Vol.116【昭和の怪獣映画の脇役たち①】の続きです。
昭和の時代の怪獣のことをツラツラ考えていたら、ふと「そういえばあまりパッとしない怪獣がけっこういたなー」と思いました。前回に引き続き、ゴジラやモスラやキングギドラなどの主役級の怪獣のかげでひっそりと活躍していた「脇役の怪獣」たちについて個別にお話ししたいと思います。
《フランケンシュタイン、バラゴン》
1965年(昭和40年)に東宝が日米共同で製作した「フランケンシュタイン対地底怪獣」という映画があります。
ざっとそのあらすじをお話しします。第二次世界大戦の終了直前に、ナチスドイツのUボートによって「フランケンシュタイン博士が創造した不死の心臓」が、秘密裏に広島の病院に移送されます。その目的は、日本とドイツが共同で、この心臓を使って不死身の兵士を創り出すことでした。しかし、広島に投下された原爆によって、この心臓は消滅したと思われていました。15年後の1960年に、広島県の宮島付近を徘徊していた浮浪児がある研究所に保護されます。この少年は、研究所の人たちによって大切に育てられ、短期間のうちに急成長して身長20メートルの巨人になりますが、ある時、取材に来たテレビ局のスタッフが強引に向けた照明に驚いて暴れ出し、逃走します。逃走したフランケンシュタイン(←映画では、いつの間にか「フランケンシュタイン」と呼ばれています)は、生まれ故郷のドイツに気候が近い日本アルプスの白根山付近まで移動します。一方、ほぼ同じ時期に秋田の油田に巨大な怪獣が現れます。それは、中生代の終わりに地下に潜って絶滅を切り抜けた巨大爬虫類「バラゴン」でした。フランケンシュタインが潜んでいると思われる白根山の付近で人が食い殺されるという事件が発生し、世間は、それがフランケンシュタインの仕業だと思い始め、遂に自衛隊による駆除作戦が開始されます。しかし、幼い頃の巨人の穏やかな性格を知っている研究所の人たちは「彼がそんなことをするはずがない」と信じ、白根山まで彼を探しに行きます。突然、彼らの前に地底からバラゴンが姿を現し、フランケンシュタインは研究所の人たちを守ろうとバラゴンと闘います。死闘の末、フランケンシュタインはバラゴンを倒したものの、火山活動によって割れた地面に飲み込まれるのでした。
あらすじが長くなりました。というのも、この映画はとてもしっかりと作られていて、脚本も演出も出演者の演技も優れていて、省略できるところが少ないからです。
個人的な感想ですが、この映画は「子供向き」に作られておらず、観客としておとなを対象にして作られたものだと思います。こどもの頃にこの映画を見て、何も悪いことをしていないフランケンシュタインが怪獣扱いされてひどい目にあっているのを「可哀そうだなー」と思っていました。
《フランケンシュタイン対地底怪獣 予告編》
《サンダとガイラ》
「フランケンシュタイン対地底怪獣」が公開された1年後の1966年(昭和41年)に、「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」という映画が公開されました。
この映画は「フランケンシュタイン対地底怪獣」の姉妹編という位置付けの映画で、細胞分裂によって生まれた2体のフランケンシュタインの争いを描いたもので、日本古来の神話「山幸彦と海幸彦」がそのベースになっているそうです。
当時のポスターを見ると、前作の「フランケンシュタイン対地底怪獣」では「恐怖の怪人」となっていたものが、この「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」では「怪獣」となっており、人間扱いされていません。その姿も前作とは異なっており、「サンダ」は全身が毛でおおわれており、「ガイラ」は全身がウロコでおおわれています。
私は、こどもの頃に見てからはこの映画を一度も見ていないので、もう一度見た時には感想が違うかもしれませんが、前作がサスペンスや人間ドラマの要素があったのに比べると、この映画は、そのような要素が少ないように思います。
サンダとガイラは、研究所で育てられた後、1年前に富士で死んだ(←なぜか富士で死んだことになっている)はずのフランケンシュタインの残った細胞から再生したクローンで、山で育ったサンダは心優しい性格で、海で育ったガイラは人間を喰らう凶悪な性格です。凶悪なガイラを許せないサンダはガイラに戦いを挑み、最後は外海で海底火山の噴火に巻き込まれ、2頭(怪獣だから「2頭」でしょうね・・・)とも海に消えて行きます。
前作はフランケンシュタインを生身の俳優が特殊メイクをして演じていたのに対し、この映画のサンダとガイラは「着ぐるみ」で、まさに「怪獣」でした。
《フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ 予告編》
※ Xに画像を投稿しました(2024.9.8)。
https://twitter.com/sasurai_hiropon