounds
Michael S Bonkowski ら

 

15) Int J Mol Sci. 2022 Jul 7;23(14):7539.
Nicotinamide Mononucleotide and Coenzyme Q10 Protects Fibroblast Senescence Induced by Particulate Matter Preconditioned Mast Cells
Tsong-Min Chang ら

 

16) Molecules 2024 Mar 26;29(7):1468. 
The Combined Anti-Aging Effect of Hydrolyzed Collagen Oligopeptides and Exosomes Derived from Human Umbilical Cord Mesenchymal Stem Cells on Human Skin Fibroblasts
Huimin Zhu ら

 

17) Int J Mol Sci. 2018 Jun 9;19(6):1715.
Exosomes Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Ameliorate the Aging of Skin Fibroblasts
Myeongsik Oh ら

18) Tissue Cell. 2026 Jun:100:103363.
Exosomes from APCs ameliorate human skin fibroblast senescence via p53/p21 signaling pathway
Yong-Chao Zhangら

 

19) Int J Mol Sci. 2020 Jan 5;21(1):343.
Derivation of Cell-Engineered Nanovesicles from Human Induced Pluripotent Stem Cells and Their Protective Effect on the Senescence of Dermal Fibroblasts
Hyelim Lee ら

20) Int J Mol Sci. 2018 Jun 9;19(6):1715.
Exosomes Derived from Human Induced Pluripotent Stem Cells Ameliorate the Aging of Skin Fibroblasts
Myeongsik Ohら

21) Mater Today Bio. 2023 Mar 4:19:100600.
iPSC-sEVs alleviate microglia senescence to protect against ischemic stroke in aged mice
Xinyu Niu ら

 

22) Mater Today Bio. 2023 Mar 4:19:100600.
iPSC-sEVs alleviate microglia senescence to protect against ischemic stroke in aged mice
Xinyu Niu ら

 

 

 

 

(ホテルニューオータニ東京)

(レッドローズガーデンの風景)

 

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

5月の連休も終わり、いつもどおりの日常が戻っています。

なかなか、調子が戻らないという方も多いかもしれませんね。

 

暦の七十二候は「蚯蚓出(みみずいづる)」となっています。

この「みみず」とは、いわゆる「ミミズ Earthworm」ですね。

 

「進化論」の提唱者である「チャールズ・ダーウィン」は

『種の起源』の出版後もミミズの研究を続け、約40年間にわたってその習性を観察・実験したことが知られています、

そのダーウィンは、次のような言葉を残しています。

 

"It may be doubted whether there are many other animals which have played so important a part in the history of the world, as have these lowly organized creatures."

 

「これほど下等に組織された生き物でありながら、世界の歴史においてこれほど重要な役割を果たしてきた動物が他にいるかどうか、疑わしいほどである」

 

ダーウィンは、この「遅くて目立たない行動の積み重ね」が長い年月を経て地球を劇的に変えるというプロセスに、自身の「漸進的(ざんしんてき)な進化論」との共通性を見出していたと言われています。

 

ミミズは、土壌を肥沃(ひよく)にする作用を持つことは有名ですが、「ルンブロキナーゼ」と総称される一群の酵素を持つことでも知られています。

この「ルンブロキナーゼ」は、血栓を溶解したり、血小板凝集を抑制、また、血液粘度の低下ことが報告されています。

 

ミミズを乾燥させ、粉砕したものでも、この「ルンブロキナーゼ」は一般的なタンパク質酵素と比較して極めて頑健(robust)な性質を持つことが知られています。

 

つまり、ミミズを乾燥させて、粉末化したものには、「ルンブロキナーゼ」の性質は残っており、血栓の形成を抑制する効果を持つことになりますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

 

(AIで画像を作成)

 

今回は、ヒトの免疫細胞のひとつである「NK細胞」が、「老化細胞」を本当に除去できるのか?・・・というお話をしてみたいと思います。

 

まず。「細胞老化」について、復習してみたいと思います。

 

「細胞老化(cellular senescence)」とは、DNA損傷やテロメア短縮などのストレスに応答した、不可逆的な細胞周期停止状態を指します。

 

これは 「p16INK4a」 や 「p21CIP1 」の発現、「SA-β-gal活性」、そして炎症性因子を放出する「SASP(senescence-associated secretory phenotype)」を特徴とするものであるとされています(参考1,2) 。


「加齢」に伴いこれらの細胞は各臓器に蓄積し、慢性炎症(inflammaging)を介してフレイルや動脈硬化、肺線維症などの加齢関連疾患を発症させるわけです(参考3,4) 。
 

このような「老化細胞」を除去することが、かつて、INK-ATTACマウスを用いた研究で、老化細胞の除去が『健康寿命』を延長することが報告されています (参考5)、

 

この時点から、老化細胞にアポトーシス(プログラムされた細胞死)を誘導する「セノリティクス(Senolytics)」という概念が出てきたと言えるかもしれませんね(参考6)。

 

この「老化細胞」には、細胞表面に「NKG2D活性化リガンド」(MICA/B、ULBPs)が誘導されており 、この分子を認識した

「NK細胞」により「老化細胞」はアポトーシスを起こすことになります。つまり破壊されるわけですね。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

もう少し詳しくお話をしますと・・・「NK細胞」は、活性化受容体と抑制受容体の統合シグナルに基づき、パーフォリン/グランザイムを介して老化細胞をアポトーシスへと導くということになります(参考7) 。

