フォーエバー・フレンズ -272ページ目

8、料理甲子園(1)

港南学院高校内に衝撃が走った。

それは歴史を変える大きな出来事だった。

掲示板に掲載された新聞部発行の『よこすかWEEKLY』の名物コーナーである、生徒部門別ランキングの『彼女にしたい女部門』で長年首位を守っていた由香子が遂に首位から2位へと陥落してしまったのだ。

由香子に替わって首位に立ったのは・・・。

なんと通信教育課程の大島茜!。

そう、茜が由香子を破ったのだ。

たまに学校にやって来て、通信制の授業を受ける茜は男子生徒の憧れだったのだ。

デジタルパーマの茶髪の髪に、ローライズのジーンズ、そして元名門女子高出身。

男子にとって、こんなミステリアスな存在はいなかった。



その日の2時間目の休み時間、由香子は怒り心頭だった。

「由香子、別にいいじゃん」そんな由香子を見て、恵は思わず笑ってしまった。

しかし由香子は何もコメントをせず、表情も消えうせていた。

それはまるで、スターの座を若手に奪われた女優のようだった。

そして「恵、私が首位の座を明け渡したのがそんなに面白いの?」と言い出した。

「違う!違うよ由香子!」

「私、茜って女嫌い!」

「由香子、私なんてランキングに入った事すらないよ」

「そんなのあたりまえじゃん」とキッパリそういうと、由香子は車椅子で教室から廊下へ出て行ってしまった。

「可愛くないなあ・・・」



ちなみに『彼氏にしたい男』部門では、学校で一番のイケメンで甲子園のスター陽一がトップかと思いきや、一位は野球部の新エース清志朗だった。

なんと陽一は昨年の秋にランキングから外れてしまったのだ。

恵以外の女を相手にしないので、女生徒の心が自然と離れていってしまったのである。



そんなランキング外のラブラブな陽一と恵は、2時間目の休み時間の終わる間際に会っていた。

「陽一、お弁当だよ」

恵は、笑顔で陽一にお弁当を二つ渡した。

「あっ・・・ありがとう。でもなんで二つ?」

「小さなお弁当箱しかなかったの。足らないでしょ?沢山食べるでしょ?」

「あっ・・・ありがとう」

「これからは毎日作る。野球選手は、バランスの良い栄養を取らなければダメってスポーツ雑誌に書いてた」

「でも恵、それじゃあ毎朝大変だろ?」

「どうせ私と淳の分も作るの。それに料理は全然苦にならないから平気だよ」

そう言うと恵はニッコリと笑った。 

「ありがとう。なんか悪いな」



昼休み、陽一は恥ずかしいので、部室で一人恵お手製のお弁当を食べていた。

すると真が、昼寝をしにやってきた。

「おっ、陽一、弁当かよ?」

「ああ」

「お前いいなあ。茜なんてこんな事絶対やらねえぞ。お前、野球選手見る目もあるけど、女見る目もあるよな」

「そうかな?」

「ああ、山野はお前と出会うまでは、パッとしない女だったんだよ。そのパッとしない地味な山野をお前は見抜いたんだもんなあ。今やお前の彼女として、少し脚光浴びてきてるしな・・・」

恵はランキングには入らなくとも、最初は野球部の取材にやってくる報道陣が、グラウンドには姿を見せない陽一の謎の彼女として、なんとなく好感を持っていた。

そのうち全校生徒が、なんとなく恵に好感を持つようになっていった。

陽一はふと箸を止めた。

「あのさあ・・・恵ってなんで俺にここまでしてくれるんだろう?」

「はっ?」

「なんで俺みたいな奴にこんなにしてくれるのかなあ」

「そりゃあ愛だろ」

「俺さあ、恵にやってもらってばかりなんだよ。だから俺から何かをしてあげたいんだ」

「プレゼントでもしろや」

「そんなんじゃない。もっと夢のような物を与えたいんだ」



陽一は、昼食を食べ終えると、校内をなんとなくブラブラと歩いていた。

すると取材に来ていたテレビ局の車が止まっているのを見つけた。

そしてそのテレビ局のワンボックスカーの運転席に、一枚のチラシが入っているのが目に入った。



『女子高生料理甲子園 出場選手募集 新東京テレビ主催』



「これだ!」陽一は思わず大声でそう言うと、テレビ局の人間に「すみません。このチラシ下さい」と言った。



「恵、できちゃった・・・」

「ええ!!!!」

突然の茜の言葉に、恵は驚いてしまった。

バイト先の休憩室の中は、いつもと違って重苦しい雰囲気となった。

「茜、どうするの?」

「おろす」

「遠山君知ってるの?」

「何も言ってないよ」

「どうして言わないの?」

「真、今大切な時期じゃん。そんな事知ったら野球に影響する」

「でも・・・ちゃんと言ったほうがいいよ。二人の間にできたんでしょ?」

「言わない方がいい事だって世の中にはあると思う。黙って中絶する。そしてこの事は、真には一生言わない」

「でも・・・」


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