双胎妊娠では、早産や妊娠高血圧など様々な合併症のリスクが高くなるのですが、今回は双胎妊娠のうち、一児に何らかの先天奇形や染色体異常が見つかり、その一児だけを中絶した場合についての論文を見ていきたいと思います。




一児に何らかの大きな異常が見つかった時、そのまま妊娠を継続すると、もう一方の児にも影響を与える可能性があり、異常の見つかった児だけを中絶する選択肢が出てくる事があります。




https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002937822008389



この論文では、2008年から2018年の間にデンマークで一児を中絶したニ絨毛膜双胎について調べています。




双胎の種類についてはこちらのブログで説明していますが、ニ絨毛膜双胎は完全に部屋が二つに分かれており、双胎の中でも比較的リスクの低いタイプになります。





対象となった9,735件の双胎妊娠のうち、172(1.8%)が一児中絶していました。

16,465件の単胎妊娠も比較対象としています。




一児中絶は、妊娠11週から妊娠23週の間に、妊婦さんのお腹の上から針を刺して、塩化カリウムを注射して行なっています。



一児中絶した場合には、


28週までの早産: 2.4%

32週までの早産: 4.2%


一児中絶を妊娠14週までに行った場合に限定すると、


妊娠28週までの早産: 1.4%

妊娠32週までの早産: 2.8%



中絶していないニ絨毛膜双胎では、


妊娠28週までの早産: 1.9%

妊娠32週までの早産: 7.3%



と、全体的には一児中絶することで妊娠28週までの早産率がやや高くなるものの、中絶を妊娠14週までの早い段階で行えば、一般的なニ絨毛膜双胎より、妊娠28週までの早産リスクが高くなる、という事は無さそうです。





参考までに、単胎妊娠の場合は


妊娠28週までの早産: 0.2%

妊娠32週までの早産: 0.7%


となっているため、双胎妊娠そのものが早産率が高くなるリスクであることはよくわかります。





中絶した場合に、母体の様々な要因や既往歴などを調整して比較すると、中絶が遅い程、出産する週数が早くなる傾向がありました。




早産以外の妊娠に伴う合併症の全体的なリスクを比較しても、双胎妊娠より一児中絶した場合の方がリスクが低い結果でした。




以上のことから、母体や胎児の適応でニ絨毛膜双胎のうち一児を中絶しても、残った一児に対するリスクはそれほど高くなく、妊娠14週より早い段階で中絶する方がより安全性が高いと言えそうです。




双胎妊娠で一方の児だけを中絶するということは、かなり稀な状況ではありますが、もし必要となった場合には、こういったデータも参考にしてみてください。