フォーエバー・フレンズ -331ページ目

11、愛する心(2)

集中治療室では文麿が頭を抱えながら椅子に座っていた。

由香子はあちらこちらに包帯を巻き、酸素マスクを口に当ててベッドで眠っていた。

そしてまるで停止しているロボットのように、あちらこちらに管や点滴を通されていた。

仁科先生と恵は恐る恐る扉を開けた。

二人はその由香子の悲惨な状態を目にし、一気に体が硬直した。

「ゆ・・・由香子・・・」恵はその場に立ちすくんだ。

「俺がやったんだ。由香子をバイクに乗せたばっかりに・・・」文麿はずっと下を向いたままだった。

「由香子!」恵は走りよって、由香子の手を両手で握り締めた。

そして「死んじゃやだよう」と言って泣き出した。

「手嶋さん・・・」仁科先生は、もうどうしていいかわからない。

すると担当医師がやってき「保護者の方ですか?」と聞いてきた。

「担任です。この子達の担任です」

「保護者の方と連絡が取りたいのですが」と医者は困惑した表情を見せた。

恵は「私由香子のお母さんの携帯番号知ってます」と言って、携帯電話をかばんから取り出し、電話をかけだした。

「あっあのう・・・彼女どうなんですか?死んだりしませんよね?・・・」仁科先生は恐る恐る医者に聞いてみた。

医者は「・・命は大丈夫かと思います。そこに置いてあるかばんの中に大量のぬいぐるみがあったんですよ。これショックを和らげたんでしょうね。それが無ければ即死だったと思いますよ」

恵は由香子のかばんの中を見ると、衝撃で破れた大きなプレゼント用の袋が入っていた。

そこには形の崩れた『かぴぱら』や『ごまちゃん』の小さなぬいぐるみが沢山入っていた。

そして恵はそのぬいぐるみの入った袋の中に「恵へ」と書いた小さく折りたたんだ一枚のメモを見つけたので、開いてみた。

『恵へ この間はごめんね お詫びにこれあげる』と書いてあった。

恵の目から涙が溢れ出した。

「由香子・・・私もごめんね・・・」



夕方になると由香子の両親が駆けつけてきた。

「由香子!」由香子の両親はベッドの上の自分の娘の姿に愕然とした。

「すみません!俺がこんな目に!」文麿は病室で土下座をついた。

すると由香子の父親は血相を変え「お前!よくも娘を!」といって文麿の胸ぐらをつかみあげた。

「暴力はだめです!暴力はやめてください」仁科先生は必死に間に入った。

すると「パパ・・・・いちのせ・・・おこらないで・・・おねが・・い」と途切れ途切れに由香子が話し出した。

「いちのせ・・・を・・・おこらないで・・・」由香子はうっすらと目を開けた。

「由香子!」由香子の父は目に涙を溜めた。

「おい・・・いちのせ・・」

「由香子・・・」文麿は立ち上がって由香子を見た。

「何してるの・・・早く甲子園・・・行け。私は大丈夫だから・・・早く甲子園に・・・行け・・・優勝してきてね・・・約束だよ・・・」

「由香子・・・」文麿は泣き出した。

「めぐみ・・・」

「由香子!」恵は咄嗟に、由香子の傷だらけの手を握り締めた。

「恵・・・ごめん・・・恵だけが私の事・・・助けてくれる友達なのに・・・なのに・・・あんな事言ってごめん・・・」

「いいの・・・私も嘘ついてごめん・・・」

「徳永君・・・いいよ・・・恵が好きなんだから・・・付き合ってもいいよ・・・」

「由香子・・・」
恵はもう涙が止まらなかった。そして傷だらけの由香子の手を、自分の頬に当てた。
すると由香子はそっと目を閉じた。
「由香子!死なないで!」恵が言うと、隣にいた医師が「大丈夫です。薬の効果が出てきているんですよ。休ませてあげてください」と言った。

その言葉を聞いて、恵は少し安心した。



その夜鎌倉救急病院の前に陽一がやってきた。

陽一が来た時は、文麿と仁科先生は既に帰ってしまっていた。



「じゃあ大丈夫なのか」

「うん。今のところはね」

一ノ瀬はどうするって?」

「由香子が優勝してきてって言ったから、甲子園に行くって。由香子の両親も納得したみたいだし」

「そうか・・・それじゃ一ノ瀬は来れるんだな」

「あのね陽一私甲子園応援に行けないや」

「由香子についとくのか?」

「うん・・・夏休みだし、朝からバイトの時間までは由香子の看病をしたい

「そうか・・・わかった。しっかり面倒みろよ」

「ごめんね」

「いいよ。仕方ないじゃん」

「しばらく会えないね・・・」恵は悲しそうな顔をした。

「そうだな・・・じゃあ・・・行ってくるよ」

「うん・・・頑張ってね」

陽一は去ろうとしたが、恵を振り返り、そしてゆっくりと右手の拳を恵につきだした。

「なんなのそれ」

「恵もこうやって拳を出してくれ」

恵は言われた通りに拳を作り、その小さな拳を、陽一の拳にくっつけた。

すると陽一は「待っていてくれ。必ず優勝して帰ってくる」と言った。

「うん」恵はそっと笑った。


そして走り行く陽一の後姿が消えるまでその姿をずっと見ていた


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