フォーエバー・フレンズ -56ページ目

1、臥薪嘗胆(4)

数日後、丸和工務店大会議場において、株主総会が行われた。

次期社長に選任されたのは青田幸介。歳は40歳。就任が決まると、彼は檀上で就任の弁を述べた。


「創業家である野島家に支えられ、ここまで来る事ができました。まず感謝の意を述べさせていただきます。そしてご選任いただきました株主の皆様へ厚くお礼申し上げたく存じます。まず、我、丸和工務店も創業45年目となり、ここで一つの節目を迎える事となりました。本業である、建設、土木、プラント設置工事もさることながら、これからのグローバル社会に対応するため、通信業界への参入も考えたく思います。そしてIT力を駆使し、全世界の現場を遠隔操作できる程の・・・・」


青田は恐ろしい程の雄弁家であった。この演説力こそが、彼の一番の武器であった。




その後、青田はいきつけの銀座の高級クラブで、社内の青田派を集めてパーティーを開いてた。華やかな高級クラブでの就任パーティー。

「社長、就任おめでとうございます」

部下達からそう言って祝杯をあげられるも、青田は至って淡々としていた。そして「これからが大変だ」と言って、バーボンの水割りをグイッと飲んだ。そして鋭い目つきで話し出す。

「会長は俺を中継ぎ社長と言っているが、絶対にボンを社長にはさせない」

青田がそう言うと、周りの派閥の者たちは、真剣そのものの表情で、青田の顔を見つめた。

一体どうやって御曹司を追放させるというのか。

「俺の持ち株と、銀行と、社内持ち株会を味方に付ければ否決権を持てる。だが一番怖いのは、株式の11%持つボンだ。だからこれから社内の野島派の切り離し工作をして、持ち株会を完全に手中に納める」

「しかしどうやって・・・御曹司ですよ?」

部下達が心配そうにそう聞くと、青田は自信満々の顔で語りだした。

「あいつは所詮ボンボンだ。内部工作みたいな事は出来ないだろう。だから大坂城のように外堀から埋めて行き、この会社にいられないようにしてしまう」

青田は不気味な笑みを浮かべた。




丸和工務店の持ち株比率は、野島克彦14% 野島圭一郎11% 青田幸介8% 太陽総合銀行10% 東京DL投資信託10% 社内持ち株会5%と言った感じである。


青田と銀行と社内持ち株会がタッグを組めば、経営権を把握できる立場にあった。そんな青田の野心等露知らず、父の克彦は娘婿という事だけで、青田の事を信頼していたのだ。勿論重役の中には警告を発する者もいたが、それを言うと決まって父克彦は、青田と同じぐらい仕事が出来てから物を言えという始末。そこにはもう絶対にゆるぎない信頼というものがあった。






数日後、丸和工務店の新役員人事が発表された。その役員人事からは、若返りという事を理由に、古くからの重臣が全て排除されていた。顧問にすら重臣の名前は無く、青田派以外の取締役は、なんと圭一郎一人だけとなってしまった。

これは圭一郎を囲い込む作戦である。しかもホームグラウンドの財務部管掌から外され、経営支援管掌と、なんとも訳のわからない担当とされてしまったのである。




圭一郎は翌日、六本木ヒルズの事務所を追われ、丸の内のビルの片隅にある、経営支援室という部署へと移った。もうこれで青田に対してNOと言える人物は、六本木ヒルズ内には誰一人として残っていなかった。


圭一郎は役員会では、発言する事すらも許されず、その後の懇親会に呼ばれる事もなかった。そんな圭一郎の姿を見て、社内の人間はどんどんと圭一郎との距離を置きだしていった。勿論圭一郎と生きるも死ぬも一緒という気持ちを持つものもいた。しかし、そのような人間は真っ先に地方へと左遷されていった。まさに社内大粛清だった。