フォーエバー・フレンズ -94ページ目

4、兄貴の心(4)

恵一が部屋に帰ると、なんと今日も直哉が来ていた。直哉はまどかと話に来ているのだろうが、恵一にしてみれば、直哉のそう言ったところが、全く理解出来ない。

一番嫌いな兄の家に、何故こんなに頻繁に来られるのか?自分なら嫌いな人間の家など絶対に訪問しない。

「また来たのか」

いつものように無愛想な恵一の態度を見ると、直哉はなんとなく不機嫌になる。

「すぐ帰るよ」

「勝手にしろ」

するとまどかは、いつものように「本当にひねくれ者だから」と言う。そしてそれに便乗するように玲奈も「パパ、ひねくれ者」。

そして恵一が冷蔵庫を開けると、いつも自分が飲むために冷やしておいた缶ビールが全て無くなっていた。

「まどか。ビールが無いぞ」

「あ、直哉君と私で飲んだの。飲みたかったらコンビニで買ってきて」

「直哉、お前未成年だろ」

恵一に怒られると直哉は「いいよ。ビールぐらい買ってきてやるよ」と言って、買い物にいく準備を始めた。

「いい。自分で買いに行く」恵一はそう言って、再度ジャケットを羽織った。

「いいよ。俺が買いに行くよ」

「いい。自分で買う」

そんな事を言い合っていると、まどかは「あ、恵ちゃん、お願いがあるの」と言ってきた。

「なんだよ」

「生理用品買ってきて」

「・・・」

結局、直哉と恵一は一緒に出掛ける事となってしまった。直哉はコンビニでビールを買い、恵一はちかくのドラッグストアで生理用品。

それぞれのミッションを持った二人は、夜の目黒の街を歩いていた。

こうやって二人肩を並べて歩くのは何年振りであろうか。

「兄貴って全然まどかさんに頭上がらないよな。生理用品買いに行かされるんだもんな」

「うるさい」

「偉そうにしても所詮かかあ天下じゃん」

「うるさい」

そしてコンビニとドラッグストアで買い物を済ませ、二人で目黒の街を歩いていると、恵一はふと口を開いた。

「直哉。この間連れてきた女の子は、お前の友達なのか?」

すると直哉は思わず黙り込んでしまった。確かに恵一の言う通り詩織とは友達である。

でも、本当はそれ以上の関係になりたいと心の何処かで思っていた。でも、結局自分と詩織は吊りあわないという言葉に逃げていた。

そして「そうだよ」と言って、寂しげに下を向いた。

「それじゃ、片思いか?」

「違うよ。そんなんじゃないよ」

「そうか・・・」

「何でそんな事聞くんだよ」

「いや・・・友達は大切にするんだぞ」

「兄貴に言われなくても分かっているよ」

「ああ。それと・・・医者の俺が見るには、あの子は顔色が少し悪かった」

「そうかなあ???」

「ああ悪い。だから体をよくいたわってやれ」

「わかった」

「長く歩かせてしまったら、何処かに座らせて休ませてあげろ」

「わかってるよ」

「これから暑くなるから飲み物はスポーツドリンクを飲ませてあげろ。それか果汁100%のジュース。そう、その場でミキサーしてくれるジュースなんかいい。トマトジュースなら尚いい。炭酸系は止めたほうがいい」

「わかってるって」

「それと彼女の前でタバコを吸うな」

「タバコは止めたよ」

「お酒もなるべく控えろ。飲むなら紹興酒か日本酒一杯ぐらいにしておけ」

「はいはい」

「それと・・・」

「何だよ?」

「よく相手の気持ちになって話してあげろ。彼女のいろんな悩みにのってあげろ。そしていろんな事を聞いてあげろ。人間はコミュニケーションが大切だから・・」

「兄貴にそんな事言われたくねえよ」

「それと・・・」

「もういい。わかった、わかったから」