フォーエバー・フレンズ -71ページ目

9、命のソナタ(5)

明け方、詩織は幕張のホテルで、激しい胸の痛みで目を覚ました。

「く、くるしい・・・ナオ・・・助けて・・・」

そう言って詩織は、布団の中でひたすら胸を押さえながらもがいていた。とても立てる状態ではない。フロントを呼ぼうにも、電話にすら手が届かない。

何もする事が出来ず、もがき続け、そのまま気を失ってしまった。



そして・・・。





『ナオ・・・助けて・・・』





直哉は、そんな心の声で目を覚ました。

「詩織!」

そう言って飛び起きると、時刻は朝の8時。



確かに今のは、詩織の声だった。詩織が自分に助けを呼んでいる。

そして詩織がかつて自分に言っていた言葉を思い出した。



『私は天才じゃない。だから綺麗には生きていけない・・・綺麗じゃないけど・・・それでもピアノが好きだから・・・』



その言葉を思い出すと、直哉は詩織の写真を引き出しから取り出した。

優しそうな笑顔。この目を細めた笑顔が見たくて、自分は今日まで頑張ってきた。

詩織に喜んでもらいたくてここまで頑張ってきた。

そんな事を思うと、目から涙がポロポロと流れ始めた。





そうだよ。

ずっと詩織の為に走ってきた。

詩織とともにここまで来る事ができた。

どんな形であっても、詩織は詩織。間違いない。

たとえAV女優であっても・・・。たとえ嘘をついていたとしても・・・。

辛くても、苦しくても、二人で乗り越えていこう・・・。

俺は・・・俺は・・・。

それでも詩織が好きだ。





そして直哉は、コンクール会場へと急いで走って行った。



もし詩織がまだ自分の事を好きでいてくれるなら・・・

もし少しでも自分に想いをよせてくれているのなら・・・

詩織、その時はやりなおそう。

いろいろあるかもしれないけど、でも、なんとか頑張って二人で乗り越えて行こう。



そんな事を思いながら、直哉は必死にコンクール会場へと向かっていった。



そしてコンクール会場へ到着すると、ホワイトボードには『岡本詩織 棄権』と書かれてあった。

「棄権・・・どうして・・・」

すると突然、ポケットに入れていた携帯が鳴りだした。取り出して画面を見ると、恵一からの電話だった。

「もしもし」

「直哉か?すぐに病院に来い!」

「なんで?」

「いいから来い!」