フォーエバー・フレンズ -270ページ目

8、料理甲子園(3)

その日の晩、真の家では真と茜と理子の3人が食卓を囲んで、晩御飯を食べていた。

「山野が関東大会進出?」

「そう、料理甲子園って番組なの」

すると理子が「私も高校になったら出てみようかな」と言った。

「理子ちゃんも料理得意だもんね」

そんな事を言って楽しく食事をしていると、茜は気分が悪くなってきた。

そして「私、ちょっと横になってくる」と言って、真の部屋へと去っていった。

真はそんな茜の姿をみると「大丈夫かよあいつ」と言った。

すると理子が小声で「おにい、茜ちゃん妊娠してると思うよ」と言い出した。

「なっ、何だって!」

「おにい、声が大きい。ばか!」

「ああ、すまん。でもどうしてわかるんだよ」

「私、女だからわかる」



次の日、真は珍しく嫌いだった司を屋上へと呼び出した。

「遠山君、何?」司はひょっとして殴られるのではと思い、恐る恐る聞いた。

「実はお前に相談があるんだ。まあ座ってくれ」

そう言われると、司はベンチに腰掛けた。

「実はさ・・・子供が出来たんだよ」

「えっ?遠山君に?」

すると真は司の頭をバシッと叩いた。

「俺に出来るわけないだろ!」

「痛いな、わかってるよ・・・でもひょっとして・・・スカジョさん?」

「ああ・・・それで、その事でお前に相談があるんだ」

「だったら、産婦人科に行って、7万円ぐらいで手術できるって聞いた事あるよ」

すると今度は、司の頭を拳でゴツンとやった。

「いたい!」

そして司の胸ぐらをつかんで「誰がおろすって言った。そんな事だったら最初からお前になんて相談するかよ。生むためにどうしたらいいかって聞いてるんだよ」と凄みをきかせた。

「そんなの無理だよ!給料も無いのに!」

「それを考えてくれっていってるんだよ!」

司はしばらく悩んで「わかった、調べてみるよ・・・でもちょっと時間くれるかな。専門外だし」

「わかった。司頼んだぞ」

そして秀才司は、出産補助について調べだした。



だが、なんとその日のうちに、司は答えを出してきた。

そして部活が終わると、そのまま真と司は部室に残った。

「遠山君、出産は以外に簡単な事だよ」相変わらず自慢げな司の言い方に、真は少しムッとしたが、とりあえず我慢した。

「教えてくれ。どうすればいいんだ」

「出産一時金というものがあってさ、遠山君の住む川崎市なら、42万円を補助してもらえる。それで、出産費用を市が直接病院に振り込んでくれるんだよ」

「もっとわかりやすく言ってくれ」

「つまり、安い病院であればタダで出産できてしまうって事」

「そうなのか?」

「問題は生んでからだよ。やっぱり育児には金がかかるよ」

「それはどうすれば解決できるんだ」

「今から節約してお金を貯める事。それしかない。高校生の遠山君には国も貸付してくれない。泣けなしの『こども手当て』がおりるだけ」

「そうか・・・」

「それとこれは当然の事だけど、高校卒業したら働いて、すぐにでもお金を稼ぐ事」

「わかったよ。俺は最初から大学行く気なんてねえしさ」



次の週、東京ドームに『料理甲子園二次予選』の為に200人の女子高生が集まった。

二次予選のルールは、会場に並べられた食材を利用して、5品の料理を作る事。

そして、ご飯物と汁物を必ず入れる事だった。

そして決勝進出者はこの200人の腕自慢の女子高生のうち、たった3名。



茜と陽一は観客席で恵を応援していたが、何処に恵がいるのかわからなかった。

そして茜は双眼鏡で出場選手を見回したが、やはり恵を発見する事ができなかった。

「だめだ・・・恵が何処にいるかわからない」

「仕方ないよ」

すると茜は、思い出し笑いのようにクスッと笑った。

「なんだよ急に笑って」

「去年の甲子園の予選の時、恵とこうやって観客席に座っていた時の事思い出した」

「そうなのか?」

「恵、試合前恐がっていたよ。負けたらどうしようって」

「あはは、俺が弱音ばかり吐くから不安になるんだろうな」

「えっ?陽一君が弱音?」

「そうだよ。俺、恵に弱音ばっかり吐いてるよ。去年の県大会の初戦の前日に、試合やるのが恐い、負けたらどうしようって言ったりさ・・・古屋監督が学校追われそうになった時はもう野球辞めたいって言ったりさ・・・この間練習試合で連敗してた時なんて、キャプテン辞めたいとまで言ったよ」

「そうだったんだ・・・」

「去年甲子園の決勝で、9回裏に俺同点ホームラン打っただろ?あれもさ、バッターボックスに立っている間、助けてって心の中でベソかいてたよ。もう一杯一杯だったよ」陽一は茜にそう言うと、思い出したように笑いだした。

茜は、甲子園の歴史に残る名場面の裏側に、そんな事があったのかと思い少し驚いた。

そして陽一は「俺、本当はダメな男なんだよ」と言うと、茜に微笑んだ。

「でも、恵だから弱音が吐けるんじゃないの?」

「そうかもな・・・」

そして陽一は笑顔で東京ドームの天井を見上げた。

「俺、いつも恵にしてもらってばかりだよ・・・。だから恵を料理甲子園に出場させたかった。今度は俺が応援してみたかったんだ。恵にも俺と同じように夢を見て欲しかったんだ」


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