 

この「NK細胞」の投与は、単に「老化細胞」にアポトーシスを起こさせて、これを消失させるだけではなく、以下のような作用を起こすことが知られています。

 

1)組織線維化の抑制

 肝線維化プロセス(肝硬変など)において、老化した星細胞はNK細胞によりクリアランスされ、修復が促進されます(参考8) 。

 

2)腫瘍抑制

老化した腫瘍細胞はCCL2などのSASP因子を介してNK細胞をリクルートし(呼び寄せて)、NKG2D依存的に排除されます (参考9,10) 。

 

3)個体老化の制御:

パーフォリン欠損(Prf1−/−)マウスでは老化細胞の蓄積と慢性炎症が加速し、寿命が短縮することがわかっています(参考11,12) 。

                                            

NK細胞が存在しても、「老化細胞」の細胞膜に穴をあける「パーフォリン」がない場合には、「老化細胞」がアポトーシスが起こせませんので、「老化細胞」が蓄積し、寿命は短縮してしまうわけですね。

 

さらに言えば単に「NK細胞」を培養増殖させ、それを投与するだけでは、「パーフォリン」があまり出ない状態(=活性が低い状態)のNK細胞が混在してしまうために期待したほどには「老化細胞」のアポトーシスは起こらない・・・という可能性が出てくるわけですね。

 

これには「フローサイトメトリー」をいう機器を用いて、活性が高い

NK細胞のみを選択して利用する必要があります。

 

「NK細胞」は、その数ではなく、「活性」が重要である・・・と強調されるのは、上記のような理由があるからなのですね。


JTKクリニックでは、この事実を重要視して、GCリフォテック社製の培養法で、かつ、フローサイトメトリー法を用いて、活性化した「NK細胞」のみを使用しています。

 

 

このように「NK細胞」は、組織の恒常性(こうじょうせい)を維持するための生理的な「掃除屋」として機能しているのですね。

(参考13) 。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>5月12日

 

今回は、「NK(ナチュラル キラー)細胞で「老化細胞」を減らすことができるのか?・・・というお話をさせていただきました。

「NK細胞」は、生まれつき備わった免疫(自然免疫)を担うリンパ球で、「ウイルス感染細胞」や「がん細胞」を素早く殺傷する力を持っています(参考14,15)。

そして、本文内でもご紹介をしたように「NK細胞」は、「老化細胞」を監視し、排除する力も持っています(参考16)。

その排除の方法としては、本文内でもお話をしましたが、多くの老化細胞はストレスで、「NKG2Dリガンド」を発現し、これを認識した

「NK細胞」が活性化されます(参考17)。

この「NKG2Dリガンド」は、細胞の「ストレス」を免疫系に知らせる目印として働き、癌や感染などでも発現することが知られていますので、理論的には「癌細胞」を破壊することが可能であるということになりますね。

この「NKG2Dリガンド」は通常の健康細胞では低発現なのですが、DNA損傷・過増殖・低酸素・感染・酸化ストレス などで誘導されることが分かっています(参考18)。

それでは、「老化細胞」をどこまで除去すればよいのか?・・・という問題になりますが・・・

「老化細胞」の蓄積は多くの老年病や機能低下に因果的に関わり、マウスでは遺伝学的・薬理学的にこれらを減らすと、心臓・筋肉・認知機能など広範な改善が得られています。
 
現時点の前臨床データは「老化細胞負荷の減少は有益」と一貫していますが、「どこまで減らせばよいか」「どのサブタイプは残すべきか」という問いの正確な答えは、まだ出ていません。ヒトでの長期安全性データも不足しているというのが現状であると言えます(参考19)

その理由は、老化細胞は単なる「悪役」ではなく、生命維持に必須の役割も担って(になって)いるからということになりますね。

多くの動物実験およびヒト臨床前研究より、「慢性的蓄積した老化細胞」の選択的除去は、加齢関連疾患予防・健康寿命延伸に有望と考えられています。

しかしながら、一方で「急激または広範囲な排除」は本来必要な組織修復・恒常性維持機能まで損ねてしまうかもしてないことが明らかになっています(参考20)。

特定臓器(肝類洞内皮細胞/膵β細胞など)では置換不能な老化細胞集団も存在し、その消失後には線維化促進や代謝障害など深刻な副作用も観察されています(参考21)。

また、ちょっと想像するのが難しいのですが・・・免疫監視系との協調バランスも重要であり、高齢個体では免疫不全→蓄積→病態悪化という悪循環も示唆されています(参考22)

以上のように考えると・・・真の「健康長寿」を実現するためには「老化細胞」をすべてなくすというよりは、「有益な老化細胞」を温存しつつ「有害な老化細胞」のみを標的とするのが理想
であるわけですが、現時点では乗り越えるべき課題が残っています。

老化細胞にアポトーシスを起こさせる際、がん免疫で言うのドレス現象は、少なくとも現在の文献からは示されていません。

 

としますと、投与したNK細胞と同等か。それ以下の数の「老化細胞」氏はアポトーシスを生じないと言えることから、決まった数の「NK細胞」を検査データに異常ないことを確認しながら、一定期間ごと

に投与する方法は、現時点で充分に選択枝のひとつとなり得るものであると考えられますね。

 

1億個の老化細胞が半年に1回消失するのと、しないのでは「将来の健康寿命にどのような影響を与えるのか?・・・大変、興味深いところです。できるだけ理論的にその説明ができる日が楽しみです。

 

まだまだ、この問題は深く追及をしていきたいと思っています。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

参考)

1)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9. 

Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespan

Darren J Bakerら

 

2)Physiol Rev. 2019 Apr 1;99(2):1047-1078.

Cellular Senescence: Aging, Cancer, and Injury

Arianna Calcinottoら

 

3)Nat Med. 2015 Dec;21(12):1424-35. 

Cellular senescence in aging and age-related disease: from mechanisms to therapy

 Bennett G Childsら

 

4)Nature. 2014 May 22;509(7501):439-46.

The role of senescent cells in ageing

Jan M yan Dwursen

 

5)Nature. 2016 Feb 11;530(7589):184-9

Naturally occurring p16(Ink4a)-positive cells shorten healthy lifespanDarren J Bakerら

 

6)Nat Med. 2022 Aug;28(8):1556-1568.

Cellular senescence and senolytics: the path to the clinic

Selim Chaibら

 

7)Nat Rev Immunol. 2015 Jun;15(6):388-400.

Perforin and granzymes: function, dysfunction and human pathology

llia Voskobolinkら

 

8)Cell. 2008 Aug 22;134(4):657-67.

Senescence of activated stellate cells limits liver fibrosis

yalery Keizhannoyskyら

 

9)J Exp Med. 2013 Sep 23;210(10):2057-69. 

p53-dependent chemokine production by senescent tumor cells supports NKG2D-dependent tumor elimination by natural killer cells

Alexandre Lannelloら

 

10)Science. 2018 Dec 21;362(6421):1416-1422. 

NK cell-mediated cytotoxicity contributes to tumor control by a cytostatic drug combination

 Marcus Ruscettiら

 

11)Nat Commun. 2018 Dec 21;9(1):5435. 

Impaired immune surveillance accelerates accumulation of senescent cells and aging

Yossi Ovadvaら

 

12)J Immunol. 1994 Aug 15;153(4):1687-96.

A novel population of expanded human CD3+CD56+ cells derived from T cells with potent in vivo antitumor activity in mice with severe combined immunodeficiency

PH Luら

 

13)J Leukoc Biol. 2019 Jun;105(6):1275-1283. 

Senescent cells: Living or dying is a matter of NK cells

Fabrizio Autonangeliら

 

14)J Allergy Clin Immunol . 2023 Feb;151(2):371-385.
Human natural killer cells: Form, function, and development
Emily M Maceら

15)J Hematol Oncol 2021 Jan 6;14(1):7.
 NK cell-based cancer immunotherapy: from basic biology to clinical developmen
Sizhe Liuら

16)Cells . 2022 Mar 17;11(6):1017.
Aging of the Immune System: Focus on Natural Killer Cells Phenotype and Functions
Ashley Brauningら

17)Front Cell Dev Biol . 2025 Jun 30:13:1597230.
Mechanisms of natural killer cell-mediated clearance of senescent renal tubular epithelial cells
Nils David Funkら

18)Immunol Rev. 2010 May;235(1):267-85.
Effect of NKG2D ligand expression on host immune responses
Marine Champsaurら

19)
Semin Immunol . 2018 Dec:40:101275.
Senescent cell clearance by the immune system: Emerging therapeutic opportunities
Larissa G P Langhi Prataら

20)Inflamm Regen. 2024 Jun 3;44(1):28.
Role of cellular senescence in inflammation and regeneration
Yuki Saitoら

21)Cell Metab . 2020 Jul 7;32(1):87-99.e6.
Defined p16High Senescent Cell Types Are Indispensable for Mouse Healthspan
Laurent Grosseら

22)Open Biol. 2020 Dec;10(12):200309.
Senescent cells and macrophages: key players for regeneration?
Sonia S Elderら
 

(東京ガーデンテラス紀尾井町 

赤坂プリンス クラシックハウスの薔薇

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

朝から気持ちのよい青空が広がっています。小鳥のさえずりも聞こえ、開けた窓からは、気持ちのよい「そよ風」を感じることができます。

この季節になると・・・なんとも心地よい眠気を感じますね。

次のような言葉が、ふと浮かんできます。

 

「春眠 暁(あかつき)を覚えず」

 

中国・唐代の詩人、孟浩然(もうこうねん)の『春暁(しゅんぎょう)』の冒頭の句ですね。

 

春眠不覺曉     春眠 暁を覚えず 

處處聞啼鳥     処処 啼鳥を聞く 

夜來風雨聲     夜来 風雨の声

花落知多少     花落つること 知る多少ぞ

 

この意味は次のようなものになります。

 

春の眠りは心地よく、夜が明けたことにも気づかない。

あちらこちらから、鳥の鳴き声が聞こえてくる。

そういえば昨夜は、風雨の音がしていた。 

花はいったい、どれほど散ってしまったことだろう。

 

となりますね。

 

都内の桜はすべて散ってしまいましたが、「春の眠気」はまだ、残っているように感じるのは、私だけでしょうか?

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?

