こんにちは、内科医 ひとちゃんです![]()
2月最初の休日となっています。
2月は「如月」と書いて「きさらぎ」と呼ばれることもありますね。
そのように読むようになったのは、室町時代の頃とされています。
「如月」を「じょげつ」と読んでも、2月の異称になるわけですが、これはm中国最古の字書『爾雅(じが)』に「二月を如となす」とあることから生まれました。
「如となす」は、万物が神意に従うように現れ出ることだそうで、
自然がいきいきと動き出す時期といえますね。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
先週末のことでしたが、米国のオンライン・タブロイド紙『Raw story』の驚くような記事があったそうです。
トランプ米大統領による交流サイト(SNS)への執拗な投稿について、専門家から健康状態を懸念する声が上がっている。米国内のある医師は25日、大統領の深夜の連投や感情的な言動は、脳卒中後の一般的な副作用である「激越性(げきえつせい)うつ病」の兆候である可能性があるとし、医療チームによるより適切な介入が必要だと指摘したというニュースがありました。
22日にブリュッセルで開かれたEUの臨時首脳会議で、一部首脳らに「アウト・オブ・ヒズ・マインド(正気を失っている)」と評価されたという報道もあります。
そこで、今回は「脳卒中後うつ病」とは、どのようなものか?また、「アルツハイマー病」と違いについて、お話をしてみたいと思います。
高齢化に伴い、「脳卒中」と「認知症」の患者数は世界的に増加しているそうです。
脳卒中を経験した人の約3〜4割が「脳卒中後うつ病(PSD)」を発症するとされ、特にイライラや落ち着きがなくなる「激越(げきえつ)」を伴う場合、リハビリの妨げになるとされています (参考1,2,3)
一方、「アルツハイマー型認知症(AD)」は認知症の約7割を占める代表的な病気です [4]。「脳卒中後うつ病(PSD)」の認知機能の低下は、うつの治療によって「回復する可能性(可逆性)」があるのに対し、ADはゆっくりと進行する病気です。この違いを正しく理解することが、適切な治療への第一歩となります。
では、「脳卒中後うつ病(PSD)」が起こる仕組みとは、どのようなものになるのでしょうか?
「脳卒中」になると、脳の中では単なる「心の落ち込み」以上の物理的な変化が起こるとされています。
1)神経の炎症
脳の血管が詰まったり破れたりすると、脳内の免疫細胞(ミクログリアなど)が活性化し、炎症物質を放出します。これが脳の「修理機能」を邪魔し、うつ症状や記憶力の低下を引き起こします(参考5,6,7)
2. ストレス反応の暴走
脳卒中という大きなストレスにより、体内のホルモンバランス(HPA軸:視床下部-下垂体-副腎系)が崩れます。ストレスホルモンである「コルチゾール」が過剰に出続けると、記憶を司る「海馬」という部分がダメージを受けてしまいます(参考8)。
3.神経伝達物質の不足
意欲や気分に関わるセロトニン、ドパミンといった物質の通り道が脳卒中によって遮断され、回路がうまく働かなくなります (参考9)。
続きは、後日の話題にしてみたいと思います。
素敵な1週間をお過ごしください![]()
それでは、また![]()
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< ブログ後記 >2月3日
今日は「節分」ですね。明日からは「立春(りっしゅん)」となり、暦の上では、「春」になるわけですね。
今回は「脳卒中後うつ病」について、お話をさせていただきました。
「脳卒中」とは、脳梗塞(約7割)、脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害ということになりますね。
実は、「脳卒中後うつ病」と「アルツハイマー病」の鑑別(かんべつ)は難しいとされています。
トランプ氏の姪メアリー・トランプ氏は、叔父がアルツハイマー病を患っている可能性があると以前から述べていましたので、ある意味では、トランプ氏にとって、優しい診断(?)であったのかもしれません。
彼女は、ユーチューブチャンネルで、トランプ氏が
1999年に93歳で亡くなった祖父 フレッド・トランプ氏に様子が似てきていることから、退行性の病気であるアルツハイマー病の可能性があると述べていたのです。
では、「脳卒中後うつ病(PSD)」と「アルツハイマー病(AD)」には、どのような特徴があるのでしょうか?参考文献が多いので、後記の方では省略させていただきたいと思います。
「脳卒中後うつ病(PSD)」と「アルツハイマー病(AD)」を比較しながら、お話をしてみたいと思います。
「脳卒中」は成人における主要な脳障害の原因であり、生存者の30〜40%が「脳卒中後うつ病(PSD)」を発症するとされています。
一方、「アルツハイマー病(AD)」は、認知症の60〜70%を占める進行性疾患である[とされています。
両者は症状が、とても似ているわけですが、「脳卒中後うつ病(PSD)」の認知障害は可逆的である可能性が高く、「アルツハイマー病(AD)」は、進行性で不可逆的であるため、正確な鑑別が予後を左右するとされています。
つまり、もしも「脳卒中後うつ病(PSD)」によるものであれば、認知症の症状が、治療により改善する可能性がある・・・ということになりますね。
鑑別は難しいとされるわけですが・・・脳神経内科などの専門家から見ると、それぞれの疾患の認知障害パターンには明確な差異があるとされています。
まず、機能・行動への影響をみてみますと、以下のようになります。
1)作業の正確性
「脳卒中後うつ病(PSD)」では、「処理速度や注意機能の低下が認められるが、治療により、改善が可能であるとされています。
「アルツハイマー病(AD)は、「 IADL(買い物、料理など)」は認知機能低下の初期段階で低下しやすい傾向があり、ADL(食事、排泄など)は、不可逆的に悪化していくとされています。
2.BPSD(行動・心理症状 )
