フォーエバー・フレンズ -300ページ目

2、姉との思い出(3)

陽一と司が部室から出てきた。

そして司が「清志朗君合格だよ!」と言った。

すると清志朗は「じゃあ帰るよ」と言って、ベンチを立った。

恵が「何処行くの?」と聞くと、清志朗は「箱根」と一言言い「有難いけど無理。何度も言ってるけど、平塚の家には帰れないんだよ。俺中学出たら働くしか道が無い」と言った。

陽一は少しだけ考えた。

そして「清志朗、お前の家の場所教えてくれ。お前の親父に会う」と言った。

清志朗はその陽一の言葉に少し驚いた。

ここまで清志朗に食い込んでくる人間は、今までいなかったからだ。


そしてこの瞬間、徳永陽一という人間と野球をやってみたいと清志朗は少しだけ思った。


清志朗は少し悩んだが「わかったよ。徳永さんが親父と会うのはいい。でも俺は親父とは会わない」と言った。

「それでいい」

清志朗は陽一に住所を教えて、箱根へと帰っていった。

恵は陽一がまた何か企んでいると思い「陽一、清志朗君の家に行って何するの?」と聞いた。

「高校に入学したら、清志朗を家に住ませてとお願いする。恵もついてきて欲しい」

「えっ!私?」

「恵に会うと、清志朗は急に心を開きだした。それに清志朗の『お姉ちゃん』という言葉も気になる。この問題は恵にヒントがあると思うんだよ」



大谷建設。

神奈川の中堅ゼネコンであり、そこの社長をしているのが、清志朗の父親である。

清志朗には2人の兄がいて、全員秀才であり一番上の兄は東大生で、次男は中央大生。

そしてその下に清志朗がいた。



玄関先で恵と陽一を迎えた清志朗の父は、恵を見て一瞬驚いた。

「恵理・・・」

恵は清志朗の父の『恵理』という言葉にキョトンとした。

「すまん、人違いだ・・・」



そして二人は応接室に通された。

応接室の中はバブルの面影を残すように、趣味悪く虎やキジの剥製が置かれていた。



「清志朗を家に入れる事は出来ない」清志朗の父はキッパリとそう言った。

「どうしてですか?」陽一がそう言うと、清志朗の父は「あんなワルを許すわけにはいかん。あいつは落ちこぼれだ」と冷たく言い放った。

「そこをなんとかお願いできませんか?野球の特待生で入れたいんです」

「野球なんてやってどうするんだ?野球が将来何の役にたつ?世の中は競争社会だ。そんなもんにうつつを抜かすなら、勉強しろ」

すると今度は恵が口を開いた。

「勉強だけが全てじゃないです」


何故か恵のその言葉に、清志朗の父は黙り込んだ。


そしてしばらく経つと「駄目なものは駄目だ。君たち帰りなさい」と言って清志朗の父は席を立ってしまった。

二人はしぶしぶ清志朗の家を出て、あてもなく歩いた。

「ややこしそうだな」

「そうね」

「なんかさあ・・・特待生の事はどうでもよくなってきたよ」

「どうして?あれだけ清志朗君の事買っていたのに」

「清志朗をなんとかしてあげたくなってきたんだ・・・」

陽一は清志朗を他人に思えなかった。

だけど、自分の力ではどうにもならない大きな壁を感じていた。

そんな事を思いながら歩いていると、一人の若者が声を掛けてきた。

「あの・・・・」

「何ですか?」と陽一が尋ねると、その若者は「清志朗の兄です」と言った。

清志朗の一番上の兄・・・つまり東大生の兄だった。

「ど・・・どうも徳永です」

「山野です。はじめまして」

二人は簡単に挨拶をした。

すると清志朗の兄は、清志朗の姉である『恵理』の写真を二人に見せた。

それは恵と全く瓜二つの女性であった。

「恵???」

「これ・・・私?」

二人が驚くと、清志朗の兄は「姉です」とポツリと言った。

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