 

(AIで画像を作成)

 

前回は、自己免疫疾患のひとつである「全身性エリテマトーデス(SLE)」の病態の安定に「NAD+」が有効である可能性をお話をさせていただきました。

 

もちろん、この疾患の治療法は確立していますし、今後のより有効な治療が検討されている状況ですので、「NAD+」は、治療というよりは

サポートの役割になるかもしれませんね。

 

今回は、SARS-CoV-2感染後の「新型コロナ後遺症」「NAD+」が有効である可能性について、お話をしてみたいと思います。

 

新型コロナ「SARS-CoV-2」感染は、急性期において強い炎症応答、インターフェロン応答異常、代謝撹乱、凝固異常、臓器障害を引き起こしうるとされています。

 

回復後も、一部の患者さんでは、倦怠感、息切れ、認知機能障害、睡眠障害、自律神経症状などが遷延し、「Long COVID」として問題となっているわけですね。

 

その病態は多因子的であり、ウイルス残存、自己免疫、慢性炎症、微小血管障害、自律神経異常など複数の機序が想定されているわけですが、近年、その背景の一つとして「エピジェネティックな傷跡(きずあと)というものが注目されています(参考1,2,3,4)
 

SARS-CoV-2感染は、宿主細胞の「DNAメチル化」や「ヒストン修飾」に影響を及ぼし、免疫関連遺伝子、炎症関連遺伝子、代謝関連遺伝子の発現パターンを変化させうると報告されているわけです (参考5,6)。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

感染急性期には、ウイルスと宿主の相互作用の中で、「DNAメチル化酵素」や「ヒストン修飾関連因子」の発現変動が報告されており、

これが免疫回避や炎症制御異常に関与する可能性が指摘されているのですね(参考4,5,6)


さらに、COVID-19罹患後数か月にわたり「DNAメチル化」の異常や「エピジェネティック・ドリフト」の増加が持続することが報告されています(参考7,8,9)

 

さらに「エピジェネティック時計」を用いた解析では、生物学的年齢の加速、とくに免疫系や炎症状態を強く反映する指標の変化が観察されており、これが「Long COVID」の症状持続に関与する可能性が示唆されている (参考10,11)

 

もちろん、これらの研究は主として関連を示すものであり、「エピジェネティック異常」「Long COVID」の症状の原因なのか、あるいは持続炎症の結果なのかは、なお十分には解明されていないわけです。

 

しかしながら、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染は、PARPやCD38などのNAD+を消費する酵素を活性化し、NAD+代謝回転を亢進させ、細胞内NAD+低下を引き起こしうると報告されている (参考12,13)

 

その結果、ミトコンドリア機能低下、酸化ストレス増大、DNA修復異常、炎症制御低下などが起こり、これらはLong COVIDの病態と重なると論じられている(参考14,15,16)

 

現時点の研究は、SARS-CoV-2感染が炎症反応の中でNAD+を強く消費し、その代謝異常がミトコンドリア障害や慢性炎症を通じて「Long COVID」に関与しうるという有力な仮説を支持するものであると言えますね。

 

ただし、「Long COVID」の症状と「NAD+枯渇」と症状を直接結びつける決定的な臨床データはまだ限られており、残念ながら「NAD+」補充療法の有効性も確立されていないとも言えます。

 

しかしながら、「Long COVID」の状態においても「NAD+」の低下は

存在し、さまざまな症状につながっている可能性は否定できないのではないかと思ったりもします。

 

最後に「老化」・「全身性エリテマトーデス(SLE)」・「新型コロナ後遺症」に共通する「エピジェネティックな変化」とは・・・ということになるのですが・・・この続きは、後日の話題にしたいと思います。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

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<ブログ後記>4月29日

 

今回は、一見するとまったく別に見える「老化」、「全身性エリテマトーデス」、「新型コロナ後遺症(Long Covid)という3つの疾患が、その共通の基盤として、「NAD+」低下の性質を持つというお話をさせていただきました。

いずれにおいても細胞内の「NAD⁺」プールの慢性的減少が報告されており、その原因として「消費亢進」と「合成低下」の双方向から「NAD⁺」の恒常性が破綻(はたん)している可能性が指摘されているわけです。

 

それぞれの病態をざっくりと見てみると、以下のようになります。

「老化」では、「DNA損傷」が蓄積することによるPARP1の持続的活性化により「NAD+」が消費され、また、」「老化細胞」の炎症が持続することに伴う「CD38」発現亢進が「NAD⁺」の消費を加速させることになります。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、自己核酸(DNA/RNA)や免疫複合体が「核酸センサー」を刺激し続けることで、常に「I型インターフェロン(IFN-I)」が過剰に産生される「インターフェロン・シグネチャー」という状態にあります。

 

この「I型インターフェロン(IFN-I)」シグナルが、形質細胞様樹状細胞(pDC)や単球の「CD38」発現を強力に誘導する。

「CD38」は細胞表面や細胞内に存在する酵素ですが、「NAD+」を基質として利用し、ADPR(ADPリボース)やcADPRに変換します。

 

この酵素活性が過剰になると、細胞内の貴重なエネルギー代謝の鍵である「NAD+」が浪費(消費)され、その結果として、「NAD+」が低下し、やがて、枯渇する可能性もあるというわけです。

 

「NAD+」が低下すると、細胞は以下のような「エネルギー危機」に陥ります。

  • ミトコンドリア機能の低下: ATP産生がスムーズに行かなくなります。

  • DNA修復能力の減退: NAD+を必要とする修復酵素(PARPなど)の働きが鈍ります。

  • 炎症の増幅: NAD+不足は細胞を「老化細胞」のような状態(SASP:炎症性表現型)に導き、さらに炎症性サイトカインを放出させる悪循環を生みます。

「SARS-CoV-2」の感染では、抗ウイルス応答として誘導される「IFN(インターフェロン)誘導性の「PARP9/12/14」が、「モノADPリボシル化」を介して活性化し、急性期から回復期に至るまで「NAD⁺」を消費し続けます。

