こんにちは、内科医 ひとちゃんです
先週末には「梅雨入り(つゆいり)」が発表されましたね。
平年より2週間程度遅い「梅雨入り」なのだとか。
それでも、雨のおちてくる灰色の雲で覆われた空を見上げていると
「この梅雨の時期は、どのくらいっ続くのだろうか・・・」と考えてしまいます。
皆さまの体調は、いかがでしょうか?
今回は、「インスリン感受性(かんじゅせい)の低下」・・・という話題をとりあげてみたいと思います。
「インスリン感受性の低下」とは、どのようなことなのでしょうか?
そして、このことが「肥満」からのみ生じるわけではないことをお話ししてみたいと思います。
「インスリン」は、膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞から分泌され、血糖値を調節することは、よく知られていることと思います。
通常の場合・・・「インスリン」は、細胞に作用して、血液中の糖を細胞内に取り込み、エネルギーとして利用できるようにします。
「インスリンの感受性の低下」とは、体内の細胞が「インスリン」に対して適切に反応しなくなる状態を指します。
つまり、「インスリン」が、細胞に作用しにくくなる状態を示すことになるので、「インスリン抵抗性(ていこうせい)」とも呼ばれます。
では、「インスリン感受性が低下」すると・・なぜ、「2型糖尿病」を発症するリスクが高くなると言われるのでしょうか?
それは、次のようなメカニズムから「2型糖尿病」の発症につながっていくと考えられているから・・・ということになります。
1)インスリンの効果の減少
細胞の表面には「インスリン受容体」があり、これが「インスリン」と結合することで、細胞が糖を取り込むシグナルを送ります。
「インスリン感受性が低下」すると、これらの受容体が「インスリン」に反応しにくくなり、同じ量のインスリンでは十分に効果を発揮できなくなります。
2)血糖値の上昇
細胞が糖を十分に取り込めなくなると、血液中の糖分が高いまま残ります。これが「高血糖」状態ということになります。
高血糖が続くと、身体はさらに「インスリン」を分泌しようとしますが、それでも効果が得られない場合、「インスリン抵抗性」呼ばれる状態に進行します。
3)インスリン抵抗性の進行
「インスリン抵抗性」が進行すると、膵臓は常に高い「インスリン分泌」を維持しようとしますが、やがて膵臓の機能が低下し、「インスリン分泌」が減少することがあるとされています。
これにより、「2型糖尿病」のリスクが高まるというわけですね。
では、「2型糖尿病」の発症リスクを高めてしまう「インスリン感受性の低下」は、どのようなことが原因で生じると考えられているのでしょうか?
これは、以下のような状況で生じやすいとされています。
肥満、運動不足,、加齢、遺伝、ストレス、睡眠不足などとなります。
では・・・「インスリン感受性の低下」を改善する方法はあるのでしょうか?
インスリン感受性を改善するための一般的な方法には、以下のようなものがあります:
◯ 健康的な食生活
バランスの取れた食事を摂ること、特に糖分や加工食品の摂取を減らし、野菜、果物、全粒穀物、良質なタンパク質を増やすことが推奨されます。
◯ 定期的な運動
有酸素運動や筋力トレーニングは、「インスリン感受性」を改善する効果があります。
◯ 体重管理
健康的な体重を維持することが、「インスリン感受性」の改善につながります。
◯ ストレス管理
ストレスを適切に管理することも重要です。リラクゼーション法やマインドフルネス、趣味などを取り入れると良いとされています。
◯ 充分な睡眠
質の高い睡眠を確保することも、「インスリン感受性」を向上させるのに役立つとされています。
いかがでしたでしょうか。
素敵な1週間をお過ごしください
それでは、また
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<ブログ後記 >6月25日
「梅雨」に入ったのはよいのですが、なんとも蒸し暑い夜となっていますね。
今回は、「インスリンの感受性」の低下が、どのような状況で起こるのか?・・・というお話をさせていただきました。
インスリンに対する感受性が低下し、インスリンの作用が十分に発揮できない状態を「インスリン抵抗性」と呼びます。
「インスリン抵抗性」は、インスリンの働きが鈍くなる状態であり、多くは「内臓脂肪」の増加が代表的な原因とされています。しかしながら、本文内でもご紹介したように・・・運動不足、加齢、ストレス、睡眠不足なども原因として知られています。
「インスリン抵抗性」になると、どのようなことが起きてくるのでしょうか?
