フォーエバー・フレンズ -265ページ目

9、進路(3)

茜にトイレに連れて行ってもらい、由香子はなんとかピンチを脱した。

そして二人は料理甲子園の会場へと、進んでいった。

しばらく二人は黙っていた。

そして由香子は茜に押されながら「この間はあんな事いってごめん・・・」と言って謝った。

「私も引っ叩いてごめん」茜も同じように謝った。

さらに由香子は「それに、トイレに連れてってくれてありがとう・・・」と言ってお礼を言った。

そんな由香子のお礼の言葉に、茜はあっさりと「困った時はお互い様じゃん」と言って笑った。

やがて二人が料理甲子園の会場に近づいてくると、会場の方から司が走ってきた。

そして「由香ちゃん!どこ言ってたの!勝手に行ったらだめだよ。心配してたんだよ」と言った。

由香子は司の言葉に、また涙ぐんできた。

そして「司、ごめん・・・」といって泣き出した。

「由香ちゃん・・・」

司は少し戸惑ったが、ハンカチを取り出して由香子の涙を拭いた。

茜はそんな二人を見ていると、なんとなく予感したのか自然にその場から去っていった。


そしていよいよ料理甲子園の決勝が始まろうとしていた。

司会者の挨拶が終わると、選手紹介が始まった。

『K1』のリングアナウンスのような調子で、次々と名前が呼ばれていった。

恵は舞台裏で、物凄い緊張感に襲われていた。

なにしろ今まで地味一筋に生きてきた恵にとって、これは生まれて初めての大舞台である。

小学校の学芸会は木か雲の役で、中学校の体育祭の100走ではいつも下位。

リレーでは、いつも誰かに抜かれる。

文化祭の合唱コンクールでもオンチの為、いつも周りの生徒に遠慮しながら歌っていた。

そして学校の成績は中の下・・・。

そんな恵は、陽一のおかげで料理という才能に気付き、今全国放送の収録に姿を現そうとしている。

「港南学院高校3年!やまのー!めぐーみー!!!!」

スタジオ内は、ドライアイスがたかれていた。

すると和服姿の恵がステージに現れた。

和服姿の恵は、どの出場者よりも輝いていて、観客から「おおお」という声があがった。

そして色違いの星のピアスが、両耳に光っていた。

だが、ステージのドライアイスで滑ってしまい、その場でステンと転んでしまった。

「キャッ!」

その瞬間会場から笑い声が起こった。

それを見た茜は「アチャー」と言ってうなだれた。


恥ずかしい!私って本当だめだな・・・。


そんな事を思いながら、恵は恥をしのんで、愛想笑いをしながら起き上がった。


そして決戦前のインタビューが始まり、司会者が恵の側へとやってきた。

「山野さん。今日は和服姿ですが、何か意味があっての和服なのですか?」

「あっ・・・はい・・・えーと・・・あの・・・えーと・・・」恵は緊張の為か、覚えていたセリフが全て飛んでしまった。

茜は「和食で勝負したいと思い、全て和で揃えましたってさっき練習したじゃん」と言ってまたうなだれた。

「恵らしい・・・」陽一は苦笑いをした。

そして言葉に詰まった恵は「ごめんなさい忘れました・・・」と言って、会場の人にすまなそうに謝まった。

するとまた笑いが起こった。

司会者は恵の緊張をほぐそうと思い「山野さんて、古風でかわいいですね」と言った。

その司会者の言葉に、恵はあろうことか「あっ・・・はい・・・そうですね」と言ってしまった。

再び会場から笑い声が起こった。

恵は緊張のあまり、もう何がなんだかわからなくなってしまい、頭の中が真っ白になってしまった。

由香子は見るに見かねて「恵!しっかりして!」と叫んだ。

その言葉に、恵は正気を取り戻し「と・・・とりあえず頑張ります!」と言って、礼をした。