Vol.134【漫画「すすめ!!パイレーツ」の変態的面白さ②】の続き・・・ということでお話ししようと思っていましたが、去年(2025年)の秋ごろから炎上状態になった、江口寿史さんの「トレパク」(トレースしてパクったという意味)騒動について触れないわけにはいかないと思います。
この「トレパク」騒動について簡単にご紹介します。ことの発端は、江口寿史さんが制作した「ルミネ荻窪」のイベント用のイラストが、SNSの一般ユーザーの女性の顔写真をそのままトレースした(なぞった)ものであることが発覚したことにあります。これを受けて、「Zoff」、「デニーズ」、「クレディセゾン」、「ルミネ」、「柏市」、「熊本銀行」などに採用されたイラストにも同様の行為が確認され、各企業などは江口寿史さんのイラストの使用を見合わせることになりました。
[江口寿史さんのトレパクの画像]
私は、「すすめ!!パイレーツ」はギャグ漫画として素晴らしい作品だと思っていますが、この漫画の毎回の扉絵については、回が進むにつれ本編とは関係がない「イラスト」としての要素が強くなっていきました。独立したイラストとして評価できるレベルになっていき、その後、江口寿史さんがイラストレーターとしての地位を確立したことも当然だったと思っています。
「すすめ!!パイレーツ」の次の作品「ストップ!!ひばりくん!」ではその傾向が顕著になっていきました(私は読んでいません)。この「ストップ!!ひばりくん!」という作品は、連載中に頻繁に休載を繰り返し、ついには未完のまま連載が終了しています。私の勝手な推測ですが、イラストの評価が高まっていき、つらい思いをしてギャグを考えるのが馬鹿らしくなったのではないでしょうか。
[「すすめ!!パイレーツ」の画像
[「ストップ!!ひばりくん」の画像]
私の友人に、若い頃から水彩画を描いたりして、今は人形作家として活躍している方がいるのですが、その人に江口寿史さんのトレパク騒動のことを話したら、「イラストレーターのかなりの人がやっているよ。ただ江口寿史は調子に乗りすぎたんじゃないか」とおっしゃっていました。
私はチェコ出身の「ミュシャ」という画家の絵が大好きです。ミュシャの名前を聞いたら「美人画」を思い出す人が多いと思いますが、後年祖国のチェコに帰って制作した「スラヴ叙事詩」という大作に私は心を惹かれます。ミュシャは作品を描く時に、その準備として写真を多用していたそうです(私の持っている画集にも、絵と同じポーズの人の写真が収録されています)。
[ミュシャ 美人画の画像]
[ミュシャ スラヴ叙事詩]
江口寿史さんもミュシャと同じく写真をベースにする手法を取ってイラストを描いていたと思うのですが、ミュシャは、モデルを有償で雇って、自身がイメージするポーズを取らせ、それを写真に撮っていたと思われます。SNSから安易に(タダで)題材を取り出して、しかも写真の本人の承諾も取らず、商業ベースの作品として発表し、報酬を得ていた(高額の?)点は、やはりプロとして問題があったと、私は考えています。
江口寿史さんは、トレパク疑惑が炎上した後もしばらく沈黙を保っていましたが、2025年12月30日に自身のXに長文の釈明文を掲載しました。その中で「トレースについては、私の場合は下書きの最初期の一段階であり、あくまでアタリ程度のもの」と主張しておられるようです。「ルミネ荻窪」のイベント用のイラストと元になった写真を見比べた場合、とうてい「アタリ程度のもの」とは思えないのは私だけでしょうか。
ただ、「すすめ!!パイレーツ」というギャグ漫画には何の罪もありませんので、今後も引き続きお話ししたいと思っています。
(以下次回→時期は未定)
