1978年アメリカ
出演 アン・ヘイウッド
監督 マービン・チョムスキー
DVD観賞
またまた観た人が少なさそうな作品です。
それほど話題にもならず、そのまま知られなくなっていく、人々の記憶から消えかけていく映画って数知れず、です。
そんな中、かつてこのような作品があったこと。
筆者が観て感じたことをストレートに書いてみたいと思いました。
「さよなら ミス・ワイコフ」
タイトルを目にして、どれだけの方がご存知でしょうか。
今作はわりと小品で、ヒットしたかどうかもわからず。
かつ、「隠れた傑作」という部類でもないと思いますが、間違いなく何かしらを考えさせる映画で、現実から目をそらしてはいけない、という主旨をずっしりと感じました。
今作は性行為の描写があるため、それに関する記述があります。
女性の方が読まれると不快に感じるかもしれませんが、ご理解いただければと存じます。
なお、今回も毎度お馴染みのネタバレです。
これからご鑑賞される予定がある方はご注意下さい。
1954年、アメリカ・カンザス州のある小さな町。
イブリン(イビー)・ワイコフは優秀な高校教員。
ラテン語を教えている。
他の先生や生徒たちの関係も良好で、信頼も厚い。
容姿もそれなりに魅了的な女性。
未婚で35歳だが、友人たちにも恵まれ充実した毎日を過ごしている。
そんな日々の中、彼女は情緒不安定に悩まされ体調面と精神面の不調を感じ始める。
医師の診察を受け専門医を紹介され、更年期障害と診断される。
イビーは男性との交際経験が無いようだった。
幼少期の頃の父と母の異常な関係が、現在の彼女に少なからず影響を及ぼしているのか。
医師からは恋愛することを勧められるのだが。
一方でバスの運転手に迫られ、良い雰囲気になりかけたものの恋愛には発展しなかった。
そんな中ある事件が起こり、イブリンの平穏な日常が大きく変わる。
観終えてみて、何を感じて何が胸に残ったか。
................................。
いろいろな人が居るし、過去の家庭環境なども人それぞれ。
イブリンのような女性も居るでしょう。
そんな何もかも理想的で完璧な人生じゃなくてもいいし、身体の調子が悪いことだって全然ある。
それに誰だってひとつやふたつ、言いたくないこともある。
過去に受けた心の傷もあると思うし。
恋愛することに問題を抱えるというのも、ごく普通の悩み。
彼女だけが特殊だなんてことは全然ない。
周りに迷惑をかけているのでもないし。
そこまでは普通の人と同じだと思った。
むしろ前半はメリハリが少なくて、ちょっと退屈にも思えた。
物語が大きく動きだすのは中盤から。
イブリンは、不幸にも性暴力の被害に遭ってしまう。
それも仕事場である教室内で。
ただただ真面目に生きてきて、黒人の評判が悪い学校の用務員の男(一方では有望なアメフト選手)の標的にされて。
相手の男は、愛など一欠片もなく己の欲望のためだけに行為に及んだ。
性行為の求めは、一度で終わるはずもない。
きっぱり拒否しようと思えばできたし、周りに相談もできた。
でもそれができなかった。
それが大きな負の連鎖となってしまう。
被害者で全く落ち度も無かったのだが。
そして2人の行為が周囲に知られることになる。
人種問題が現在より問題とされていた1950年代。
周囲の目は、現在とは比べようがないほど厳しかった。
そのあたりは日本人から見れば、イマイチよくわからない面があるかもしれない。
ことが発覚して、イブリンは掌を返したかのように周囲から冷たい目で見られて、嫌がらせを受ける。
そして、学校からも住んでいたアパートからも追われる形になる。
彼女が踏み出そうとする岐路。
待っているのは.............?
映画はそこで幕をおろす。
性被害を受けた女性が立ち直る、という意味合いとも微妙に違うような。
最初はそうだと思えたけど、ちょっと違う。
性加害が際立ったテーマのようにも見えない。
女性の性の目覚め、というのも違うのではないか。
一人の女性の身に起こった出来事を、けっこう淡々と描いていき、イビーの心理があまりはっきり描かれない。
一度は自ら命を断つことを考えるのだが。
だから、観る人それぞれが思うように写ってしまうでしょう。
性加害の描写に対して、ひどくて嫌悪感もある。
好意を寄せる人でもない、まして恋人でもなく、望まない行為のはず。
人種問題が大きかった時代なのに。
けど声を上げない、上げられない、とも。
嫌なのでもない、けど望んでいるのでもない。
イビー本人もどうすればいいのかわからなかった、なのかもしれない。
再三の要求に応じるしかなくなり、気づいたらことが大きくなってしまっていた。
理不尽極まりない、と私も思う。
被害者のはずの女性は厳しい立場に追いやられ、加害者は何でもないというのも。
とはいえ、私たちの実生活でも似たようなことはあふれている。
たとえば、会社で上司に明らかにパワハラのような扱いを受けたにもかかわらず、やめて下さいの一言が言い辛くてズルズルと酷い言動を受け続けてしまう、なんてよくあることで。
ことが発覚しても、バワハラを受けた側が立場が悪い思いをした、なんてとこも。
だからなのか、どこか人ごとだから、自分には関係ないこと、映画の中だけのこと、とは割りきれない。
全体を通して見れば忘れられていくだけの映画ではない、という確かな感触が残った。
原題は「GOOD LUCK ミス・ワイコフ」
邦題がなぜ「さよなら」なのかわからないけど、さよなら、とGOOD LUCKは似て非なる言葉。
イブリンにエールを、という意味合いのタイトルに違いない。
実際にそのようなセリフがある。
私たちはあなたを嫌ってるのではない。
交流することは終わりになるけど、あなたの幸せを願う気持ちに偽りは無い。
無表情のイビーに、皆のそんな思いは届いた........はず。