 

この一連のメカニズムは、「NAD+の戦場(NAD+ battlefield)」

とも呼ばれ、以下のように進行します。

 

SARS-CoV-2に感染すると、宿主の自然免疫としてインターフェロン(IFN)応答が引き起こされます。

  • これにより、抗ウイルス作用を持つ「インターフェロン誘導遺伝子(ISG)」として、PARP9、PARP12、PARP14などの非カノニカル(非定型的)なPARPファミリーが強力に誘導されます。

  • DNA修復に関わる代表的なPARP1が「ポリ」ADPリボシル化を行うのに対し、これらのPARP9/12/14は、標的となるウイルスタンパク質や宿主タンパク質に単一のADPリボースを付加する「モノADPリボシル化(MARylation)」を行います。

  • これによりウイルスの複製を阻害します。

  • このモノADPリボシル化反応は、細胞内のNAD+を基質として直接消費します。

  • 急性期には、宿主側がPARPをフル稼働させてウイルスをMAR化しようとNAD+を大量消費します。

  • 一方で、SARS-CoV-2は自身の非構造タンパク質3(Nsp3)に「マクロドメイン(Mac1)」という酵素活性部位を持っており、付加されたモノADPリボースを「剥がす(脱MAR化)」ことで免疫から逃れようとします。

  • 付加しては剥がされるという「イタチごっこ(無益なサイクル)」が細胞内で激しく起こる結果、NAD+が凄まじい勢いで浪費され、急速な「NAD+」の枯渇(エネルギー危機)に陥ります。         

 

では、「回復期」はどうかと言いますと・・・この「NAD+」の消費は持続し、深刻な影響を及ぼすと考えられています。

  • 急性期を過ぎてウイルスが排除された後も、微小なウイルス残骸の残存や、慢性的な炎症シグナル(IFNの持続)がくすぶり続けるケースがあります。

  • これにより、PARP9/12/14やCD38などのNAD+消費酵素が「スイッチが入ったまま」の状態になり、回復期に至っても慢性的に「NAD+」を消費し続けます。

  • 持続的な「NAD+」の枯渇は、ミトコンドリアの機能不全(ATP産生低下)や酸化ストレスの増大を招きます。

  • これが「Long COVID(コロナ後遺症)」で特徴的な「激しい倦怠感(Fatigue)」「ブレインフォグ」「運動不耐症」の根本的な原因の一つになっている可能性が強く示唆されています。

さらに、加齢・酸化ストレス・慢性炎症の影響でサルベージ経路の律速酵素NAMPTの発現と活性が低下し、合成側からも「NAD⁺枯渇」が促進されるというわけです。

さらに「NAD⁺」の低下は「サーチュイン(SIRT1/SIRT6)」活性の減弱を招き、ヒストンアセチル化のバランスが崩れてヘテロクロマチンが弛緩する。

「SIRT6」はとくに反復配列やレトロトランスポゾン領域のサイレンシングに必須であると考えられており、その機能不全は、

レトロトランスポゾン「LINE-1(L1)」の脱抑制を許す。

 

再活性化した「LINE-1(L1)」は。ORF1p/ORF2pを発現し、ORF2pの逆転写酵素活性により細胞質に二本鎖DNAやRNA:DNAハイブリッドを生じる。

これらの核酸はcyclic GMP-AMP synthase(cGAS)に認識され、STING-TBK1-IRF3軸を介してIFN-I産生と炎症性サイトカイン放出を惹起する。

 

「IFN-I」はさらにCD38発現を誘導してNAD⁺消費を加速するため、「NAD⁺低下→サーチュイン不全→クロマチン弛緩→L1脱抑制→cGAS-STING活性化→IFN-I/炎症→CD38亢進→さらなるNAD⁺消費」という悪循環が成立する可能性も指摘されています。

 

上記のようなメカニズムが「老化進行」、「SLEの活動性増悪」、「Long COVID」における症状遷延の共通基盤を形成していると考えられているわけです。

では、どのように対処するのが有効か・・・と考えますと、次のようになります。

「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」といったNAD⁺前駆体の補充は、複数の機序を介して上記悪循環の遮断を狙うことができる可能性があります。

 

すなわち、「サーチュイン再活性化」によるヒストン修飾の正常化とL1再サイレンシングを介したエピゲノム安定化、単球・マクロファージにおけるIFN-I/ISG応答の鎮静化、PARP機能維持を介したゲノム安定性の保持、

そして、SIRT3を介した「ミトコンドリア」の品質管理とATP産生能の改善である。とくにLong COVIDで顕著な慢性疲労、ブレインフォグ、運動耐容能低下、骨格筋脱力の一部は、こうしたミトコンドリア機能改善による緩和が期待される。

将来的には、NAD⁺前駆体補充、CD38阻害薬、選択的PARP阻害薬、L1抑制を狙う逆転写酵素阻害薬を組み合わせた多層的な「免疫代謝療法(immunometabolic therapy)」が、これら難治性病態への新たな治療軸となりうるのではないかと考えられているのですね。

 

若干、難しいお話となってしまいましたが・・・「NAD+」の低下が

「老化」のプロセスばかりでなく、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動期や新型コロナウイルス感染後の後遺症である「Long Covid」

の状態でも起こりうることは、頭の片隅に置いておく必要があると

思いますね。

 

今回も最後までお付き合いいただきまして

誠にありがとうございましたお願い

 

 

参考)

1)Front Immunol . 2021 Oct 8:12:752380. 

