フォーエバー・フレンズ -283ページ目

5、春の合宿(5)

そろそろ対外試合の自粛が解けようとしていた3月下旬。

陽一率いる港南学院野球部は、いよいよ本格的な練習へと入っていった。

春の合宿が始まったのだ。

合宿と言っても、箱根や伊豆でやるのではなく、春休みに入った港南学院高校の校舎で寝泊りして朝から夕方まで厳しい練習をするのである。

発案者は古屋監督であった。

古屋監督は、合宿によりチームの一体感が生まれると思っていた。

そしてこの合宿には、4月から特待生として入学する、清志朗も加わっていた。

その清志朗は文麿相手に、バッティングピッチャーをつとめていた。

「おい小僧!投げろ!」その文麿の乱暴な言葉で、清志朗の心は一気に火が付いた。

そして思いっきりビーンボールを投げてきたのである。

「うわ!」と言って文麿は体をのけぞると、そのまま尻餅をついてしまった。

そして「この野郎!」と言って、ピッチャーマウンドへと走っていった。

清志朗もグラブを投げ出して、喧嘩を始めようとした。

それを見た部員達は、一斉に止めに入った。

「文麿!止めろ!」陽一が文麿を後ろから羽交い絞めにすると「徳永!止めるな!こんな小僧にナメられてたまっかよ!」と言ってひたすら暴れた。

すると清志朗は暴れる文麿に「何ムキになってんだよ。おっさん」と言ってニヤリと笑った。

「お・・・おっさんだと・・・てめえ!」

文麿にとって陽一以来の天敵が現れた。



そして休憩中、文麿は真に愚痴りだした。

「大体よう、あんな態度の悪い奴入部させる徳永が悪いんだよ」

そんな文麿の愚痴に、真はずっと黙っていた。

「まずさあ、先輩に対する言葉使いがなってねえよ」

すると真は「お前が人に言えるのかよ。お前だって速見さんに敬語の一つも使った事ねえじゃねえか」と言った。

真には頭の上がらない文麿は、黙り込んでしまった。

すると、校門の方から茶髪の女性が歩いてきた。

その茶髪の女性はローライズのジーンズと黒いブーツをはき、まるでこれからライブでも始めるかのようだった。

そんな女性を遠目に見た真は「また変な奴がやってきた。まともな奴いねえのかよ」と言って、その場に寝転んだ。

すると文麿が「あいつスカジョじゃん。真の女だよ」と言った。

「なんだと!」真は起き上がって、その女性を見た。

なんと茶髪の女性は茜だったのだ。

茜はゆっくりとセクシーに歩いてきた。

そんな茜の姿に、野球部員からは「おおお」というどよめきが上がった。

「真、頑張ってる?」

「茜!なんだよその格好はよ!」

「ああこれ?ローライズのジーンズ買ったんだ。カッコイイでしょ。髪も染めたよ」と言って笑った。

真の合宿中に、茜は一気にイメチェンをしたのだ。

「茜!髪染めるんじゃねえよ!」

「うるさい。大きなお世話。真にそんな事言われる筋合いはない」茜はそう言って立ち去ろうとした。

すると真が「大体お前、学校に何しにきたんだよ!」と言って茜を叱ると、茜は「入学手続き」と一言だけ捨て台詞のように言って、去って行った。

スカジョを退学した茜は「高校卒業の資格ぐらいは取っといた方がいい」と言う恵の薦めで、4月から『港南学院高校通信教育課程』に入学する事となった。

茜の場合はスカジョで取った単位がある為、自宅学習と月一回の登校により2年で卒業できるらしい。

茜が去ると、真はふと三つ編みの髪を胸元へとたらしていた、茜の『スカジョ』時代を思い出した。

そして「あの時は可愛かったなあ・・・」と寂しげに言った。

そんな真の姿を見て、横にいた文麿は大爆笑した。

そして「ギャハハ。真、全然ダメだな。完全に尻に敷かれてんじゃん!」と言った。

真はそんな文麿の頭をゴツンとやった。

「真!いてえな!」

「うるせえんだよ」

文麿は真に頭が上がらず、真は茜に頭が上がらなかった。



清志朗の球は、誰も打てなかった。

球速は速見より若干速いぐらいだったが、スライダーとシュートが全く同じ軌道で曲がる為、物凄く打ちにくい。

そしていつやって来るかわからないビーンボール。

選手は、狙いだまを絞れなくなってしまうのだ。

そんな清志朗の投球をネット裏で見て、古屋監督は「こいつで間違いない」と確信を持った。



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