2、姉との思い出(1)

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恵と陽一と清志朗の3人は、箱根学園の隣の公園にいた。
清志朗は陽一の質問に、ずっと黙っていた。
ふと恵は「清志朗君て何処に住んでるの?」と優しく聞いてみた。
すると清志朗は「実家は平塚だよ・・・今はすぐ傍の寮に住んでる」と口を開いた。
今度は「野球は好き?」と聞いた。
「そりゃあ好きだよ・・・・」と清志朗は言った。
「何でやんないの?」
「殴られてばかりじゃ、嫌になるよ。この学校の先生すぐ暴力だからよ・・・」
清志朗は恵に、少しだけ心を開きだした。
そんな清志朗の態度を見て、陽一はこの場面を恵に任せてみようと思い、黙っていた。
「港南にはそんな先生いないよ。だから陽一にピッチング見せてあげて」
「無理。まず俺ここの寮出たら、家がないんだよ。だから港南にはいけない」
「平塚に家があるんでしょ?十分通えるじゃん」
「親父が家にいれてくれねえ。俺親父に嫌われてるからさ」
「どうしてなの?」
「兄貴達と比べて、出来が悪いからだろ。嫌になっちまうよ」
「じゃあ野球やって見返してあげればいいじゃん」
「勉強できねえ奴はダメなんだよ。野球が出来たって親父は絶対に認めねえ。もうあんな家には帰りたくもねえよ。中学出たら働いて、一人暮らしするよ」
すると陽一が立ち上がった。
そして突然「大谷、お前、親父に認められたいんだろ?」と言い出した。
「何だよいきなり」
「親父に認められたいのに、相手にもしてくれない。だからお前モメ事起こすんだろ?親父にもっと俺を見てくれって」
「なんだよお前!やんのかよ?」清志朗も立ち上がった。
だが陽一は清志朗に容赦なく言い続けた「それに殴られてばかりで嫌になる?お前だっていろんな人殴ってきたんだろ?殴られる人の痛みが少しはわかるだろ」
「くっ・・・・」
「平塚西中で、お前に傷つけられた奴が、いっぱいいるんじゃないのか?」
「なんだよ!ここまで来てお説教かよ。お前なんかと話ししたくねえよ。じゃあな!」清志朗はそう言うと、二人の前から去って行った。
「清志朗君!」
恵は止めようとしたが、清志朗は走って去って行った。
恵と陽一は、あてもなく箱根の町を歩いていた。
「陽一、何であんな頭ごなしに言うの?」
だが陽一は黙っていた。
「せっかく心開いてくれたのに、陽一の一言でまた元に戻っちゃったじゃん。大体陽一いつもいきなり言うし・・・」
「あいつ、俺と同じなんだよ・・・」陽一はポツリとつぶやいた。
「同じ?どう言う事?」
「俺も親父に認められたくて野球やってた。ただ、親父が俺に求めていたのが野球だったから良かったんだ。もし野球以外を求められていたら、俺もあいつと同じだった」
恵も清志朗と話していて、陽一とフィーリングがなんとなく似ていると思っていた。「・・・なんか分かる気がする・・・」恵は思わず言ってしまった。
だから清志朗は恵に心を開いたのだろうか?
そしていつの間にか箱根の街は夕方になっていた。
「恵、帰ろうか」
「うん」
そう言うと二人は、強羅駅へと歩き出した。
すると改札口で、一人でたたずむ清志朗がいた。
「清志朗君・・・」恵は少し驚いた。
すると清志朗は「悪かったよ・・・徳永さんの言う通りだよ・・・」
「大谷・・・」
「俺、本当は親父に認められたい・・・。でも勉強なんて俺苦手なんだよ・・・親父は俺の事なんて相手にしてくれねえ・・・だから親父に見てもらいたくて、モメ事ばっか起こしてた。あんたの言う通りだよ・・・悪かった」
清志朗の意外な素直さに、陽一は少し驚いた。
そして陽一は「俺も言い過ぎたよ。悪かった」と言って、清志朗に謝った。
「気に入るかどうかわかんねえけど、俺のピッチング見てみるか?」
「ああ、でも今日はもう遅いから、明日また来るよ」
「いや、俺が港南に行くよ。二度も来てもらうのは悪いしさ・・・」
「そうか、じゃあ10時にウチの学校に来てくれ」
「わかったよ。必ず行く」そういうと清志朗は箱根の街へと去っていった。
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