フォーエバー・フレンズ -303ページ目

1、スカウトの旅(5)

「大谷君は半年前に、野球部を辞めたよ」

「そうなんですか・・・」陽一は少しガッカリした表情をした

「うん、やる気が無くなったとか言ってね。まあ確かに良い投手だったよ。しかしねえ」

「しかし何ですか?」

「大谷君は素行が悪いんだよ。まあウチの生徒はほとんどが悪いんだけどね」

実は箱根学園は、全国から「もう学校に来ないで欲しい」と言われた不良少年達の受け皿学校であった。

大谷清志朗という生徒は、平塚市の平塚西中学という中学に通っていたが、あまりにもの不良で、学校が手を焼いていたのだ。

そして連発する校内暴力が原因で、遂に「もう学校には来させないで下さい」と学校側から言われ、平塚西中を追われた。

よって清志朗の親は、わが子をこの全寮制の箱根学園に預けたのだ。



だが陽一は橋本先生に「本人に会いたいのですが」と言った。

「まあ会うのはいいが、結構厄介な奴だよ。ウチのような学校でも、1、2を争う程のワルだからな」

「それでもいいです」



昼休みに会わせてくれるというので、恵と陽一は学校の近くの喫茶店に入って時間を潰す事とした。

そして二人は熱いカプチーノを飲んだ。

「陽一、ここ結構ヤバイ学校だよ。私思い出したんだ。2中で一番悪かった子もココの高等部に入学したもん」と恵は心配そうに陽一に言った。

だが陽一は「知ってるよ」とあっけらかんと言った。

「じゃあ、何故会うの?怖いじゃん」

「ワルだから会うんだよ」

「陽一が何考えているのか、さっぱりわからない」

恵は陽一のまた宇宙人的な所が出たと思って、呆れ返ってしまった。

すると陽一は「恵、野球は不良っぽい奴の方が向いているんだよ」と熱めのカプチーノに口をつけながら言った。

「どうして?野球には関係ないじゃん。格闘技ならわかるけど・・・」

「ウチの野球部見なよ。文麿や真のような悪がいる。だけどどうだ?そんな奴ほどピンチで大活躍してないか?」

恵は言葉を失ってしまった。

陽一の言う通りであったからだ。

文麿は、県大会準決勝で、全員が打てなかったアンダースロー投手をコテンパに打ちのめし、チームを勝利に導いている。

そして全国大会の初戦でも、サイクルヒットを放ってチームを一気に波に乗せた。

真もそうだった。

甲子園準決勝に放ったサヨナラホームランや、決勝戦の延長12回で修二がアウトになって結局負けはしたものの、あの2アウト満塁の場面で見事タイムリーを放っている。

そしてこの二人の共通点は、手が付けられないワルであった。

陽一の野球の哲学は『悪い奴はピンチに強い』であった。

 

昼休みの時間になり、陽一と恵は校舎の中へ入って行った。

生徒達は全員丸刈り頭だったが、目つきはとても鋭く今にも絡んできそうな感じがした。

あたりからは「おお!徳永じゃん!甲子園に出てた徳永じゃん!」「なんだよあいつ徳永の女か?徳永にしちゃあシケた女連れてんな」と恵の悪口まで聞こえてきた。

恵はあまりの恐ろしさで、そんな悪口に言い返す事も出来ず、ひたすら下を向いて廊下を歩いた。



やっとの思いで応接室にたどり着くと、応接室の中から「ガラガラガシャン!」という音が聞こえ、「何でそんな奴に会わなきゃいけねえんだよ!勝手に決めんじゃねえよ!」と怒鳴る少年の声が聞こえた。

すると、バキ!っと人を殴る音が何発もなった。

その音を聞いて陽一は、咄嗟に応接室へ入った。

すると橋本先生が、生徒を何発も殴っていた。

あわてて陽一が橋本先生を止めに入ると、殴られていた生徒は「これだからムカツクんだよ。反抗すればすぐ暴力だ」と言って、応接室を出て行った。

「あの野郎・・・調子コキやがって」橋本先生は捨て台詞を吐き、そして「アイツが大谷だよ」と言った。

恵と陽一の二人は呆然とした。



何がなんだか理解が出来ず、恵と陽一は校門を出ると、公園のブランコに清志朗がいるのを見つけた。

すると陽一は「恵、悪いけど飲み物買ってきて欲しい」と言って、恵に500円玉を渡した。

「あの子と話すの?」

「ああ」

「じゃあちょっと行ってくる」恵はジュースを買いに行った。

陽一はブランコに乗る清志朗に歩み寄った。

「大谷」

「あん?徳永じゃん。港南の人が来るって聞いたから、監督でも来るのかと思ったよ」

「俺がスカウトやってるんだ」

「変な学校・・・でっ俺に何の用だよ」

「実は、野球の腕を見てみたいんだ」

「お断り。俺、野球やらねえ」

「何でだよ?いい素質持っているって聞いたぞ」

「ガセだよ」

「ピッチング見たいんだよ」

「嫌だ」

このように押し問答を続けていると、恵が暖かい缶コーヒーとミルクティーを持ってやってきた。

恵を見た清志朗は「お姉ちゃん!」と言って驚いた。

「えっ?何?お姉ちゃん???」恵もいきなり清志朗に姉ちゃんと呼ばれて、驚いた

「いや・・・なんでもねえよ」

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