フォーエバー・フレンズ -377ページ目

2、消えぬ思い(1)

「一ノ瀬!」由香子は鉄扉を重たそうに開けて、屋上へやってきた。

そして屋上にいた文麿をみつけると「徳永君は何処!」と言って文麿に詰め寄った。

由香子に続いて仁科先生と恵も駆けつけてきた。

しかし屋上には文麿しかいなかった。

陽一と真は何処にも見当たらなかった。

それに文麿はただボーゼンと立ち尽くしていた。

由香子は文麿の胸ぐらを両手でつかみ「徳永君を何処に連れて行ったの!言いなさい!」というと、文麿はボーゼンと生気をなくしたように「スタバ・・・」と言った。

「え?なに?」

「スタバに行ったよ・・・二人とも・・・」文麿は陽一と真の関係がまったく理解出来ないでいた。

「スタバ?」3人組は声を合わせた。

スターバックスコーヒーで、陽一と真はスターバックスラテを片手に、思い出話に浸っていた。

久々の再会だった。

実は陽一と真は、リトルリーグ時代にバッテリーを組んでいた。

しかし真は親の事情により、小学校卒業と同時に鎌倉から東京の蒲田という町へ引っ越していったのだ。

「本当にびっくりだぜ。まさか陽一とここで会うとはなあ」

「それはこっちのセリフだよ」と言って陽一はコーヒーを口にしながら嬉しそうに話した。

「何年ぶりだよ?」

「小学6年生のえーと・・・」陽一は必死に思い出そうと思ったが思い出せずにスターバックスの天井を見上げた。

「たしかな・・・俺が蒲田に引っ越す前だよ。それで最後に陽一と一緒にスケートに行ったんだよ。たしか4年前の3月だ」

すると陽一はその時の事を思い出したかのように「そうだ思い出した。3月21日の祭日だよ」と言うと、真は懐かしそうに「そうだよ。3月21日の日だ」と言った。

「それでスケートした後に、真は親父の車に乗せられて、去って行ったんだよ」

すると真が「あの時陽一泣いてたよなあ」と言って笑った。

陽一は少し照れ笑いしながら「そうだったな、泣きながら真の乗った車の後追いかけてなあ、そしたらお前車から顔出してさあ、陽一!同じ高校に行こうな!一緒に甲子園だぞ!って言ったんだよ」

「なつかしいなあ・・・」

そんな事を話していると、二人ともその時の思い出が込み上げてきて、言葉が出なくなってしまった。

しばらくしてその思いが治まったのか、真が口火をきるように話し出した。

「お前仙台学園に行ったって聞いてたんだよ。なのに何で港南にいるんだ?」

「ああ、辞めて帰ってきたよ。野球は去年の6月に辞めた」

「なんでだよ。お前なら今頃甲子園だろ?」

「レギュラーだったが、辞めた

「親の事が原因か?」

「知っているのか?」

「ああ噂で聞いただけだがな。残念だったな」

そう言うと、二人ともうつむいてしまった。

「ところで真こそ野球やってないのか?お前軟式の関東大会で優勝したって聞いたぞ」

「中2の秋だな。中3では都大会の決勝戦で負けたよ。それでもう野球は辞めた。それどころじゃなくなってさ」

「どうしたんだよ

「俺、今蒲田に住んでんじゃないんだよ。川崎に妹と2人で住んでいるんだ。新しいオフクロと合わなくてさ・・・お前との別れの後、親父とその女の間に子供が出来てさ。それで弟が生まれたんだけど、そしたらお前ら邪魔だから出てけってさ・・・そんで高校入学したら妹連れて家を出たんだ。まあ一番合わなかったのは俺より妹の方だったけどな」

真は笑顔交じりで、そんな嫌な思い出をあっけらかんと陽一に話した。

そして「本当は鎌倉に帰りたかったんだけど、妹が友達の近くがいいって言うからさ・・・」と言った。

「そうか・・・」と言って陽一はうつむいた。

4年前の3月21日のスケートの後、この二人にはそれぞれ悲痛な運命が待っていた。

真はそんな暗い話を変えようと「そうだ陽一、お前今1人暮らしだろ?」言うと、陽一は少し微笑んで「ああ」と言った。

「ゲーセン行こうぜ。そんでさあその後メシ奢ってやるよ。どうせいつも1人メシだろ」



夜の七時半。あと30分でバイトも終わりという時、店の入り口のセンサーが鳴った。「コロンブス上手いんだよ。俺の家の近所にもってさ」と言真に連れられて、店内に陽一が入ってきた。

「いらっしゃいませ」と言って、恵はいつものようにお客様を迎えに行くと、その客が陽一だと気付き驚いた。

「徳永君!」

「お前・・・」

陽一と真の二人はドリンクバーのサーバーで汲んできたコーラを飲んでいた。

そんな二人を恵と茜はキッチンの隙間から肩を並べて観察していた。

茜は「あれが徳永君なの?」となんか期待はずれの表情をしながら言った。

「そう。カッコよくない?」

「う~ん・・・あの顔ならもっと細身が好きだな。ちょっとゴツくない?」

「そうかなあ・・・」恵は茜の返答に少しだけがっかりした。

「私どうせごついんなら、もう1人の方が好きだな。男っぽいし」

「えーっ遠山君?やめてよ。遠山君怖いんだよ」恵は茜のセンスを疑ってしまった。

店長が呆れ顔で「恵ちゃんハンバーグ焼けたよ」と言うと、恵は「あっ、はい」と言って、ハンバーグを持っていく準備を始めた。


にほんブログ村 小説ブログ 学園・青春小説へ
にほんブログ村