フォーエバー・フレンズ -328ページ目

11、愛する心(5)

準決勝は小雨がぱらついていた。

対戦相手は京都代表の『聖法館高校』

しかしここで港南学院はつまづいた。

聖法館は予選からの港南学院の映像を入手し、陽一と真の研究をしていたのだ。

その結論は、陽一はアンダースローに弱い。

は胸元をつくシュート系もしくは速いストレートの球に弱いだった。

そしてなんと両方の打者にワンポイントリリーフをぶつけてきたのである。

ファーストには真専用の投手を守らせ、ライトには陽一専用の投手を守らせた。

しかしこの日の速見は強く、立ち上がりに崩れなかったのである。

聖法館高校は、速見のスクリューボールをことごとく凡打した。

そして得点は00のまま、そのまま延長戦に突入していった。

延長戦になると雨が少し激しくなってきた。

延長12回裏2アウトで陽一苦手のアンダースローを迎えていた。

すると3塁コーチャーズボックスの司はタイムをかけて、陽一の下へとやってきた

「徳永君バットを短く持って欲しい」

「こうか?」陽一は拳二つ分バットを短く持った。

「うん。それでね1、2、サン!で打っていたのを、1、2、3数えた後に打って欲しいんだ。狙い球はカーブだよ。カーブ投げる時にサイン送るから、それを打って欲しい」

「わっ・・・わかった」

「あのピッチャーやっぱり三流だよ。簡単にクセがわかった」司はそう言って陽一の下を去った。

なんだあの『チビ』と相手チームは思っただろう。

真は「陽一、俺までまわせよ」と陽一の背後から声を掛けると、陽一は笑った。

5球投げたあと、司はサインを送った。「徳永君次だよ」

陽一の放った打球は、ライトセンター間を抜けていってツーベースヒットとなった。

陽一は2塁上で泥だらけになりながら、雨の甲子園の上空にむけてほえた。

次は真だったが、再びシュート系のワンポインリリーフをぶつけられた。

するとまた司がやってきた。

「なんだよお前!」真はウザそうな目で司をみた。

「遠山君シュート打ってみない?」

「無理打てねえよ。苦手だからさ」

「打てるよ。遠山君は脇の開きがちょっと大きいから打てないんだよ」

「お前なんかむかつく奴だな」真は司の屁理屈が嫌いだった。

「脇にちょっと力を入れる程度でいいんだよ」

「そんなもん即席でできるかよ!」真は司を無視して、バッターボックスに向かおうとした。

「向こうだって即席ピッチャーじゃないか。即席には即席で勝負してやればいいんだよ」

と言って司は口を尖がらせた。

すると今度は修二が伝令にやってきた。

「なんだよ。今度はお前まで」真は呆れかえってきた。

「遠山さん監督はシュートを叩けと言っています」

「なんだと!」

「ほら監督も同じでしょ」司はニリと笑った。

「クソわかったよ!やればいいんだろ!」さすがの真も古屋監督の命令には逆らえない。

「サイン出さないよ。初球シュートで入れてくるからさ」そう言って司はコーチャーズボックスへと戻っていった。

古屋監督は司に部分的な戦術は、ある程度任せていた。

司の考えている理論と古屋監督の理論はウリ二つだからだ。

そうやって武南の小林も攻略してきたのだ。



見事的中した。

真の打った初球のシュートは、雨傘の咲く甲子園のレフトスタンドへ消えていったのだ。



病室で恵は両手を胸元に組みながら思わず「やった!」と叫んでしまった。

「サヨナラだ!サヨナラツーランだ!遠山打ちました。4番の意地を見せた!」

イヤホンから耳奥に伝わる実況を耳にした。

「決勝進出を決めたのは、大阪の淀商!。そして神奈川の港南!。春に続き大阪対神奈川の対決となりました」



観客席で試合を既に終えた淀商チームは、この一戦を雨合羽を着ながら見ていた。

淀商の監督は松永と言い、とても無口な人間である。

その松永監督は「なるほどなあ・・・そら武南も負けるわ」と関西弁で独り言のように言った。

すると隣にいた主将の大河内「あのチビがモーション盗んどるみたいですね」と同じく関西弁で言った。

「うん・・・ウチらが小林倒したのと同じや。ところで大河内、港南の速見のクセわかったか?」

大河内は首を横に振った。

「そやろうな。あの古屋って監督がそんなもん修正させとるやろ」松永監督はそう言いながら少し苦笑いをした。

「でもウチの篠宮だって盗めませんから。あさっては本当に強いチームが勝つって事です。つまり勝つのはウチですわ」大河内は合羽のたまり水を滝のように流しながら、ゆっくりと立ち上がった。


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