次のようなことが起きてくる可能性があっるのですね。。
まず、筋肉、脂肪組織、肝臓などの標的細胞がインスリンに対して鈍感になり、血液中の糖を効率よく取り込めなくなります。
そのため、血液中に糖が残り、血糖値が高くなる可能性があります。
血糖値が高い状態が続くと・・・膵臓は、血糖値を下げるために
より多くのインスリンを分泌しようとします。
しかしながら・・・当初は、通常より多いインスリンを分泌しようと頑張っていた膵臓もパワーが維持できなくなっていきます。
そして・・・最終的には膵臓のβ細胞が疲弊し、インスリン分泌機能が低下してしまいます。
これが2型糖尿病の発症に繋がっていくと考えられています。
では、「内臓脂肪型肥満」では、なぜ、最も「インスリン抵抗性」が起こりやすいのでしょうか?
これは、次のようなメカニズムであるとされています。。
「内臓脂肪」は、「皮下脂肪」に比べて、脂肪分解を受けやすく、血中への「遊離脂肪酸(ゆうりしぼうさん)」の放出が亢進(こうしん)することが知られています
この血液中に存在する過剰な遊離脂肪酸は、筋肉や肝臓に蓄積することで「インスリン抵抗性」を引き起こします。
また、以前のブログ内でもご紹介したのですが・・「内臓脂肪細胞」は、「炎症性サイトカイン」を分泌し、インスリン受容体の機能を阻害する・・・と考えられているのですね。。
こうしたメカニズムにより、「内臓脂肪型肥満」は、糖尿病だけでなく、心血管疾患のリスクを高める重要な要因となると言えます。
最近の論文では・・・次のような興味深い報告もあります。
肥満における脂肪組織全体の機能不全の中で重要な発見は、NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)/SIRT(サーチュイン遺伝子)の発現低下が報告されています。
NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)もSIRT(サーチュイン遺伝子)もNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の摂取により誘導されるものでしたよね。
若年でBMIの異なる「一卵性双生児」を対象としたの研究では、マイクロアレイ解析により、体重の重い者では、痩せている方と比較して、SIRT1(サーチュイン1遺伝子)、SIRT3(サーチュイン3遺伝子)」、SIRT5(サーチュイン5遺伝子)などのmRNAレベルでの発現が低下していることが明らかになったとされてい報告されています)
また、別の研究では、肥満被験者では、SIRT1(サーチュイン1遺伝子)、SIRT3(サーチュイン3遺伝子)、SIRT7(サーチュイン7遺伝子)のmRNAの発現が有意に低かったとも報告されています。
・・・と考えますと・・・長生きや健康長寿を目的に「NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)」のサプリを服用し続けても、あまり、
その効果が自覚しにくいかも・・・と思ったりもします。
まずは・・・「内臓脂肪」をなくすなどのダイエットを先行させ、その後に「N M N」を服用した方が、より効果が実感できるのかもしれませんね。
「インスリン抵抗性」も改善していくわけですから・・・ね。
今回も最後までお付き合いいただきまして
誠にありがとうございました
1.Diabetes2008;57(5):1269–1275.
Visceral Adiposity, Not Abdominal Subcutaneous Fat Area, Is Associated With an Increase in Future Insulin Resistance in Japanese Americans
Tomoshige Hayashiら
2.Nutrients.2023 Aug; 15(16): 3652.
Abdominal Obesity in Women with Polycystic Ovary Syndrome and Its Relationship with Diet, Physical Activity and Insulin Resistance: A Pilot Study
Jurczewska Jら
3.Biomedicines. 2023 Sep 18;11(9):2560.
The Role of NAD+ in Metabolic Regulation of Adipose Tissue: Implications for Obesity-Induced Insulin Resistance
Tatjana Ruskovakaら
(以前のphoto: 筆者撮影)
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理事長、院長
小笠原 均 (Hitoshi Ogasawara)
医学博士, 内科医
(総合内科、リウマチ専門医)
新潟大医学部卒
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