1980年アメリカ。
出演 マイケル・ケイン
アンジー・ディキンソン
ナンシー・アレン
監督 ブライアン・デ・パルマ(兼脚本)
ネタバレ全開です。
観るたびに自分の中で評価が高まっていった映画。
といっても今作は、最初に観たときの印象があまりにも悪すぎた。
テレビの月曜ロードショーかなにかだったような記憶がある。
当時子供だった私には、やたらとエロチックな場面が多い、ただいやらしい映画、そんな印象しかなかった。
オープニングからそんな調子で、家で家族と一緒に
観る映画ではない。
さらには怖い、ホラーっぽい映画。
どうみても子供が観る映画ではなかった。
最後まで観ていなかったかもしれないけど、犯人が誰だか知ってる記憶もあったから、やっぱり最後まで観たのかもしれない。
成人して、それからもテレビ放映やビデオで観る機会があった。
そのたびに内容がこれほど濃い出来栄えだったとは!と、評価はグングン上がる一方。
今ではデ・パルマ作品の中で、かなり好きな映画に。
先日また観る機会があった。
たしかにヒッチコック監督の「サイコ」に似ている部分は多い。
けど全然ストーリーも違うし、今作のほうが見応えがあった。
夫との性生活に悩んでいる主婦ケイトは、満たされない日々をおくっている。
その日もシャワーを浴びながら、みだらな妄想にふけっていた。
そんなケイトが心を許せるのは、通っている精神科の医師エリオット。
エリオットに夫の不満を打ち明けたり、彼と性交渉をしたい旨の話を持ちかけたりしていた。
ある日美術館を来訪したケイトは、ひょんなことから謎の男性との情事に溺れることになる。
男性の部屋で目覚めたら、相手の姿はなかった。
(というか彼は寝てた?)
書き置きをして帰ろうとするケイト。
机の引き出しに入っていたのは、性病のために通院している男性の診断書だった。
不安に襲われた彼女は慌てて部屋を飛び出した。
ところが、部屋に指輪を忘れたことに気づいて部屋に戻ろうとエレベーターに乗る。
そのエレベーターに、サングラスをしてカミソリを持った女性が乗り込んできた。
そして惨劇が起こる。
ケイトが倒れていたのを目撃した若い娼婦。
彼女とケイトの運命は......?
こうして改めて観ると、けっこう意外性の連続なんだなぁと気づく。
ファーストシーンから意外だった。
直球続きから、急にカーブのような変化球でくるような。
最初は性に不満を抱えた主婦が、とある男性との出会いを通しての性をテーマにした官能ドラマ、の模様。
ガラリと変わるのは、その男性のマンションから逃げ出すように帰る辺りから。
忘れものをしたケイトは、男性の部屋に戻らなくてはならなくなる。
この建物内は、出口がどこなのか?
そんな感じの通路とエレベーター。
なんだか緊迫感が走ってイヤな予感が高まる。
そう思っていたら、カミソリを持ったサングラスの女性がエレベーターに乗り込んでくる。
これはホントに、ストレートに怖い!
襲われて血まみれで倒れたケイトを目撃してしまう、コールガールの女性リズ。
そのエレベーターの場面は圧巻。
防犯ミラーに映る姿。
今作の最大の見せ場だと思う。
意外性はここでも。
ここから主役が交代となる。
主人公のケイトが殺害され、ここからリズが中心となる。
犯人は、エリオット医師の患者でボビーという人物らしいのだが.......。
後半は、事件と関わりを持ったリズとケイトの息子ピーターが組んで、危ない目に遭いながらも真相に迫る、という展開。
とくにリズが地下鉄で「ボビー」と不良集団に追われる場面は、第2の見せ場。
ここもまた見せ方が上手かった!
真相も意外だけど、わかる前になんとなくわかってしまうな嵐の夜のクライマックス。
ここでも意外な人物が登場。
ふたり目のボビーか?と思わせるシーン。
終わり方も予想外の終わり方。
さすがはデ・パルマ監督。
ただのラストでは終わらせない。
俳優陣も興味深くて、特にエリオット医師役のマイケル・ケイン。
名優が演じると不気味も不気味。
難しい役もサラリとこなすのは流石!
そして甘味な音楽も。
なにからなにまで完全度の高さを見せつけられて、
ヒネリにヒネリまくる。
デ・パルマ監督の職人技が冴えに冴えわたった。
とはいうけど、「それはちょっと....」ということがないわけでもない
あえて言わせてもらうとしたら......。
セクシー描写をもう少し抑えてもよかったかなと。
少々余計かな、そう思っていた。
しかし夫との性生活に不満を抱える主婦、という設定でスタートし、夫婦間の性行為がベースになっている序盤。
こんな流れだと描かないわけにもいかないか。
そして美術館での謎の男について。
この人はなんだったのか。
単にナンパ目的なだけで、あのとき限り、なんでしょう。
けど現れるタイミングが良過ぎるのである。
ケイトが性行為に悩んでいるのを知っていて現れた?
とすれば、彼はエリオットの患者か医院の関係者か。
なんらかの方法でケイトがそんな女性だと知り、近づいてきたのか?
でも自分が性病だと知っていながら、あんなことをするというのもなんだかね...................。
ケイト殺害場所が、男が住むマンションのエレベーター内。
というと、犯人はその謎の男?
などなどいろいろ思わせるのである。
ところが、男が美術館前でタクシーで待機している場面。
その近くで一瞬だけ、ボビーが映る。
つまりケイトはこのときすでにボビーに尾行されていた、となる。
それを考えると、男とボビーは別人。
ケイトと男が出会わなくても、ケイトは後をつけられてボビーに殺害されていた、となるでしょう。
殺人犯「ボビー」について。
姿をはっきり見せるため、女装した男性だとバレバレ。
終盤までいかなくても正体がわかりそうな?
でも当時はこれ系のオチが少なかったから、けっこうな意外性があったでしょうな。
長々と書いてきたけど、マイナス面も書いてきた。
気にいった映画なだけに、アレコレ言いたくもなる。
今作がハマらなかった方も多いと思う。
私も1、2度観ただけでは面白さにあまり気づけなかった。
でも次にまた観たいという何かがある映画.......。
そのような魔力のようなものを持った映画なんだと思う。
だからまた観れたし、凝った面白さが味わえた。
今後また観る機会あるかな。
また違う発見があるかも。