フォーエバー・フレンズ -251ページ目

12、奇襲攻撃(3)

その後試合は一方的な展開となる。

沢尻は港南打線に打ち込まれるものの、なんとかピンチをなんとか切り抜けて、失点を免れていた。

それに対して清志朗は恐ろしい程の絶好調で、なんと5回までパーフェクトピッチングだった。

「よっしゃ!」という声がどんどん大きくなって行き、湘陽大付属はもう『燃える男清志朗』に全く歯が立たなかった。

そして6回表もパーフェクトに抑えると、清志朗は両手を上げて仁王立ちした。

昼下がりのコロンブス、少し客がまばらになってきた。

しかし茜は、休まずに黙々と働き続けていた。

店長は少しお腹が大きくなってきた茜に気を使い「茜ちゃん、休憩しなよ」と言った。

「いい、3時になったら休憩するから」

「今休憩しろって。流産したらどうするんだ」

「そんな大げさな。病気じゃないんだから」

そんな事を言いながら、茜は黙々と後片付けをしていると、突然「あっ」と言ってお腹を押さえた。

「茜ちゃん!」

茜はしばらく呆然としていた。

「大丈夫か?」店長は顔が青ざめた顔で言った。

「動いた・・・」

「えっ?」

「今、動いたよ」茜はそう言うと、店長を見て笑った。

6回裏、湘陽大付属は遂に作戦の決行を決めた。

作戦は、絶好調の清志朗をデッドボールで潰す事だった。

そう、港南学院が沢尻を潰す作戦のうちの一つに入れていたものだったが、なんと湘陽大付属も同じ事を考えていたのだ。

そして5回裏、先頭打者は6番の清志朗だった。

沢尻は大きく振りかぶると、150キロを越える剛速球を清志朗に向けて投げ込んできた。

その剛速球は清志朗の左の腿の外側に、ドスンと言って命中したのだ。

清志朗は「いて!」と言って、その場に倒れこんだ。

それを見た司と陽一は、ベンチから飛び出してきた。

「清志朗!大丈夫か?」

「いててて・・・やられちまった・・・」清志朗はそう言いながら、ゆっくりと起き上がった。

「清志朗君大丈夫?」司は心配そうにそう言うと、清志朗は笑いながら「大丈夫だよ、肉が一杯ついてるとこだからさ」と言って、少し足を引きずりながら1塁ベースへと歩いて行った。

「大丈夫かな?」

「司・・・結構まずいかもしれないな」

「えっ?」

「あそこに当たると、骨は大丈夫なんだけど、踏ん張った時に痛むんだよ」

司はそれを聞くと、下を向いた。

「徳永君ごめん・・・やっぱり徳永君の言うとおり、沢尻を早いうちに潰せばよかった」

「結果論だよ。気にするな」

そして5回裏も港南学院は無得点に終わった。

7回表、清志朗はマウンドに上がったが、投球練習をしていると、左足に痛みを感じた。

「ちきしょう・・・」

そして主審が「プレイ!」と言うと、清志朗は左足の痛みに耐えながら、必死な気持ちで投げた。

しかし、いきなりレフトスタンドへホームランを打たれてしまったのだ。

ホームランを打った湘陽大付属の打者は、ガッツポーズをしながらダイヤモンドを回った。

淳紀は何か異変を感じた。

「おかしい・・・そのコースは当たってもそんなに飛ばないはずなのに・・・」

これで3―1となった。

そして次の打者を迎えた。

清志朗の第一球目を受けると、淳紀は瞬時におかしいと感じた。

まったく球威がなかったのだ。

そして「タイム!」と言ってマウンドへと駆けていった。

「淳紀、なんだよ」

「左足、痛いんでしょ?」

「いたくねえよ」

「嘘言ってもわかるよ」

するとベンチから司が心配そうにやってきた。

「どうしたの?」

「なんでもねえよ!」

すると淳紀が「さっきのデッドボールで、足を痛めてるかと」と司に言った。

「痛めてねえよ!」

司は、清志朗の左外腿をポンと叩いた。

「いて!」

「だめか・・・」司は腕組みをした。

「投げれるよ!」

司は清志朗の訴えを無視して、ベンチの古屋監督に向けて首を振った。

すると古屋監督はゆっくりとうなずいて、手をくるくるとまわした。