COVID-19 Is a Multi-Organ Aggressor: Epigenetic and Clinical Marks Mankgopo Magdeline Kgatleら

 

2)Infection. 2023 Dec;51(6):1603-1618. Amiit Deyら

Epigenetic perspectives associated with COVID-19 infection and related cytokine storm: an updated review

Amiit Deyら

 

3)Epigenomics. 2021 May;13(10):745-750. 

Epigenomics in COVID-19; the link between DNA methylation, histone modifications and SARS-CoV-2 infection

 Milad Shirvalilooら

 

4)Clin Epigenetics. 2024 Aug 20;16(1):112. 

Epigenetic patterns, accelerated biological aging, and enhanced epigenetic drift detected 6 months following COVID-19 infection: insights from a genome-wide DNA methylation study

Luciano Calzeriら

 

5)Infectiom. 2023 Dec;51(6):1603-1618. 

Epigenetic perspectives associated with COVID-19 infection and related cytokine storm: an updated review

Amit Deyら

 

6)Epigenomics. 2021 May;13(10):745-750. 

Epigenomics in COVID-19; the link between DNA methylation, histone modifications and SARS-CoV-2 infection

Milad Shirvalilooら

 

7)Clin Epigenetics. 2024 Aug 20;16(1):112. 

Epigenetic patterns, accelerated biological aging, and enhanced epigenetic drift detected 6 months following COVID-19 infection: insights from a genome-wide DNA methylation study

 Luciano Calzariら

 

8)Expert Rev Mol Med. 2024 Oct 22:26:e29. 

Epigenetic changes in patients with post-acute COVID-19 symptoms (PACS) and long-COVID: A systematic review

Madhura Shekhar Patilら

 

9)Geroscience. 2025 Feb;47(1):483-501. 

The COVID-19 legacy: consequences for the human DNA methylome and therapeutic perspectives

Carlo Gaetanoら

 

10)Front Genet. 2022 Jun 3:13:819749. 

Longitudinal Study of DNA Methylation and Epigenetic Clocks Prior to and Following Test-Confirmed COVID-19 and mRNA Vaccination

Alina P S Pangら

 

11)Biogerontology. 2025 Dec 2;27(1):12. 

DNA methylation-based epigenetic clocks highlight immune-driven aging acceleration in COVID-19 across diverse populations

Manoj Kumar Guptaら

 

12)Front Immunol . 2023 Jun 29:14:1158455.

SARS-CoV-2 infection dysregulates NAD metabolism

Amin izadpanahら

 

13)FASEB Biology. 2025 Jun 18;7(8):e70011. 

Oral MIB-626 (β Nicotinamide Mononucleotide) Safely Raises Blood Nicotinamide Adenine Dinucleotide Levels in Hospitalized Patients With COVID-19 and Acute Kidney Injury: A Randomized Controlled Trial

 Karol M Pencinaら

 

14)Clin Pathol. 2022 Jun 24:15:2632010X221106986. 

Rationale for Nicotinamide Adenine Dinucleotide (NAD+) Metabolome Disruption as a Pathogenic Mechanism of Post-Acute COVID-19 Syndrome

Tabitha Blockら

 

15)EClinical Medicine. 2025 Nov 12:89:103633. 

Effects of nicotinamide riboside on NAD+ levels, cognition, and symptom recovery in long-COVID: a randomized controlled trial

Chao-Yi Wuら

 

16)Geroscience. 2024 Oct;46(5):5267-5286. 

Mitochondrial dysfunction in long COVID: mechanisms, consequences, and potential therapeutic approaches

Tihamer Molnarら

 

 

(今年最後の八重桜:ホテルニューオータニ東京 オーバカナル前)

(筆者撮影)

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こんにちは、内科医 ひとちゃんですニコニコ

 

青空が広がり、穏やかな春の陽気になっていますね。

今朝は目が覚めてから、ベッドの中で鳥の鳴き声を聞いておりました。

 

「中東」の紛争は終息に向かっている状況に変化はないのだろう・・

・とスマホに手をの伸ばし、ニュースを見ますと・・・見事に期待を裏切られた感がありました。

 

古今東西の賢者の一人とされる十八世紀の哲学者

「イマヌエル・カント」は、著書『永遠平和のために』のなかで、戦争を終わらせ持続的な平和を築くための条件を示しています。


彼は、著書のなかで「汝の意志の格率が、常に同時に普遍的立法の原理として妥当しうるように行為せよ」と述べています。


その意味は、「行為の原則」が状況や都合によって揺らいではならず、いかなる時にも通用する普遍性を備えるべきことを説いているわけですね。


政治的決断というものは、その時々の情勢の中で下されるものですが、真に価値ある決断は、目先の利害を超えて、未来の歴史においてもなお正しいと評価されるものでなければなりませんよね。


思慮深く熟慮を重ね、普遍的原則に照らして下された決断だけが、時の試練に耐え、後世の人々から「あの時、あの指導者がいたからこそ」と称えられるのだと思います。逆に、その場しのぎの計算で下された決断は、たとえ一時的に成功したように見えても、やがて歴史の審判の前に色褪せていきます。


すべては「未来」の歴史において評価されるわけですが、今のような混乱の時代は、どのように歴史に残されるのでしょうか?・・・なんて、思ってしまいますね。

 

皆さまの体調は、いかがでしょうか?


image

(AIで画像を作成)

 

前回は「NAD+ (ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)と「NAD+サルベージ経路」について、お話をさせていただきました。

 

今回は、「理論」的に考えますと・・・この「NAD+」が「老化」以外にある「疾患」の状態の改善に有用な可能性があるのではないか?

