フォーエバー・フレンズ -349ページ目

6、そして初試合(6)

茜と真も同様に試合後、京急に乗って一緒に帰った。

「ダメだな、小林の球全然見えなかったよ」と真は、反省をしていた。

「いいじゃん。勝てたんだから」と茜が励ますと、真は「いや、だめだな、バッティングセンターで少し練習でもするか」と言った。

茜の家は、金沢八景駅だった。

金沢八景の駅が近くなると、茜はとても寂しくなってきた。

もっと真と一緒にいたかったのだ。

そして「ねえ、川崎まで行ってもいい?私もバッティングセンター付き合ってもいい?」と茜は言い出した。

真はキョトンとしながら「ああ」と言った。

真と茜は川崎駅で降り、二人はいつもの古ぼけたバッティングセンターへ行った。

茜も恵同様に、野球の事はあまり知らない。

だが、真がバッターボックスに立っている姿を見ると、生前無口だが何か威厳のあった父親を思い出すのである。

真は、あまり自分の話しをしないが、バッターボックスに立つ真の背中には、男の辛さや、寂しさをなんとなく語っているような気がした。

いつのまにか茜はそんな真の背中に、父の面影を見つけていた。

練習が終わると、真はどうも納得いかない表情を見せ「こんな球打っても、全然役に立たない。これは小林の球じゃない」と言うと、茜が少し心配そうな顔をしたので、真は笑って「茜、帰ろうか。駅まで送っていくよ」と言った。

真はいつもは人を睨み付けたり、机を叩いて馬鹿笑いしたりはする。

しかしやさしい笑顔は、そうは人に見せた事がない。

だが、真が茜に見せる笑顔は、まるで茜の心を包み込むような優しい笑顔だった

二人は、川崎の雑踏の中を歩き、京急川崎駅へと向かった。

二人の言葉は少なかったが、茜は真と一緒にいれるだけでなんとなく幸せな気持ちになれた。

「あのね・・・」茜はふと話し出した。

「なんだよ」

「私、真の事好きだよ・・・・」

「なっ・・・なんだって!」真はビックリして思わず大きな声を出してしまった。

そして「茜、正気か?俺だぞ?何かの間違いじゃないのか?」と言った。

茜は少し照れながら「間違うわけないじゃん!それに本気だよ」と言った。

「何で俺なんだ?大体俺、今まで茜のような奴と付き合った事がないんだよ。髪は茶髪でさあ、それに言葉も俺と同じように悪くてさ・・・茜、本当に俺みたいな奴でいいのか?」と真が言うと、茜は川崎の夜空を見ながら真はパパの面影があるんだ・・・」と言った。

「パパ?俺が?」真が聞くと、茜はゆっくりとうなずいた。

「真と一緒で、無口でいつも背中で何かを語るようだった」

「何で過去形なんだよ・・・」

「もういないの。1年前に死んだの」

「そうだったのか・・・どんな親父だったんだ?」

「仕事だけで、私と遊んでくれた記憶も無い。それで最後六本木の職場で倒れてそのまま・・・」

真は茜の話を聞くと、同じように夜空を見上げた。

「だから仲も悪かった。はっきり言って大嫌いだった。それで私の誕生日の朝に大喧嘩して・・・そしてその日の晩に仕事中に死んだ・・・」

そう言うと、茜は真を見つめた。

「それからしばらく経って、パパの職場の机の中に私への誕生日プレゼントと、誕生日おめでとうって手紙が入ってあったんだ・・・」

茜は死んだ父を思い出し、目に涙を浮かべた。

「私、後悔したくないんだ・・・愛せれる時に人を愛したいんだ」

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