2、消えぬ思い(2)
恵は、じゅうじゅうと音を立てたアツアツのハンバーグを2皿を持って、空腹の二人の前へ現れると、至って事務的に「油が跳ねますので、ナフキンをご利用ください」と言った。
真は「はいはい、わかったよ」と言って、油が自分に飛んで来ないよう、ナフキンを持った。
すると恵は手際よくハンバーグにサッとナイフを入れ、鉄板部分で赤いレア部分を焼きだした。
「早えな!」コロンブス川崎店を良く知る真には、この違いがわかった。
そしてオニオンソースをかけ終えると「ごゆっくりどうぞ」と言って恵は去っていった。
真はハンバーグを一口サイズに切り落とし、口に運んだ
そしてその瞬間「うまい!」と思わず大声を出してしまった。
陽一は真の大声にビックリした。
「なんだよ真、でかい声だすなよ」
「こりゃうめえ!しかし何でだ?川崎店よりうまいぜ!」
「そんなわけないだろ。みんな一緒だよ」
すると茜がお冷を持ってきて「当店はハンバーグマスターの山野さんがカットしますので、他店より美味しいのです」と言った。
「ハンバーグマスター????」
陽一と真はしばらくお互い顔を見合わせると「あはは!かっこわりい!」と言って思わず笑い出してしまった。
恵は他のテーブルを片付けていたが、茜の『ハンバーグマスター発言』に驚き、飛んでやってきた。
「茜!ハンバーグマスターって言わないで!」
「いいじゃん、いいじゃん、同級生なんだから」と言って茜も真と陽一と一緒に笑った。
茜の一言でなんとなく4人は意気投合してしまい、バイトが終わると、そのままボーリング場へ行った。
茜の通っている学校は横須賀女子高といい、恵とは違う学校だった。
その為か、真の恐さなんて全く知らない。
それどころか、茜には真がとても優しいそうな男に見えていた。
「よっしゃ!」
真が3連続ストライクをだして、ガッツポーズをすると、茜は「すごい真君!ターキーじゃん!」と言って真に駆け寄った。
そして「イエーイ」と言って、ハイタッチを求めてきた。
真は、人懐っこい茜に少しタジタジになりながら、ハイタッチをした。
恵はそんな真の姿を不思議に思い、陽一に「ねえ、遠山君てあんな人なの?」と聞くと、陽一は「そうだよ。なんかおかしいか?」とあっけらかんと言った
陽一も幼馴染の為か、真の事が恐いなんて全然思っていない。
しかし恵には信じられなかった。
真は1年の春から、上級生達を片っ端からシメてしまい、そして入学式からたった1ヶ月で港南学院高のてっぺんに立った。
さらには喧嘩騒ぎを連発して、今まで3回も停学処分になっている。
そんな真は、いつも恐い目つきをしながら、文麿などの不良グループを引き連れて学校の廊下のど真ん中を歩いていた。
だから恵は真がとても恐かったのだ。
だが、今目の前にいる真はまるで別人のようだった。
優勝は2ゲームで365点を叩き出した真で、陽一は355点だった。
どちらにせよ、このスーパーボーラーを目の当たりにした乙女達は大満足であった。
その後4人は汐入駅で別れ、真と茜は京急に乗って帰っていった。
真と茜は電車の中で隣り合わせに座っていた。
茜の通う横須賀女子高は通商『スカジョ』と言い、神奈川県内でも有名なお嬢様学校である。
何処から見てもヤンキーの真と、スカジョの制服を着た茜のカップルは、どう見ても不自然なカップルだった。
「真君チョコ食べる?」と言って茜はアポロチョコを真に差し出した。
真が「ああ」と言って手を出すと、大きな手の平の上に、アポロチョコがコロコロと転がった。
口に含むと、イチゴとブレンドした甘い味が真の心を癒した。
「もっと食べる?」
「もういいよ」
「そうなの」と言って、茜はアポロチョコをもう一つ食べた。
真は不思議な気持ちになっていた。
こいつなんだろう?
こいつといるとなんか楽しい・・・・。
でもスカジョだしなあ・・・俺とはつりあわねえか。
俺が彼氏なんて事になったら、こいつの親怒るだろうなあ・・・。
そう思うと少しだけ笑みをこぼした。
金沢八景駅が近づくと、茜は「私、次で降りるんだ」と言った。
真はふと携帯を取り出し「茜、メルアド教えてくれねえか?」と言った。
茜は笑顔で「いいよ」と言って真の携帯に自分の携帯を近づけ、お互いのメルアドを交換した。
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