『 痛快鼎談 ２ 僕らが考える 「日本問題」 』
日下公人 ／ 渡部昇一 ／ 竹村健一
株式会社 太陽企画出版 ２００２年１月発行・より
竹村 大統領選が行われている最中、ブッシュさんについて書かれた
雑誌記事を読んでいて意外なことを知りました。
彼の親父は石油で成功したんですが、ジョージ・ブッシュ・Jr
も親父を真似て一山当てようと石油ビジネスに手を出したのです
が、失敗してどん底に落ちたんだそうです。
その後、ブッシュJr はテキサスリーグの小さな野球チームの
オーナーになった。
それがきっかけで有名になって、テキサス州の知事に当選する
に至ったというのです。
その同じ頃に 『ビジネスウイーク』紙 を読んでいたら、「アメリカ
でいちばん有名なのは誰か？」 という調査結果が載っていまし
た。
一位はマイクロソフトのビル・ゲイツ。
二位は、FRB（連邦準備制度理事会）のグリーンスパン議長。
三位がシュタインブレナーという結果だったそうです。
このシュタインブレナーという人物を、僕は誰だか知らなかったん
ですが、日下さんと渡部さんはご存知ですか。
日下・渡部 知りません。
竹村 メジャーリーグのヤンキースのオーナーなんです。
日下・渡部 ああ、なるほど。
竹村 この二人の物知りが知らないくらいなんですから、日本では
シュタインブレナーの知名度はかなり低いといっていいでしょう
（笑）。
とにかくアメリカでは、ニューヨーク・ヤンキースのオーナーのポ
ストが、全米で三番目に有名になるくらいの地位であるらしい
んです。
渡部 読売ジャイアンツのオーナーも有名ですね（笑）。
～渡辺恒雄（ナベツネ）の事・人差し指～
竹村 あの人は、別の意味で有名だね（笑）。
プロ野球の他のオーナーの名前なんて誰も知らないんじゃない
ですか。
とにかくアメリカの場合、野球チームなどのオーナーというの
は、高い地位を占めているとは聞いていたけれど、まさかヤン
キースのオーナーがそれほど社会的知名度が高いとは思いま
せんでした。
渡部 シュタインブレナーという人物は何で儲けたのですか。
竹村 それはよく知らないけれど。とにかく、ブッシュが州知事になれ
るほどテキサスで人気が出たいちばんの理由は、小さな野球
チームのオーナーになったことだった。というわけです。
日下 そもそもアメリカでは、オーナーは非常に偉いものと考えられて
いるようです。
社長や会長よりも、なんといってもオーナーが偉い。
そのオーナーのなかでも最も知名度のあるオーナーは航空会
社のオーナーです。昔はホテルのオーナーも有名でした。
竹村 コンラッド・ヒルトン（アメリカのホテル王）なんて昔は有名だった
ね。
渡部 ホテルのオーナーになることが、向こうではステータス・シンボ
ルと考えられているくらいです。
竹村 オーナーには自分でゼロから築き上げてきた人が多い。
肝心なのはそこなんです。
独立自尊の精神をオーナーは持っている。
日本の場合、「よらば大樹の陰」 で、大きな会社の社長が偉
いと思われているけれど、ほとんどの大企業の社長はサラリー
マン社長でしょう。
そうではなくて、やはりオーナーであることが意味を持つんで
す。
渡部 日本はオーナーを潰せという意識が非常に強いわけです。
オーナー経営が目立つ小さい銀行などは、「ずいぶん勝手なこ
とをやったから潰してしまえ」 とマスコミの風当たりが強かった
のです。
ところが、よく聞いてみると、金融監督庁のほうがモノサシの目 盛りを変えたから、潰されたんです。
日下 その通りです。
渡部 日本は明らかにオーナー嫌いなんです。その意味で社会主義
なんですよ。
（略）
竹村 ゴアにしてもブッシュにしても、両方二世だから、その点ではど
っちもちょっと頼りないと思われていたかも知れない。
しかし僕は、今回の大統領選挙で、ひとつブッシュが有利だと
思った点は、小さなチームとはいえ、彼は野球チームのオーナ
ーであったということです。
１１月２５日 朝霞市内（埼玉）にて撮影
