フォーエバー・フレンズ -285ページ目

5、春の合宿(3)

そして二人は仲良く晩ごはんを食べた。

陽一は本当に美味しそうに、恵の作った手料理を食べていた。

すると恵が突然「あのね・・・陽一のお母さん多分この部屋にいると思うよ」と言い出した。

「えっ?」

「私、陽一のお母さんと、さっきまで一緒に料理をしてたんだ」と言って、恵はニッコリと笑った。

そんな恵を見て、陽一は不気味に思った。

「恵、大丈夫か?頭おかしいんじゃないか?」

「本当にこの部屋にいるんだってば」

その言葉を聞いて、陽一は背筋がゾクッとしてしまった。

「恵、この家にお化けがいるって事か?」

「お化けじゃないよ!お母さんじゃん!」

「お化けだろ?死んでるんだぞ」

「お母さんだってば」

そして恵は思い立ったように話し出した。

「ねえ陽一、どうしてお母さんの事を話さないの?」

陽一は恵にそれを言われると、以前同じ質問をされた時と同様に、黙り込んでしまった。

「恵、あのな・・・男が母親の思い出をベチャクチャ喋るのってかっこ悪いだろ。俺、あんまり話したくないんだよ」

「そんな事ないよ。ねえ、お願い聞かせて。陽一のお母さんに興味があるんだ」

陽一は少し考え込んだが、恵にそこまでお願いされると、さすがに話さない訳にもいかず、遂に母親の事を話し出した。

「優しかったよ・・・。だけど、俺の母親というよりは親父の女だったよ。だから親父のいう事には、俺以上に従順だった」

恵は興味深く、陽一の話を聞いた。

「それに親父は子供の頃から俺に、母親がいると思うなと言って教えてきた」

「なんで?そんなのおかしいじゃん」

「俺の家はそうだったんだよ。野球選手がマザコンじゃ困るって。だから俺は子供の頃から母親とは距離を置いて育ってきた」

「そんな・・・それじゃあお母さんが可哀相だよ・・・」

「仕方ないだろ。そんな男と結婚して、そんな男に何も言えなかったんだから。それに俺がつらい時だって、お袋はいつも親父の味方になった。だから俺はお袋の事が、あまり好きじゃない。優しいだけで自分というものを全く持ってない人間だった思う」

「陽一、違うよ。お母さんは、そんな人じゃないと思うよ」

陽一は何も言わずに、目を閉じた。

「私、同じ女だから、お母さんの気持ちがなんとなくわかる。陽一とお父さんとの間に挟まれて、きっとつらかったはず・・・」



その後、陽一と恵はソファーの上でキスをした。

そして、そのままなんとなく男女の関係になってしまった。



二人は、暗くなってた部屋のベッドでそのまま寝ていた。

「しちゃったね・・・」と恵はポツリと言った。

「・・・怒ってるか?」

「ううん・・・いずれこうなると思っていたから・・・大丈夫・・・」

そう言いあうと二人は黙って、風の音を聞いた。



しばらくすると恵は、興味本位に陽一の胸を触りだした。

「恵、くすぐったいよ」

「陽一って胸にあんまり筋肉ついてないんだね。もっとマッチョかと思ってた」

「ああ、胸と腕はあんまり鍛えない」

「どうして?」

「野球にはあまり必要が無いからだよ。いつも足腰と背中と腹筋を鍛えてるよ」

すると今度は、陽一の腹筋を触りだした。

「ボコボコしてる・・・次背中見せて」

まるで身体検査のようだった。

陽一が背中を向けると、鋼のような背中に恵は驚いた。

そして「すごい・・・パンパンだ・・・」といって陽一の背中を軽く叩いた。

「野球に必要な筋肉は、足腰、背筋、腹筋だと思ってるんだ」

「そうなんだ」

すると今度は陽一が「恵は、思ってた以上に胸があるよな」と言いだした。

その言葉を聞くと、恵は「陽一のエッチ!」と言って頭から布団を被った。

「あっ!ひどいよ。自分だけベタベタ触って」



その日恵は、茜の家に泊まると嘘をついて陽一の家に泊まった。

そしてベッドの中で、陽一の肌の温もりを感じながら、夜更け過ぎに寝ついた。



その晩、恵は陽一の母の夢を見た。

それは陽一の家の台所で、一緒に料理を作る夢だった。

そして美しい笑顔の陽一の母は料理を作りながら「恵ちゃん、陽一の事お願いするね」と言った。

恵は、去年の春に見続けた野球少年の夢を思い出した。



そうか・・・わかった・・・。

あの夢は陽一のお母さんが私に見させたんだ。

あれは陽一のお母さんの思いだったんだ・・・。

本当は陽一を富士急ハイランドに連れて行きたかったし、苦しい練習から救ってあげたいとも思っていたはず。

だけど、厳しいお父さんの為にそれが出来なかった・・・。


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