昨年の夏の午後のこと。
たまたま偶然に、路上で小さ目のカブトムシのメスがひっくり返っているのを見かけた。
最初は死骸かと思った。
よく見たらまだ生きていた。
放っといておけば死ぬ。
かわいそうだけど自然界はそのようなものだろうと、そのまま立ち去った。
1時間ぐらいして再び通りかかったので、さっきのカブトムシはどうしたかと気になったので探した。
先程と同じ状態だった。
弱々しく生きていた。
こうなるとほっとくわけにはいかない。
家に持ち帰り、さっそく飼育ケースを用意した。
マット(土)など、家にひと揃い置いてあったもので間に合わせて飼育体制を整えた。
カブトムシのそばにエサも置いたが、どうにも食べると思えなかったが。
やれることはやった、思う。
翌日の朝、ケース内を見たら死んでいた。
家の裏庭に穴を掘って埋めた。
カブトムシがひっくり返っていた場所の近くは、草むらが広がっている。
どうみてもカブトムシが居そうな場所ではない。
木々が立っている所からはかなり離れている。
エサを探しているうちに、場違いなところに来てしまったのだろうか?
それとも外敵に追われているうちに、こんなところまで来てしまったのか?
小さいカブトムシはエサにもありつけず、弱って死んでいくのだ。
この時期は真夏だったから、暑さでもやられたと思う。
若くて体力があって身体も大きいカブトムシは、エサがある場所も探せるし、それなりに食べることもできるでしょう。
涼しい場所にもスムーズに移動もできる。
身体が小さくて体力も衰えてきたようなカブトムシは、こうして弱っていき、そうこうしているうちに外敵に襲われたりして命を落とす。
これが厳しい自然界というか、昆虫の世界の定め。
では、人に飼われているカブトムシはどうなのか。
野生のカブトムシと比べて恵まれているのだろうか?
昆虫飼育を再開して、早いもので4年が過ぎた。
(再開のきっかけはコロナだったこともあった)
この4年間で、カブトムシ(成虫と幼虫)、クワガタ(成虫)、鈴虫を飼育してきた。
総合して考えると飼育下の昆虫は、
「少し長く生きていける」
ただそれだけ、って気がする。
生きれるだけ、恵まれているのだろうか。
これまでの経験では私の飼育方法が悪かったのか、元々の個体の生命力が弱かったのか、短命に終わった昆虫もいた。
正反対のこともあった。
たいして気をつけたのでもないのに、丈夫だったのか長生きした昆虫もいた。
昆虫飼育って、それなりに飼い主の飼い方も影響すると思うけど。
私は昆虫飼育に関しては素人だから、せめて自然界の昆虫と同等の環境に近づけようと、なるべく大きいケースで飼った。
他にも暑さ、寒さ、湿度、害虫駆除........。
自分なりに気を配ったつもり。
とはいえ、どんなに大事に飼育しても昆虫は何ヶ月か(カブトムシは幼虫などの期間を含めると、種類によっては1年から数年)で一生を終える。
明日生きているかわからないのは何も昆虫に限ったことではなく、命ある生き物すべてにあてはまる。
昆虫は本能のままに生きていると思う。
食べ物があれば食べるし、暑い寒いを避ける習性を供えている。
外敵から身を守る習性もある。
それなのに、長くは生きられない。
飼育下の昆虫も同様で、ほんの少し長く生きられるぐらいだ。
中には、生命力が強くて弱ってもなかなか死なない昆虫もいた。
弱って苦しんでいるのは、もうあきらか。
でも飼育下では外敵もいない。
温度もほぼ適正。
だから死ねない。
かといって、私の手で殺すことはどうしてもできなかった。
外の草むらに逃がすのはどうかと考えたが、それは飼い主の責任を放棄するようで、それもできなかった。
結局、弱って苦しむ期間が延々と何日も何週間も続いて死んでいった。
それって逆にものすごく残酷なことだと思った。
自然界では、弱ってきた頃にちょうどいいときに外敵に喰い殺されたり、アリなどに運んでいかれる。
あるいは暑さや寒さにやられる。
それは私たち人間の感覚では残酷なことに思える。
けど、自然界では残酷なことでもなんでもない。
外敵の存在も普通なこと。
もし外敵が居なかったら、そこらが昆虫だらけでとんでもないことになる。
外敵が昆虫を襲うことで、数のバランスがとれるのでしょう。
その外敵自身も昆虫を食べることで生きているし、自分よりも強い外敵から身を守っている。
そして最終的には、また土に還る。
土は言うまでもなく、昆虫や生き物にとってなくてはならないもの。
それにまた還っていく。
新しい命の源になる。
これを繰り返す。
命はつながり、循環していくのだ。
それを人間だけが思うように変えようとする。
私が弱ったカブトムシを見つけて持ち帰り、元気になるようにと飼育下に置いたなど、カブトムシや自然界からみればいい迷惑、ということになる。
私は死んだ後も、形にして残したいと標本にしたこともあった。
それがどういうことなのかは、凡人の私にはうまく答えられない。
気の利いた答えなど、私には述べられない。
昆虫飼育をしていると、この矛盾にいつも突き当たる。
飼育をしながら実は日々悩んでいる、ということは薄々感じてる。
昆虫が好きだから、という気持ちが逆に昆虫を苦しめているのかも..................?
飼っている昆虫が元気なうちはいい。
けど弱っていく昆虫を毎日見ると、気持ちも落ち込む。
こんな気持ちになりながらも、昆虫飼育は続いてきた。
本当に耐えられなかったら、もっと早くにきっぱりやめていたはず。
なのに、続けてきた。
やっぱり昆虫が好きだから、でしょう.......。
生と死は見えない何かでつながっている。
画像は、弱ったカブトムシのメスを見つけた場所。
