フォーエバー・フレンズ -354ページ目

6、そして初試合(1)

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(c) ワンセブン写真素材 PIXTA

司は自宅のパソコンの前で思案にふけっていた。

この野球部は初試合をする事ばかり考えていたのだが、本当の戦力はどれくらいあるのだろう。

それを事細かに日々研究していた。

『野球オタク』の悲しい性なのか、司はこういう事を研究せざる得ないのだ。

今まで採取したデーターは膨大な量となり、司のパソコンで容量が追いつくのか不安になるぐらいである。

港南学院の野球部員に関しては能力データーは勿論、映像まで全て収めている。

司の計算では、陽一と真の打撃のパワーと技術力においては、甲子園でもそうはいない程のものと結論を出している。

だからクリンナップまで繋げばかなりの得点力が期待できる。

投手力に関しては速見一本に頼らざる得ないが、速見なら甲子園出場クラスのチームと勝負してもおそらく4失点以内で押さえられると結論を出した。

さらに港南学院の一番の売りはやはり守備力と司は見ている。

まず外野守備は、やはりセンターの陽一の守備力はプロ並みとみた。

ライトの慎太郎の守備も抜群で、甲子園でも通用するとみた。

レフトの真は守備範囲ではやはり劣るものの、元キャッチャーだけあってやはり強肩だ。これを総合的に計算すると、神奈川県いや全国的にトップクラスの外野守備とみた。

次に内野守備、やはり名手と成長しつつある修二の存在が大きい。

文麿もなかなか上手い。

よって、左方向の守備は全く問題なく、甲子園でも上位クラスに入る。

しいて問題を言えばセカンド・ファーストつまり一・二塁間に問題がある。

要は司と裕輔の守備力だ。これは司が克服しなければならない課題だった。

しかし内外野の守備力を総合的に分析するとかなりレベルが高く、全国大会でも上位クラス、いやトップクラスかもしれない。

守備力・投手力を総合的に計算すると、ファインプレーや捕殺等で、本来速見の技量ではは4失点以内で抑えるところ、守備力が後押しして失点を平均0.7ポイント下げれるという結論を出した。

これを昨年度神奈川県大会ベスト8クラスのデーターと照合し、シュミレーションをかけてみた。

すると技量だけでは十分甲子園に行けるのである。

なんと8回シュミレーションを行い、7回も甲子園に行ったのだ。

しかし一番の問題は『作戦力』と『経験』の二つである。

この二つの課題が、技術力の足を引っ張る事となる。

「やはり作戦と経験かあ・・・」司はパソコンの画面を頬杖をつきながらみつめた。

そして司はこのようなデーターを主将の速見に見せず、陽一に見せるのだ。

速見に見せても「そうか、まあ仕方ないよ。名門校のような事はできないよ」と言って済ませてしまう。これは速見のいいところでもあり、悪いところでもある。

陽一に見せれば速見に許可を取って、必ずなんらかの対策を練ってくれるからだ。



2時間目の休憩時間は15分間ある。その間に司は2Cの教室へやってきた。

目的は昨夜の思案して作ったレポートを、陽一に見てもらう為だった。

司のレポートはすごくわかりやすく、一つ一つ数字を出して比較し、そしてグラフまで貼付しているのだ。

将来どのような道に進むかは知らないが、司はいい経営コンサルティングになれるであろう。

そしてそのレポートの題名は『甲子園への計画A』だった。

「ふ~ん」陽一はシャープペンシルを手のひらで回しながら、黙々と司のレポートを読んでいた。

「違うかなあ。僕の言っている事」

「いや・・・結構当たっていると思う。その通りだと思う」陽一は感心してしまった。

『原ノート』を真剣に読むのは陽一だけである。

陽一は小学校、中学校と硬式野球の頂点を知っている為、原ノートの信憑性をだれよりも分かっているのだ。

「まず経験だな。これはもう練習試合で経験を積むしかないな。しかし作戦力これはとても難しい」

「どうして?」

陽一はシャープペンのペン先を司に向けて「まず作戦をやる為には複雑サインがいる。いろいろな想定が考えられるからだ。それを仁科先生が出来ると思うか?」と司に言った。

司は素直に「思わない」と答えた。

「そしてもう一つ。作戦を行う場合、相手を事前に知っておかなくてはいけない。つまりスコアラーのような人間が必要。仙台学園はそうだったよ」

「そして最後。野球部は9人しかいない。作戦を複雑にすればするほど、交代選手が必要になってくる。はたして選手が集まるだろうか?」

「う~ん」と言っては腕組みをした。

「司の案には人が必要だ。優秀な監督、選手。そして偵察部隊とデーターの取りまとめ。顧問を探すだけでも大変だったのに、これからすぐ監督を探して偵察担当まで連れてこられるか?もし連れてきてもみんなが受け入れるか?」

「そうか・・・」と言って司は肩を落とした。

陽一は、司の言っている事は正しいと思っている。

しかしもう時間が無いのだ。

この2ヶ月陽一は、野球部をまともに作る大変さを嫌程味わった。

しかもたった一試合の練習試合をする為だけにである。

甲子園どころかこのままじゃ県大会すら出られないと思っていた。

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