「 危機管理の鉄則 」
長谷川慶太郎 (はせがわ・けいたろう 1928~)
株式会社徳間書店 1998年5月発行・より
民間でも、特にダイエーの危機管理というのはすごい。
経理上での損はしましたが、それも覚悟の上でしょう。
しかし赤字に転落したとしても、立派に言い訳ができると思います。
とにかく中内功社長がすごいのは、政府が対策本部をつくる三時間も前の午前七時に、地震対策本部をパッとつくってしまっていることです。
それで、地震の直後に、とにかくヘリでモノを送れと、そしてヘリを降ろしたところから、今度はトラックで被災地の店に全部運べと、すぐに命令を出しているわけです。
それから同じ日にフェリーをチャーターしています。
それを使って、東京、名古屋、福岡などから、物資を運びました。
だからダイエーは今回五〇〇億円の損を出しましたが、そのうちの1〇〇億円は輸送費です。
それは中内社長の頭の中に、こういう大震災が起こったら必ず陸上交通は途絶して、道路が大渋滞になる、という予測があったのでしょう。
だから直ちにフェリーを使うという発想になる。
そういう頭は役人や総理大臣には全然ない。
村山(首相)さんの代わりに中内社長を総理大臣にしたほうが、よっぽどよかったのではないでしょうか。
そしてもう一つすごいのは、絶対に便乗値上げをするな、震災前の値段で売れと命令していることです。
だからダイエーが店を開けたら、近所の店の商品の値段がみんな下がった。
例えばカセットコンロ用のガスボンベ。これ一本に1000円という値段をつけた店がありました。
ところが、ダイエーが店を開けたら、いっぺんに200円に下がった。
しかも、ダイエーでそのボンベを買い占めようという輩(やから)がいますから、一人三本という販売制限をしたのです。
ふつうのご家庭で炊事をするくらいなら、これ一本で、だいたい三日はもちます。
ですから三本あれば、十日はもつということになる。
(略)
またダイエーは全国から応援の人員もずいぶん出しています。
現地で被害を受けて、店がまず潰れているだろう、それから従業員の中に死傷者が出ているだろう、従業員の中に死傷者が出なくても、家族が被害を受けて、出勤できない者がいるだろうということで、あっという間に総勢二四〇人ほど出しています。
それにもう一つ面白いのは、被災地の各店舗の対策本部と東京の本部を衛星回線で結び、状況を定期的に送れと指示していることです。
それによって、責任者はどんな商品が売れているか、何が足りないか、店は今どんな状況かというような情報を定期的に送信する。
それに対応して、どんどん商品補給をしていったわけです。
ついでに神戸市役所も、ダイエーに代わってもらえばよかった。
2017年9月21日に~「ダイエーの社長」と「中国の警察」~と題して
深田祐介の発言を紹介しました。コチラです。↓
https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12311746731.html
2018年3月9日に 「ダイエー閉店の理由はPOS?」 と題して長谷川慶太郎の文章を紹介しました。コチラです。 ↓
https://ameblo.jp/hitosasiyubidesu/entry-12339586848.html
朝霞中央公園(埼玉)にて11月25日撮影