「脳卒中後うつ病(PSD)」では「激越(げきえつ)症状」や「易刺激性」が目立つとされています。
「激越(げきえつ)症状」とは、強い焦燥感、不安、イライラを伴い、じっとしていられず動き回る(そわそわする、徘徊、手をもみ合わせる等)行動が特徴の精神状態を指します。
うつ病特有の「動きが鈍くなる」状態とは異なり、一見活動的に見えるが、内心は「パニック」に近い状態であるとされています 。
一方、「アルツハイマー病(AD)」は、「アパシー」から始まり、進行に伴い徘徊や夕暮れ症候群、社会的孤立が生じるとされています。
「アパシー(Apathy)」とは、感情の欠如を語源とする、無気力・無関心・自発性の低下した状態を指します。周囲の事象だけでなく、自分の身の回りや日常的な活動への意欲が著しく減少するとされています。
認知症や脳血管障害、「パーキンソン病の周辺症状(BPSD)」として多く見られ、本人に自覚が乏しい、または悲哀感を伴わない点が「うつ」とは異なる特徴であるとされています。
若年発症例では、いずれも職業的・経済的損失が甚大となると解説されています。
では、治療については、どうなのでしょうか?
「脳卒中後うつ病(PSD)」では、の抗うつ剤「SSRI」などの薬剤投与が有効であり、「感情」のみならず、「認知機能」や「ADL」の改善させることが示されています。
ADL(Activities of Daily Living)とは、日常の生活動作を指しますね。
「アルツハイマー病(AD)」については、「ChE(コリンエステラーぜ)阻害薬」や「NMDA受容体拮抗薬」による対症療法に加え[、「レカネマブ,ドマネマブ」等の抗抗アミロイドβ(ベータ)抗体薬により進行を抑制する新しい段階に治療も進みつつあるようです。
いずれにしても、「認知症」を早期に見つけ出すことが重要であると
考えますので、JTKクリニックでは、通常の「長谷川式認知症スケール」や AIによる「認知症判断のためのプログラム」を試験的に運用しながら、早期の「認知症」をいち早く見つけ出し、専門医に紹介していく体制を始めています。
なかなか、難しい分野の医療ということになりますね。
少なくとも「脳卒中後うつ病(PSD)」を見つけ出し、専門医による抗うつ剤「SSRI」などの投与を行い、症状が改善できれば嬉しいと、
今は、思っています。
また、後記の方は、参考文献が多数のため、割愛させていただきました。
今回も最後までお付き合いくださり
誠にありがとうございました![]()
参考)
1)Lancet Neuol. 2021 Oct;20(10):795-820.
Global, regional, and national burden of stroke and its risk factors, 1990-2019: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2019
GBD 2019 Stroke Collaborators
2)Stroke. 2017 Feb;48(2):e30-e43.
Poststroke Depression: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association
Amytis Towfghiら
3)J Neuropsychiatry Cjin Neurosci.. 2024 Winter;36(1):22-35 Poststroke Depression: An Update
Robert G Robinsonら
4)Neurobiol Agin. 1997 Jul-Aug;18(4 Suppl):S27-32.
The neuropathological diagnosis of Alzheimer's disease: clinical-pathological studies
BT Hyman
5)Aging Dis. 2024 Feb 28;16(1):394-407.
Neuroinflammation and Post-Stroke Depression: Focus on the Microglia and Astrocytes
Weizhuo Luら
6)Mol Neurobiol. 2024 Jan;61(1):132-147.
Investigating the Potential Mechanisms and Therapeutic Targets of Inflammatory Cytokines in Post-stroke Depression
Yutong Zhangら
7)Aging Dis. 2024 Feb 9;16(1):209-238.
Inflammatory Pathogenesis of Post-stroke Depression
Xinyu fengら
8)Nat Rev Immunol. 2016 Jan;16(1):22-34.
The role of inflammation in depression: from evolutionary imperative to modern treatment target
Andrew H Millerら
9)Mol Psychiatry. 2006 Nov;11(11):984-91.
The etiology of poststroke depression: a review of the literature and a new hypothesis involving inflammatory cytokines
GSpallettaら
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理事長・ 院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
(新潟大医学部卒)
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