フォーエバー・フレンズ -260ページ目

10、新たなる強敵(3)

翌日、陽一と司は、湘陽大付属の試合を見に平塚球場まで来ていた。

エースの沢尻を見るためだった。

沢尻の球は、去年の武南の小林より遥かに速く、相手チームを全く寄せ付けなかった。

『マルティネス・沢尻・海飛』というのが沢尻の本名で、アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフだった。

「確かに速いな・・・」陽一は思わず息を呑んだ。

「でしょ」

「これは高校生じゃ打てないなあ・・・ランディージョンソンみたいだ」陽一は、真剣な眼差しで沢尻を見つめていた。

沢尻は恐ろしい剛速球で、ひたすら三振の山を築いていた。

そして湘陽大付属は、2回戦を7―0のシャットアウトで勝利した。

試合が終わると、沢尻は観客席の陽一をじっと見た。そして中指を立てて「ファック!」と言った。

陽一は、そんな沢尻を見て、ニコリと笑った。

「司、間違いない。今年はこいつが一番の強敵だよ」

「うん」

「さあ、帰って攻略法を考えよう」そう言うと、陽一は観客席を後にした。


3回戦の相手は、座間の王子高校。

港南学院は、またもや打線が大爆発した。

陽一がホームラン2本を放ち、真は4打数4安打で1ホーマー。文麿も4打数3安打。

10―0の5回コールドで、港南学院は悠々4回戦に進出した。


そんな快進撃の中でも、陽一の気が晴れなかった。どうしても沢尻攻略の糸口が見つからなかったからだった。

そして野球部は、練習後のミーティングを行っていた。

時計の針は、8時になろうとしていた。

だが、ミーティングは水を打ったように、静かだった。

誰も、いい攻略法を考えられなかった。

すると清志朗が「あのさあ・・・打てないんだったら、マウンドに立たせなきゃいいんだよ」と言い出した。

「どういう事だ」陽一は、眉間にシワを寄せた。

「当ててやりゃいいんだよ」

「デッドボールと言うことか?」

「ああ、俺が沢尻の足首狙ってやるよ。足なら危険球にはならねえしな」

すると司が「そんなの卑怯だよ」と言い出した。

しかし陽一は「うん・・・それもありだな」と言い出した。

「徳永君!」

古屋監督も「それも作戦の一つだな」と言った。

「監督まで!」

そして古屋監督は「これも作戦の一つに入れる。しかし、これだけではまだ甘い。明日各自アイデアを持って来い」と言った。

こうしてミーティングは終了したが、司は渋い顔をした。


そしてその帰り、陽一と恵と司と由香子の4人で一緒に帰った。

横須賀線の電車の中で、司は血相を変えて陽一に抗議をした。

「徳永君!あの作戦は無いよ!」

「いや、それも作戦だ」

「そんなのスポーツじゃないよ!」

恵と由香子はいつもとは違う二人を見て、気まずい気持ちになり黙り込んだ。

「じゃあ司、スポーツマンシップってなんなんだ?」

「正々堂々と戦うことだよ」

「司、正々堂々戦う事だけが全てじゃない。反則スレスレで行うこともスポーツだ。アルゼンチンのサッカーを見ろよ。イエローカードスレスレのスライディングタックルをするじゃないか」

「野球はサッカーとは違う」

「基本は同じだ」

「違うよ」

陽一はしばらく黙り込んだが「司、そんなきれい事ばかり言ってたら、奴らだって何してくるかわからないぞ。ひょっとして俺に向かってデッドボール投げてくるかもしれないし」と言った。

司もしばらく黙り込んだ。

そして思い立ったように「わかったよ。でもそんな事するぐらいなら、僕は辞めるよ!」と言った。

そんな言い合いをしていると、電車は鎌倉駅へ到着した。

すると陽一は「司、ちょっとついてこい」と言った。

「ああいいよ」

恵は、二人が喧嘩を始めるのかと思い「陽一!喧嘩はだめだよ!」と言ったが、陽一は無表情で「恵は黙っててくれ」と言って、電車を降りた。