・・・というお話をしてみたいと思います。

 

「NAD+」が有用かもしれない疾患とは、「新型コロナ後遺症」

「全身性エリテマトーデス(SLE)」ということになります。

 

少しだけ長いお話になるかもしれませんので、2回にわたってお話をしてみたいと思います(今回の追記は学会参加のためなしにさせていただきます)。

 

「老化」、「新型コロナ後遺症」、「全身性エリテマトーデス(SLE)」

まったく異なる分野の疾患に対する「NAD+」の効果・・・と聞くと

不思議に思う方もいらっしゃるかもしれなませんね。

 

ヒトの細胞では、「DNA」の塩基配列そのものを変えずに遺伝子発現を調節する機構、すなわち「エピジェネティクス」が、細胞の恒常性維持、分化、老化、炎症応答に深く関与していることがわかっています。

 

代表的な機構として、「DNAメチル化」「ヒストンのアセチル化」などの修飾、クロマチン再構築が挙げられる。

 

一般に、遺伝子プロモーター領域における「DNAメチル化」は、転写抑制と関連し、ヒストン「アセチル化」はクロマチン構造を開いた状態に傾け、転写活性化を促進する。

 

一方で、これらの制御は単純な二元論で説明できるものではなく、細胞種、ゲノム局在、周辺のクロマチン環境、代謝状態に応じて動的に変化することが知られている。
 

     図1.ヒストンとDMAの関係

 

図1.に示すようにDNAは、細胞内で「ヒストン」というものに巻き付いた形で存在しているわけです。

 

なぜ、このようなお話をするのか?・・・近年、加齢に伴う「細胞老化」、自己免疫疾患である「全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus: SLE)」、さらに「COVID-19後遺症(Long COVID, post-acute sequelae of SARS-CoV-2 infection: PASC)という、一見異なる三つの病態の間に、「エピジェネティック異常」という共通の分子基盤が存在する可能性が示されているからなのですね。

 

とくに、「DNAメチル化異常」、「ヒストンアセチル化修飾の破綻」、

「レトロトランスポゾンの脱抑制」「自然免疫センサーの慢性的活性化」、そしてNAD⁺代謝低下に伴う「サーチュイン活性の障害」は、

これらの病態を横断して理解するうえで重要な接点であると考えられているのですね(参考1,2,3,4)。

 

(AIを用いて画像を作成) 

 

約25年前の話になりますが・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」

の病態にDNAの低メチル化状態が「ヒト内在性レトロウイルス(Human Endogenous Reterovirus:HERV)」の一部がmRNAレベルで発現しているのを基礎実験を重ね、確認していました。

 

その時は、「HERV-E clone4-1」という名称の割とレトロウイルスの構造が保存されているものでした、

レトロウイルスの構造は、

 

「LTR(転写活性領域)」-「gag(内部構造タンパク)」-「pol(逆転写酵素)」-「env(外被糖タンパク)」-「LTR(転写活性領域)」

 

という構造なのですが・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性が高くなると、「HERV-E clone4-1」の「gag(内部構造タンパク)部分のmRNAの発現が上昇し、治療とともに低下する現象があったわけです。

これと逆相関する形でDNAのメチル化を制御する「DNMT1」遺伝子の発現があることを見つけたわけです。

 

つまり、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患活動性が高くなると「DNMT1」mRNAの発現が低下」し、「HERV-E clone4-1」の「gag」部分のmRNAが増加しているデータが得られたわけです。

 

そこで、「DNMT1」遺伝子のプロモーター部分に付着する「転写因子」の異常が原因だろうと・・・間違った方向に進む実験を繰り返し、力尽きた・・・ということになります。25年前の話です。

 

現時点の「全身性エリテマトーデス(SLE)」は、次のように考えられています。

 

多彩な自己抗体産生、免疫複合体形成、補体活性化、I型IFNシグナルの増強を特徴とする全身性自己免疫疾患であり、

その病態形成には遺伝要因、環境要因、性差、免疫調節異常が関与する疾患であることは、昔と認識は変わりません。


近年とくに重要視されているのが、免疫細胞における「エピジェネティックス」の異常である とされているわけです(参考5,6,7)。

 

さらに現時点で、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の患者T細胞では、「DNMT1の発現低下」「ERK経路異常」を介してDNA低メチル化が生じ、通常は抑制されるべき免疫関連遺伝子の発現が亢進することが報告されています。

 

CD11a、CD70などの遺伝子はその代表例であり、低メチル化に伴う過剰発現が自己反応性の増強に関与すると考えられている 5。さらに、、では、「ヒストン修飾異常」やmiRNA異常も加わり、複数の階層で免疫恒常性が破綻している可能性が指摘されているわけです(参考7,8)


一方、近年の研究は、「全身性エリテマトーデス(SLE)」における「レトロトランスポゾン」異常にも光を当てられています。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動期の免疫細胞などでは「LINE-1」転写産物などの発現上昇が認められ、疾患活動性と相関することが示されています (参考9,10)。


 

