フォーエバー・フレンズ -322ページ目

13、まけるもんか(1)

「由香子!」恵はそう言って、少し擦り傷の残真っ白な由香子の左手を両手で力いっぱい握り締めた。

「恵・・・痛いよ」

「ごっ、ごめん」そう言うと、恵は由香子の手を放した。

「私どうしてここにいるの?」由香子は今の状況が、全く掴めなかった。

恵は由香子に一部始終説明をした。

恵の説明で、由香子は「そうだ・・・。私、バイクに乗って飛ばされたんだ・・・」と全て思い出した

そしてその瞬間「一ノ瀬は大丈夫だったの?」と恵に聞いてきた

すると恵は笑ってテレビの画面を指差した。

そこにはバッターボックスに立つ文麿の姿があった。

「今決勝戦なんだよ」と恵が言うと「そう・・・あいつ・・・本気だったんだ・・・」と言って、由香子は文麿の言葉を一つ一つ思い出した。

そして「一ノ瀬・・・」と言って涙ぐんだ。



7回裏。1アウトランナー無し打席に立つのは文麿だった。

誰も篠宮を止められないと思った時、文麿のバットが試合の均衡を破っ

篠宮が自信をもって投げたストレートを文麿は渾身の力ではじき返した。

そしてボールは左中間を思い切り破ったのだ。

文麿の足はどんどん加速していき、そのまま3塁まで突っ込んでいった。

バババッと煙をあげて3塁に滑り込んだ文麿はベースを拳で思い切り殴った。

「やったぜ!」文麿は、ユニフォームに着いた土をパンパンと手で払うと、観客の声援に応えるように、拳を振り上げた。

修二が凡打した後、陽一がバッターボックスに入った。

大河内はカーブのサインを出したが、初球ストレートが飛んできた。

タイムをかけ大河内はマウンドに駆け寄った。

「篠宮、どうしたんや」と言うと、篠宮はしばらくうつむいて「データーなんて通用しない」とつぶやいた。

「なん

「監督の言ったとおり、徳永にデーターなんて通用しませんよ」と大河内に食ってかかった

「篠宮・・・」大河内はしばらく黙り込むと、黙って去っていった。

そしてプレーが再開された。

第二球目、篠宮は恐ろしい気迫で投げ込んできた。

陽一は思いっきり空振りした。

すると電光掲示板は148km/hを記録し、甲子園はどよめきの声があがった。

そして球目も恐ろしい気迫だった。

陽一はまたしても空振り。

遂に電光掲示板は150km/hを記録した。

篠宮は、陽一を三振に打ち取らんばかりに、力を振り絞って球目を投げた。

それは篠宮にとって最高の球だった。

篠宮の投げた球は、ゴウッといって唸りをあげるストレートだった。

しかし陽一の体反応し、思いっきり振りぬいた。

カキーンという音が鳴り、ボールは右中間へ飛んでいった。

低空弾道の飛球はフェンスに向かって一直線飛んで行き、観客は一斉に顔を左中間へと向けた。

ボールはフェンスへ直撃した。

その瞬間甲子園は揺れ動くのではと思う程の大歓声があがった。

文麿は右手をあげて、楽々ホームインした。

打った陽一はセカンドベースにスライディングし、右手拳を甲子園の空へ向けて突き上げた。

2だ。

陽一のタイムリーに、甲子園は物凄い大歓声がこだまするようだ

そして次にバッターボックスに立つのは不動の4番真である。

「真・・・頼むぞ」陽一はバッターボックスに堂々と立つ真の姿を見つめた。



篠宮はマウンド上で呆然としていた。

渾身を込めて投げたストレートをはじき返されたのである。

すると一気に体に疲れを感じてきたのだ。

36度の猛暑は、篠宮の体を容赦なく蝕んできたのである。

敵は相手チームだけではない。自分の中にも敵はいるのだ。

そしてこの不動の4番打者へ投げた初球、真はしっかりと打ち返したのだ。

得意の流し打ちは、ライト前ヒットとなった。

陽一は3塁ベースをまわり、一気にホームベースへと突っ込んだ。

真は一塁ベース上で手を上げて、人差し指を空に向けた。

甲子園は割れるような大歓声をあげた

7回裏港南学院はついに同点に追いついたのだ

1塁側の港南学院ベンチは、立ち上がってガッツポーズをする選手達溢れかえった。

写真素材 PIXTA
(c) hit31写真素材 PIXTA


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