フォーエバー・フレンズ -273ページ目

7、心の変化(4)

5月に入った土曜日、世間はゴールデンウィークの真っ最中。

恵と陽一の二人は横浜で映画をみていた。

3D映画の迫力に圧倒された二人は、興奮冷めやらぬままマクドナルドに入った。

「すごい映画だったね」

「そうだな。でもちょっと目が疲れたよ」陽一はそう言うと、ハンバーガーを頬張った。

「ねえ陽一、陽一ってファーストフード好きだね」

「そうかなあ・・・まあファーストフードが一番手っ取り早いよな」

「それで晩御飯も外食でしょ?」

「まあ、そうだなあ・・・普段は練習で疲れて帰るから、自炊する気持ちになれないよ」

身寄りの無い陽一にとって、家庭の味なんて縁遠かった。

恵がいてくれる為、最近は週末こそ恵の手料理を食べていたが、はっきり言って陽一の食生活は無茶苦茶だった。

「私ね、陽一の事が心配」

「何でだよ?」

「外食ばかりじゃ体に悪いよ。それにスポーツ選手でしょ?」

「死にゃしないよ」

そういうと陽一は、ハンバーガーを食べた。



そして二人は、横須賀線の下り線に乗って、帰っていた。

恵は、電車の外に写る薄暗くなった横浜の景色を見ながら、ずっと考えていた。



陽一は一人ぼっち・・・。

しかも毎日物凄い練習をしてる。

とても自炊なんてできない。

私、陽一の面倒をみてあげたい・・・。



そして恵は思い立ったように「ねえ陽一、これから陽一の家に行ってもいいかな?」と言った。

「いいけど、今日は料理の勉強休みだろ?」

「今日は陽一の為に晩御飯作るの」恵はそう言って、微笑んだ。



そして二人は、陽一の家の近くのスーパーマーケットで買い物をした。

恵は今日は陽一の為に、得意料理の筑前煮を作ろうと思った。

椎茸をじーっと見つめ続ける恵に、陽一は「全部同じだろ?」と面倒くさそうに言った。

すると恵は「違うよ。よくよく選ばなくっちゃ」と言った。

そんな真剣な表情で具材を選ぶ恵の姿を見て、「恵はこんな気持ちで、俺の野球道具選びに付き合っていたんだろうな」と思い、思わず笑ってしまった。



陽一の家に帰ると、恵は黙々と料理を作りだした。

そして味見をすると「うん」と言って微笑んだ。

そんな恵を見て、陽一は「何か手伝おうか?」と言い出した。

「ありがとう。でも大丈夫。テレビでも見ててよ」

恵はそう言うと、ひたすた黙々と料理を作り続けた。



本日のレシピは・・・。

『鯖の味噌煮』

『茶碗蒸し』

『筑前煮』

『筍ごはん』

『なめこ汁』

陽一の健康を考えた、恵のメニューだった。

そして二人は仲良く晩御飯を食べた。

「陽一、美味しい?」

「むちゃくちゃ美味い・・・筑前煮も筍も美味い・・・・」

陽一の美味しそうに食べる顔を見て、恵は嬉しい気持ちになった。



陽一のお母さん。

私、陽一の事が大好きです。

このまま陽一のお嫁さんになってみたい。

賛成してくれますか?



そんな事を考えていたら、思わずニヤけてしまった。

「恵、何だよ?ニヤニヤしてさあ」

「えっ?ううん、なんでもない」



次の日の日曜日、恵は母親と一緒にショッピングセンターへ買い物に出掛けた。

洋服をいろいろと見ていたら、あっという間に時間が経ってしまう。

そして二人は、フードコーナーで『たこ焼き』を食べた。

「美味しい」恵は満足気に『たこやき』を食べていると、母親は「恵、卒業後の進路は決まった?」と聞いてきた。

「方向は決まっているんだけど、どうすればいいかわからないんだ・・・」

「恵は何がしたいの?」

「料理関係の仕事がしたい」

「お料理?」

「うん。私料理が自分に向いていると思っているんだ」

「レストランにでも働くつもり?」

「それじゃあ、今と一緒じゃん。具体的には何も決めてないよ」

そう言うと恵は、アイスティーに口をつけた。

「陽一君はどうするの?プロに行くの?」

「何球団かは声が掛かっているらしいけど、なんか煮え切らないみたい」

「どうして?」

「陽一の考えている事はよくわからない。宇宙人だから・・・」

「恵はどう思っているの?陽一君にプロに行って欲しいの?」

「う~ん・・・何でもいい。そばにいてくれたらそれでいいよ」

「でもプロ野球選手になったら、そばにいてくれないわよ」

恵は、その事はずっと考えていたが、答えが出ないでいた。

どうしても現実的に考える事が出来なかったのだ。

そして恵は思いついたように「ねえお母さん、陽一がもし北海道とか福岡のチームに行ったら、ついていってもいい?」と母親に聞いてみた。

そんな恵の相談に、母親はしばらく考えた。

そして「私はいいと思う。でもお父さんにもちゃんと相談しなさいね」と言った。



ある日の夕暮れ時、真と理子が学校の為、茜は一人で部屋にいた。

そして目の前に妊娠判定機を置いて、じっと見つめていた。

やがて変わりだした妊娠判定機の色に、茜は苦い表情をした。


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