「LINE-1」とは、 ヒトゲノム中に約10万個存在し、自己複製してDNA上を移動する「レトロトランスポゾン」を指します。

 

この遺伝子も「全身性エリテマトーデス(SLE)」の疾患の活動性の

上昇とともに、その発現が増加していたわけですね。

つまり、私の検証していた「HERV-E clone4-1」だけではなく、

本来はDNA内に固定されているはずの「ヒト内在性レトロウイルス(HERV)」「レトロロランスポゾン」が「DNAのメチル化」の低下により、発現していた可能性が大きいと考えられますね。

 

このレトロトランスポゾン「LINE-1」の発現が増加することも報告されています(参考11)。

 

さらに「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、「LINE-1」由来の逆転写産物やDNA:RNA複合体が、cGASやZBP1などの核酸センサーと関連して局在し、「I型インターフェロン(IFN)応答」「炎症シグナルの増幅」に寄与する可能性が報告されています(参考 12,13)。

 

 

これらの「全身性エリテマトーデス(SLE)」によるレトロトランスポゾン「LINE-1」の発現量の増加は、「DNMT-1遺伝子」などのmRNAの低下により生じた「DNAの低メチル化」が原因であろうと想像できなす。

 

しかしながら、DNAメチル化が弱くても、「ヒストン脱アセチル化」がしっかり機能すれば、「レトロトランスポゾン」の発現をかなり抑制できる可能性はあるという説が有望なのですね(参考14)。


 

この説から考えると・・・「全身性エリテマトーデス(SLE)」の活動性の高い状態では、ヒストンの「アセチル化・脱アセチル化」のメカニズムに異常が生じている可能性があるとも考えられるわけですね。

 

         (図2,DNAとヒストン)

 

もちろん、「全身性エリテマトーデス(SLE)」の病態は、さらに複雑

ではあるわけですが・・・ね。

 

DNAの低メチル化状態の得られない状況でも、ヒストンを脱アセチル化してしまえば・・・これは、25年前の私の発想ですが・・・その時は、その方法が浮かびませんでした。

 

現時点で、どのように考えられているのか?・・・と言いますと次のようになります。

 

「全身性エリテマトーデス(SLE)」では、特に単球やT細胞でCD38・PARPの誘導によりNAD⁺消費が増え、「局所的なNAD⁺低下・ストレス」が起こりうる一方、全身レベルでは低活動期にNAD⁺産生も同時に高まるなど複雑です。少なくとも「NAD⁺代謝の異常」はSLE免疫細胞の特徴であり、NAD⁺を補う介入はI型IFN過剰の緩和策として検討されているのですね。

 

素敵な1週間をお過ごしくださいキラキラ

 

それでは、またバイバイ

 

参考)

1)Aging(Albany NY). 2018 Nov 3;10(11):3590-3609

The senescent cell epigenome

Na Yangら

 

2)Cells. 2022 Feb 15;11(4):672. 

Epigenetic Regulation of Cellular Senescence

Jack Crouchら

 

3)Cell. 2008 Nov 28;135(5):907-18. 

SIRT1 redistribution on chromatin promotes genomic stability but alters gene expression during aging

 Philipp Oberdoerfferら

 

4)Nature. 2019 Feb;566(7742):73-78. 

L1 drives IFN in senescent cells and promotes age-associated inflammation

Marco De Ceccoら

 

5)Transl Res. 2009 Jan;153(1):4-10. 

Epigenetic regulation and the pathogenesis of systemic lupus erythematosus

Yujun Panら

 

6)Autoimmunity. 2010 Feb;43(1):17. 

Key role of ERK pathway signaling in lupus 

GARRIELA GORELIK

 

7)Int J Clin Rheumtol. 2011 Aug;6(4):423-439. 

Epigenetics in systemic lupus erythematosus: leading the way for specific therapeutic agents 

Matlock A Jeffriesら

 

8)Int J Mol Sci. 2024 Jan 13;25(2):1019. 

Epigenetic Dysregulation in the Pathogenesis of Systemic Lupus Erythematosus

Yasuto Arakiら

 

9)Mob DNA. 2023 May 10;14(1):5. 

Expression of L1 retrotransposons in granulocytes from patients with active systemic lupus erythematosus

Kennedy C Ukagibleら

 

10)Arthritis Rheumaatol. 2016 Nov;68(11):2686-2696. 

Expression of Long Interspersed Nuclear Element 1 Retroelements and Induction of Type I Interferon in Patients With Systemic Autoimmune Disease 

Clio P Mayaraganiら

 

11)Aging Cell. 2013 Apr;12(2):247-56.

Genomes of replicatively senescent cells undergo global epigenetic changes leading to gene silencing and activation of transposable elements

Marco De Ceccoら

 

12)Mob DNA. 2024 Jun 27;15(1):14. 

Subcellular location of L1 retrotransposon-encoded ORF1p, reverse transcription products, and DNA sensors in lupus granulocytes

Fatemeh Moadabら

 

13)Front Immunol. 2019 May 8:10:1028. 

Sources of Pathogenic Nucleic Acids in Systemic Lupus Erythematosus

Tomas Mustelinら

 

14)Cell Genom. 2024 Feb 14;4(2):100498.

Locus-level L1 DNA methylation profiling reveals the epigenetic and transcriptional interplay between L1s and their integration sites

Sophie Lancianoら


  

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(自由の女神とレインボーブリッジ)
(筆者撮影)

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