フォーエバー・フレンズ -25ページ目

8、親心と恋心(2)

ある日圭一郎が事務所で経理処理をしていると、突然綾乃が事務室の中へと入ってきた。

「綾乃さん・・・」

「ノンちゃん。今週末空いてる?」

「あ、空いているけど・・・」

「ねえ、紅葉見に行こうよ」

「紅葉?」

「うん。日光東照宮」

「い、いいけど」

なんとなく綾乃のペースにはめられた圭一郎は、週末日光へと出かける事となってしまった。




そしてその晩、居酒屋甲子園に行き、直行にその事を相談してみると、相変わらずの返事が返ってきた。

「もってのほか!やめとけ!」

「でも・・・」

「お前は綾乃さんの事が好きなのか?」

「好きだよ」

「じゃあ付き合えるのか?」

「・・・」

「なんでかなあ。あれは絶対にふしだらな女だ。間違いない。きっと浮気するぞ。しかもお前、今の自分の立場わかってないだろ?」

「立場?俺は今、西原開発工事の専務だけど」

「違う!優太の会社の専務以上に、お前は丸和工務店の2番目の株主だ。つまり大株主なんだぞ。それをよく理解しろ」

「どういう事だ?」

「お前はいずれ丸和に戻る」

「戻らないよ」

「いや、お前にその気がなくとも、戻らざる得なくなる」

「???」

「まず銀行がお前の存在を絶対に放っておかないだろう。その時の事をよく考えて行動しろ。丸和工務店の負債の保証は誰がしてるんだ?」

「親父だ・・・」

「そうだろ。所詮青田って奴は雇われ社長。しかも債務保証出来ない社長なんて大した奴じゃない。やっぱり創業家一族の長男とは権威が違うんだ。きっと青田がヘマしたとき、銀行はお前を擁立させようとする筈だ。もし綾乃さんを連れて丸和工務店に戻ってみろ?その時は絶対にお前の評判に傷がつく」

「そんなおおげさな」

「おおげさじゃない。そんな失敗事例は一杯見てきた。いいか、お前は真面目な女を選べ。アバズレな女が一族を滅ぼす事だってあるんだ」




圭一郎はもう丸和の難しい話をしたくはなかった。ただ、綾乃と丸和工務店という存在は全く相反するものなのかもしれない。勿論実家に帰る気もさらさらないが、直行の言うとおり帰らざる得なくなる可能性があるのも事実だった。
何故なら丸和工務店の債務保証は野島一族が行っていて、メインバンクも青田の事を信頼していない。ましてや圭一郎は下野したというものの、いまだ丸和工務店の株式の11%を保有している。なんだかんだ言っても創業家一族となると、いろいろな弊害が起こりうるものである。