フォーエバー・フレンズ -361ページ目

4、交わした約束(5)

ゴールデンウィークが終了し、学校はいつもの活気を取り戻した。

最近は野球部の活動が注目を浴びはじめ、ギャラリーが10人程集まるようになった。

お目当て選手はやはり陽一であるが、もう1人人気のある選手がいた。

それはなんと文麿である。

文麿は本当に器用かつ、ダイナミックなプレーヤーだ。

守備も上手いし肩も強く、バッティングセンスもよい。

陽一と同じ「走」「攻」「守」3拍子揃った選手だ。

バッティング練習ではたまに柵超えを打つ事すらある。

修理を終えたばかりのバッティングマシーンを相手に、文麿は練習をしていた。

そしてカキーン、カキーンとセンター方向へのライナー性のあたりを連発した。

バックネット裏で見つめる速見と陽一は、文麿を見て笑みをこぼした。

「徳永、いい選手つかまえたなあ」

「はい」

「なんで一ノ瀬みたいな奴が、出来るってわかったんだ」

「話しを聞いてみると、ああみえて冷静に分析する所があるんです。それだけの分析力があれば真から何かを盗み取っていると思ったんです」

その通りだった。文麿はもともと俊足と守備が売りの選手だったらしいが、真の打法を真似て中学時代にバッティングが開花したのだ。

ボールを上手く捕まえて、センター方向へはじき返す打球が多く、まさしくクロウト好みする打者である。

「OK!絶好調だ!」文麿は由香子の前でいいカッコができてご満悦だ。

「よし、次徳永!」速見は陽一へ指示を出した。

「はい!」と言って、陽一がバッターボックスに向かおうとしたとき、1人の大男がグラウンド内に入ってきた。

真だった。するとあたりは恐怖に包まれたかのようにシーンと静まり返った。

これじゃあ虎を近くに迎えた、シマウマの集団である。

真は「俺も打っていいか」といって適当にバットとヘルメットを持ち出した。

すると速見は「じゃあ、先に打ってくれ、30球でいいな」と言った。

速見は人間が出来ていた。

「あいよ」そう言って真は右バッターボックスへと入った。

フェンス裏の恵に陽一が耳打ちするように話しかけた「みとけよ。真のバッティング」

バッターボックスに入った真からは、更に恐ろしい程の威圧感を感じた。

あたりは完全に静まりかえってしまった。

これこそが4番バッターなのだ。

久しぶりに真のバッティングを見る陽一は、胸を躍らせた。

今バッターボックスに立っているのは真だ。

4年ぶりにみる世界一の4番打者の真なのだ。

そしてバッティングマシーンがウイーンと音を立てて軌道を開始しだした。

その瞬間ブシュ!という弾かれた音を放ち、130キロ程のストレートが飛んできた。

真のバットは空を切った。空振りだった。

そして二球目も真のバットは空を切った。

「ねえ大丈夫?全然当らないよ」恵は心配そうに陽一に話しかけた。

「大丈夫だよ、あいつは練習なら3回は空振りする。そうやってタイミングを合わすんだよ」

陽一の予想通り、3球目も空振りした。

するとギャラリーがざわつきだした。

「お前口だけか?」なんて隠れて野次る奴も出てきたが、真は全く動じずにバッティングマシーンを見続けた。

そして4球目遂に真のバットがボールを捕らえた。

カキッと音がなって、ライト方向へ高く飛んでいった。

ライトフライだと誰もがそう思った。

そしてライトを守っていた慎太郎も、ライトフライだと思い、キャッチングの体制に入ろうとした。

すると陽一が「慎太郎!バックだ!バック!」と大きな声で慎太郎に指示をした。

ボールは落ちずに、そのままどんどん伸びていった。

おかしいと気付き慎太郎もあわててバックしだした。

すると陽一は「入ったな・・・」と呟いた。

「えっ?」恵は不思議そうに球の行方を見つめた。

ボールはフィールド内には落ちずに、柵の向こう側へ消えて行った。

広角打法だ。

真が右方向に打った球は恐ろしく伸びるのだ。

「やっぱすげえ。世界大会の時と一緒だ」陽一はあまりにもの凄い技をみて、止めていた息を一気に吐き出した。

グラウンド内はさらにシーンと静まり返った。

真は「次センター行くぞ」と言ってバットでセンターの位置を差した。

第5球目これもジャストミートだ。

センター方向へ高々とボールが上がり、そしてこのボールも柵越えとなった。

「次レフト」今度はレフト方向をバットで指した。

第6球目真は思い切って強振した。

するとボールはカキーンという大きな音とともに、一直線にレフトのフェンスを越えていった。

その後も真は鋭い当たりを右に左に飛ばし続け、30球を打ち終った。

真は速見に軽く頭を下げ「速見さんありがとう」と礼を言うと、速見も「ああナイスバッティングだ。またこいよ」と言って真に敬意を表した。

真はバットとヘルメットを置き、グラウンドに一礼して去っていった。

「いい選手だ・・・」速見は去り行く真の大きな後姿を見つめながらそう呟いた。

「凄かったねえ」恵は感心してしまった。

「あのバッティングは真しかできないよ。やっぱりあいつは真の4番なんだ」

「うん」恵も納得のようだ。

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