フォーエバー・フレンズ -301ページ目

2、姉との思い出(2)

次の日は日曜日だった。

清志朗は約束どおり、港南学院へとやってきた。

そして、司を相手にピッチング練習を始め、陽一はスピードガンで計測をしていた。

恵はずっと清志朗のピッチングを見ていた。



スピードガンは133キロを計測した。

半年のブランクを計算すれば、なかなか速い球だった。

そして陽一は、バッターボックスに立って、清志朗の球筋を見始めた。

それはシュート系のノビのある球筋で、速度こそ足らないが、以前陽一達が打ち破った小林の球筋によく似ていた。

そして陽一は「大谷、変化球は何を持ってるんだ?」と聞くと、清志朗は「清志朗でいいよ。シュートとスライダーだよ」と言った。

「投げてくれ」

「ああ」

1球目にスライダーを投げた。

なかなかのキレだった。

そして2球目にシュートを投げた。

これもなかなかのキレだった。

しかし、このまあまあの変化球に、陽一と司は驚いた。

清志朗の変化球は、スライダーもシュートもまったく同じ位置から曲がったのだ。

「清志朗もう一回投げてくれ」陽一がそう言うと、清志朗は「あいよ」と言って2つの球種を投げた。

やはり、二つの変化球は全く同じ位置から曲がった。

つまり右に曲がるか、左に曲がるかが、手元まで来ないとわからないのである。

「司、どうだ?」

「徳永君。彼は使えるよ」

すると清志朗が笑って「実はもう一つ武器があるんだよ」と言った。

「球種は?」陽一がそういうと、清志朗は笑って「ビーンボールだよ」と言った。

「ビーンボール?」陽一と司は驚いた。

「胸元から、15センチのところに、シュートを投げ込むんだよ」

陽一は少し考ると、清志朗に「投げてくれ」と言った。

すると清志朗は、陽一の胸元スレスレにシュートを投げ込んできた。

その瞬間陽一は当たると思い「うわ!」と言って驚いて、体をのけぞらせた。

清志朗は得意気に「これが俺の一番の得意玉だよ。絶対デッドボールにはならないようにしてる」と言って、笑った。

「こいつ・・・できる・・・」陽一は感心してしまった。

この内角スレスレのボールは、時に140キロの速球以上に力を発揮する。

このビーンボールを自在に操れる清志朗は、針の穴をも通すコントロールの持ち主だった。



司と陽一が部室で打ち合わせしている間、恵と清志朗はベンチに座っていた。

「清志朗君、合格するといいね」

「合格しても無理。箱根学園を出たら住む家が無い」

「お父さんにお願いしなよ」

「話の分かる親父じゃないよ」清志朗はそういうと、寂しげに空を仰いだ。

「ねえ清志朗君、聞いてもいい?」

「なんだよ?」

「私の事初めて見たとき、『お姉ちゃん』って言ったでしょ?なんでなの?」

清志朗はしばらく黙っていた。

「答えたくない?」

「うん・・・」

恵は「じゃあいいよ」と言って、微笑んだ。

すると「なあ、恵さん。俺と付きあわねえか?」と清志朗はいきなり恵に告白してきた。

だが恵は呆れた顔で「いきなり何言ってるの」と言った。

「ダメ?」

「陽一がいるからダメ」

「じゃあ俺と二股かけりゃいいじゃん」

すると恵は清志朗の頭をゴツンとやった。

「痛!」

「マセた事言うな」

恵には、清志朗と同じ歳の弟がいるので、年下の男の扱いは慣れていた。

「そりゃ高校野球のスターと付き合ってりゃ、俺なんて相手にしねえよな」と言って、清志朗は少しふてくされた。

「あのね、私は陽一がスターだから付き合ってるわけじゃないの。別に彼が野球やめたって私の気持ちは変わらない。彼のひたむきな所が好きなの」

「いいなあ・・・俺も恵さんに愛されたいよ・・・」

「私ね、清志朗君と同じ歳の弟がいるんだよ。淳紀っていうの。だからお姉さんにはなってあげれるよ」

「彼女じゃなきゃやだよ」

「うるさい!」そう言って恵は少しだけ笑った。


清志朗君って本当はいい子なんだなあ・・・。


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