フォーエバー・フレンズ -329ページ目

11、愛する心(4)

甲子園開会式。全国から集まってきた49校の高校がこの甲子園に出揃った。

恵は自宅から自転車で、鎌倉救急病院へと向かっていた。

8月8日の朝8時。

恵は、病室で泊り込みで看病していた由香子の母に代わって、意識の戻らない由香子を看病する。

病室につくと早速テレビカードをカード入り口に入れた。

そして由香子の様子を気にしながら、イヤホンを使って開会式を見だした

最初に昨年度優勝校である、大阪代表の『淀商高校』が入場してきた。

淀商高校は昨年の夏と今年の選抜を連覇していて、エースは2年生の篠宮。そして主将で4番キャッチャーの大河内は今年の高校生ドラフトナンバー1候補である。

音楽に合わせて、それぞれの高校が入場し、やがて『港南学院』のプラカードを先頭にした選手団が現れた。

キャプテン速見を先頭にし、その後を陽一や真が行進をしてい

「陽一・・・」数日ぶりに見る陽一の姿に、恵は目を輝かせた。

恵だけじゃなく、茜も横浜の自宅でその中継を見ていた。

テレビの下のDVDは『録画』の赤い文字が点灯していた。



開会式が終わると、恵はテレビを切って、意識のない由香子の顔や体をそっと拭いた。

そして「由香子。早くよくなってね」とつぶやいた。

看病といっても、別に横にいるだけじゃない。

意識の無い由香子は体が痛い為か、無意識に点滴を外そうとするのである。

すると恵は由香子の体を押さえるのだ。

「うう・・・」体の痛さで由香子がうめくと、あまりにも可哀相で泣きそうになってくる。

でも泣いちゃだめだと自分に言い聞かせ「由香子ダメ」と言って、無心で由香子の体を押さえた。

午後3時になると自宅で仮眠を取り、少しすっきりした顔の由香子の母親がやってくる。

すると恵は、病院からアルバイトへ行くのである。



冷房の聞いた横須賀線の車内座席に座った恵は、連日の看病で少し疲れていた。

そんな時は、携帯の陽一の画像を見る。

そして「陽一・・・会いたいよ・・・」と口にしてしま



アルバイトに行くと、茜が積極的に動いてくれるので、恵は少し楽する事ができた。

茜は恵に、優しい言葉をべちゃくちゃと掛けずに、ただ黙々と仕事をこなしていた。

休憩時間に「ごめんね茜」と恵がすまなそうに言うと、茜は話しをわざと変え

「いよいよ一回戦だね。あした病院でちゃんと見るんだよ。もし見られなかったら私録画しているから、DVDにして貸してあげるよ」と笑顔で言った

茜は強かった。

壊れそうな恵を何も言わずそっとサポートしていた。



茜と恵の大変さをよそに、港南学院は恐ろしい快進撃を見せ連日甲子園を沸かせていた。

1回戦は文麿が大爆発した。

なんといきなりサイクルヒットを放ったのだ。

「打った!一ノ瀬!これでなんとサイクルヒット!恐るべきトップバッターだ!」と実況が大興奮した



2回戦。陽一のバットが火を噴いた

「徳永!また打ったあ!そのままレフトスタンド!二試合連続のホームラン!」



3回戦。陽一と真の甲子園初のアベックアーチが出た。

「遠山行ったあ!右中間スタンドだ!恐るべき高校生だ!」



準々決勝。153の全員安打の圧勝。

「止まらない!誰も止められないのか!」

そしてこの日陽一は2連続ホーマーで、大会5本目の本塁打を記録し、真も今大会2本目の本塁打を放った。

横須賀中央駅では、駅前のオーロラビジョンで連日彼らの活躍が映し出されたが、横須賀だけではなかった。

今や全国の高校野球ファンが、この高校生離れしたチームに注目を注いでいた。

そしていつしかファンは優勝候補筆頭の『淀商高校』と港南学院の対戦を心待ちにするようになった。

写真素材 PIXTA
(c) monjiro写真素材 PIXTA


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