フォーエバー・フレンズ -282ページ目

5、春の合宿(6)

夜になると飯盒炊飯で、陽一はみんなの為にカレーライスを作った。

そしてグラウンドにシートを敷いて、全員夜空の下でカレーライスを食べた。

「うめえ!」天邪鬼な清志朗ですら、思わずそう言ってしまった。

真は一口食べると「陽一ってこんな料理できたか?」と言って不思議な顔をした。

「うまいだろ。俺特製の『海軍カレー』だよ」陽一は自慢げにそう言った。

実はこの海軍カレーの作り方は、合宿前に恵から教わったものだった。

しかもカレー粉は、恵が作ったものだった。



陽一違うよ、まず肉と野菜から炒めるんだよ。

水はこれくらいだよ。

カレーパウダーはこれ使ってね。私秘伝のスパイスだよ。

ひたすら弱火で煮込むと、これぐらいのトロミになるんだよ。

それで最後に、インスタントコーヒーをこれぐらい入れるんだよ。

恥ずかしいから、私の名前は出さないでね。



陽一は恵のそんな言葉を思い出していた。

横須賀名物海軍カレー。

明治時代、この横須賀の地に拠点を置いた帝国海軍は、軍艦の中でもカレーが振舞われていた。

そして帝国海軍はその硬派な海軍カレーの味を力にし、やがてロシアのバルティック艦隊を打ち破る程強くなっていった。

その海軍カレーを頬張りながら、陽一は横須賀の夜空を見上げた。



入学式前日の午前に、春の合宿は終了した。

合宿を終えた陽一は、家へと帰った。



「おかえり、陽一」

合宿を終えたこの日、恵は陽一の家で陽一を待っていた。

「ただいま」

「合宿疲れた?」

「大丈夫だよ」

そんな事を言いながら、二人は昼ごはんを食べた。

すると恵は突然「ねえ陽一、明日4月6日は何の日か知ってる?」と陽一に尋ねた。

この恵の質問に、陽一は焦りだした。

女からこの質問をされると、男は誰もが焦ってしまう。



何の日だろ?

恵の誕生日は、10月28日だろ・・・。

付き合いだした日は七夕だろ・・・。



そんな焦る陽一を見ると、恵は「明日は、横須賀線の中で初めて陽一と会った日だよ」

と言った。

「えっ?あれからもう一年経つのか?」

「そうだよ。私その日の朝バイトに行くのに、電車に乗ってたんだ。そしたら陽一と出会った」

「恵、痴漢にあってたな」陽一はその時の恵を思い出して笑った。

「でも今考えれば、その痴漢した人にお礼言わなきゃいけないよね」恵も冗談交じりにそう言って笑った。

そして恵は思い出したように「あれ?それじゃあ今日は春の甲子園の決勝じゃない?確か前の日に、淳が昼ごはん食べながら高校野球の決勝見てたもん」

「そうだった!忘れてた!」

陽一は恵の言葉で思い出し、慌ててテレビを付けた。



選抜高校野球決勝戦。

春の甲子園球場には大波乱が起こっていた。

淀商高校のエース篠宮が、相手チームに打ち込まれ、火だるまとなっていた。

3回裏を終え0―8。

『淀商高校VS仙台学園高校』の試合は、序盤から仙台学園が怒涛の攻撃を見せていた。

そう、陽一の古巣の『仙台学園高校』だった。

そして、仙台学園の打者が篠宮からホームランを放った。

その姿を、テレビ画面で見た陽一は「堀場・・・」とポツリと言った。

「えっ?堀場?」



陽一の古巣仙台学園は、圧倒的な大差で淀商高校を破り、見事選抜優勝を果たした。

それは港南学院にとって新たなる強敵の登場だった。


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