フォーエバー・フレンズ -250ページ目

12、奇襲攻撃(4)

横浜スタジアムのアナウンスが鳴った。

「港南学院高校、ピッチャー交代のお知らせを致します。ピッチャー大谷君に替わりまして、庄野君。ピッチャー庄野君」

そのアナウンスを聞いた観客からは「なんだなんだ」とどよめきが起こった。

しぶしぶベンチへと戻った清志朗は、グラブを床に叩きつけると、古屋監督に食ってかかった。

「監督!投げれるつってんだろ!なんで交替なんだよ!」

「まあ、横に座れ」

「俺、帰るよ」

「無理するな。この後も試合があるんだから」と古屋監督は何か自信のある言い方をした。

古屋監督にそう言われると清志朗はふてくされながら、ベンチにドカッと座った。

港南学院高校の投手陣は、清志朗こそ絶品だったが選手層が薄かった。

二番手の投手は、湘陽大付属に打ち込まれさらに一点を取られた。

これで3―2で、一点差となった。

湘陽大付属はじわりじわりと港南学院に追いついてきたのだ。

そして7回裏の攻撃、予定通り修二がセフティーバントを行った。

投げた後、大きく体が右へと流れる沢尻は、このセフティーバントに対応が出来なかった。

そして続く陽一も、セフティーバントをした。

陽一はバントが得意ではなかったが、修二を送ればいいと思って、セフティー気味のバントを試みたのだ。

俊足の陽一は、なんとかセーフになり、ノーアウトでランナー1、2塁となった。

そしてここでバッターは真。

真は、沢尻にいま一つタイミングが合わなかったが、こういったケースでは最低限の仕事をするタイプで、見事ライト奥深くにフライを打ち上げたのだ。

結果修二は、タッチアップで2塁から3塁へと進塁した。

そして古屋監督は、次の打者の俊介にスクイズのサインを送った。

そのスクイズは見事に成功し、修二はホームへと帰ってきた。

これで4―2となり、湘陽大付属を2点差に引き離した。

ベンチが喜ぶ中、古屋監督の表情は真剣そのものだった。

そして「もう一山くる・・・」とポツリと言った。

8回表に、2番手の庄野は1点を失った。

そして9回表、1アウト満塁のピンチ。

あと一人で甲子園の切符をつかめるが、どうしても楽に勝たせてくれない。

そして、バッターは沢尻。

沢尻は庄野の投げた4球目をジャストミートし、ボールは二遊間をぬけてセンター前へと転がった。

3塁ランナーは、楽々ホームインし、更に2塁ランナーまでもが3塁を回った。

このランナーをホームに帰すと、逆転となる。

絶体絶命のピンチだった。

センターの陽一は懸命に走って前進し、ボールをキャッチすると思いっきりバックホームをした。

キーンと陽一の放ったレーザービームに、観客席からどよめきが起った。

そしてその球は淳紀のグラブにバシッと納まり、走ってきたランナーはタッチアウトとなった。

「バッターアウト!」主審の声に、港南学院応援席の生徒は、安堵の表情を浮かべた。

「たすかった・・・」由香子は安心して、ガクッと体の力を一気に緩めた。

「同点かあ・・・」陽一は空を見上げながら、うなだれた。

しかも2アウト、ランナーは1塁2塁のピンチ・・・。

古屋監督は頭をかきながら「だめだなあ・・・投手層が薄すぎる・・・」と呟いて、遂に決心をした。

「司、ピッチャー交替」古屋監督は少しヤケ気味だった。

「誰に交替ですか?」

「陽一」

「えっ?」司は目を疑った。

だが古屋監督は「ピッチャー陽一と言ってるんだ」と言った。

「徳永君に抑えれますか?球筋が素直ですけど」

「あいつのほうがまだマシだ。少なくともこんな大舞台には慣れている」

「わ・・・わかりました」

恵は心配そうな表情でテレビを見ていると、陽一がセンターからマウンドへ走ってくるのに気がついた。

「どうしたんだろ?」

すると横浜スタジアムのアナウンスが鳴り出した。

「港南学院のピッチャー、庄野君に替わりまして徳永君」

「ええ!陽一がピッチャー!」恵は目を大きく見開いて、驚いた。