フォーエバー・フレンズ -248ページ目

13、旧友(1)

陽一と恵は、今日も一緒にいた。

本当に仲の良いカップルだ。

明日陽一は、甲子園へと旅立つので、二人はしばらく会えなくなる。

なので今日は、二人して横浜で陽一の大好きな映画を見ていた。

そして横浜のそごうの中を二人で手をつなぎながら歩いていると、たまたま書店の前を通りかかった。

そこには一冊の野球雑誌が置いてあった。

陽一はその雑誌の表紙を見て「あっ、堀場だ」と言うと、表紙の男性を恵に見せた。



『今大会注目のショートストップ 仙台学園 堀場康平』



「誰この人?」

「仙台学園の堀場だよ。俺の友達なんだ」陽一は自慢げに言いながら笑った。

「あっ!春の高校野球に出ていた人だよね」

「そう、俺こいつと寮で同じ部屋だったんだよ」

「そうなんだ。凄いじゃん。やっぱり昔から凄かったの?」

「いや、俺がレギュラーでこいつは控えだったんだ」

「えっ!そうなの」

「この2年間努力したんだろうなあ。会ってみたいよ」

陽一はそう言うと、さらに雑誌をめくった。

「あっ!若狭も載ってる。前原もだ!」陽一は懐かしい気持ちに浸っていた。



堀場康平は、仙台学園の主将で、今大会陽一と並ぶ注目選手である。

ポジションはショートで、打順は3番。

プロも注目している、バリバリのスラッガーである。

そして陽一の仙台学園時代の親友である。



若狭悠作。仙台学園のエースで、これも陽一と同級生。

140キロ台のストレートと、フォークボールを得意とする選抜大会を制した不動のエースである。



そして前原大治。仙台学園のファースト。

前原は、左打ちの長距離砲であり、高校通算45本の本塁打を放っている。



この主力選手達を抱える仙台学園は、今年の夏の甲子園大会に優勝候補筆頭である。

新聞社予想の優勝候補筆頭は仙台学園、その次に港南学院、そして淀商高校の順であった。

今年はレベルが相当高く、プロのスカウト達もかなり高校生達に期待をしていた。

恵は陽一からその雑誌を取り上げると、パラパラとめくりながら、あるページを陽一に見せた。



『今大会ナンバーワンスラッガー 徳永陽一』



「ほら、陽一も載ってるじゃん」恵はそう言うと、ニコリと笑った。



仁科先生は甲子園に行く準備をしていたが、今年は去年と違い至って楽だった。

宿舎の予約は、去年泊まった旅館から「今年も空けてますよ」と言って電話がかかってきたし、校舎に立てる道しるべの札も去年のを使えた。

バスの予約も、事前にバス会社から営業が来てくれたので、楽だった。

今年の応援バスはなんと50台!

「よし!準備完了!後は行くのみ!」仁科先生は小さくガッツポーズをした。

いよいよ夏の宴が始まろうとしていた。



恵はそれから陽一の家へと行った。

そして晩御飯を食べ終えると、陽一は恵と一緒に黙々と明日の出発の準備をしだした。

荷物が多いのを嫌う陽一は、本当に最低限の支度しかしなかった。

「Gパン一本だけだと不安じゃないの?」

「なんとかなるよ」

「Tシャツも3着だけ???」

「現地に洗濯機があるよ」

「長袖も一枚持っていったら?寒かったらどうするの?」

「いらない」

「スウェットは?」

「いらない」

「パンツも3枚だけ???」

「洗濯機で洗うよ」

「雨が降って乾かなかったらどうするの?」

「2日同じの履いたって死ぬわけじゃないよ」

この発言は、潔癖症の恵にはどうしても許せなかった。

そしてムッとした顔で、陽一のタンスからトランクスのパンツをごっそり取り出すと、無理矢理バックの中に詰め込んだ。

「あっ!恵やめろ!」

「うるさい!」

恵は相変わらずの陽一の変人ぶりに呆れ果ててしまった。

すると陽一は思い出したように「そうだ、リストバンドもって行かないと」と言って、恵からもらった『8のリストバンド』をカバンの中に入れた。

普段は付けない、陽一の勝負リストバンドであった。

そして恵の写真もカバンの中に入れた。

それを見て恵はとてもうれしい気持ちになった