フォーエバー・フレンズ -23ページ目

8、親心と恋心(4)

日光東照宮に着くと、圭一郎と綾乃はその美しい光景を見て、思わず心癒されてしまった。

「見ざる、言わざる、聞かざるだね」

綾乃はそう言うと、思わず目を細めてしまった。そして圭一郎の手を取ると、ギュッと手をつないだ。そして「ねえねえ。お団子食べたい。ノンちゃん奢って」と言って、無理矢理出店へと連れていかれた。

「はいはい」





そして二人でベンチに座ると、綾乃は「みたらし団子美味しい~」と言って、満足げにお団子を食べ出した。美味しそうにみたらし団子を食べる綾乃は、とても可愛く見えた。

そして綾乃は「昔お父さんと、ここに来たことあるんだ」と言って、街路を彩るもみじを見つめた。

ふと圭一郎は綾乃に聞いてみた。「綾乃さんのお父さんてどんな人だったの?」と。

すると綾乃は「大好きだった」言って、父との思い出話を始め出した。

「私が病気になるといつも側で看病してくれた。私が泳ぎたいと言ったら海に連れて行ってくれた。私が、お腹がすいたといったら、近所のマックに連れて行ってくれた。私が疲れたと言ったら、添い寝をして昼寝をさせてくれた。勉強がわからないと言ったら一緒に宿題をしてくれた。鉄棒が出来なくて悩んでいたら、一緒に公園で鉄棒の練習をしてくれた」

そんな思い出話をすると、綾乃は目に涙を浮かべた。

「礼儀正しくて、優しくて、思いやりがあって、いつもあいての目線に立って話してくれた・・・そう、まるでノンちゃんみたいな人だった。お金が無くて貧乏だったけど、でもそれでも父さんと過ごした日々は幸せだった・・・」

「お父さんは今何処にいるの?」

「知らない。私が10歳の頃に家を出て行ってしまったから。それからはお母さんと最悪な毎日。それで中学卒業したら家出した。でも、お父さんを探そうと思って、よく平和島の海辺の公園に行ったなあ。昔お父さん、平和島で働いていたから」





その言葉で、圭一郎は全ての謎が解けた。綾乃に対してこれだけ可愛いと言う気持ちを持ちながら、何故恋愛感情が起きないのかを。

綾乃への想い。それは、姪っ子の友香への気持ちと全く同じだったのだ。

自分自身、彼女の事を一人の女としてではなく、まるで自分の子供のような感情を抱いていたからなのだ。頼りなくて、だらしなくて。フラフラしていて。でもそれでも何とかしてあげたいという親心に近い感情を抱いていたのだ。

そして綾乃自身も心の何処かで父のような存在を求めていた。だからはるか年上の小田社長と愛人関係になっていたのだ。





圭一郎は全てに結論が出た。自分と綾乃は恋愛関係にはなれないと・・・。







帰りは大雨が降っていた。東北道から首都高速へと乗り継ぎ、二子玉川へやってくると、圭一郎は綾乃に対して結論を出した。



「綾乃さんごめん。俺は綾乃さんとは付き合えない」

「なんで?」

「俺・・・綾乃さんを恋愛対象として見れないんだ」

「どうして?教えてよ」

「上手く言えない。綾乃さんが大好きなんだけど、でも・・・付き合えないごめんなさい・・・」

「私がやっぱりふしだらだからでしょ。ノンちゃんの言うとおりフラフラしてるもんね」

「違うよ」

「じゃあどうして!ノンちゃん教えてよ!」

そう言うと綾乃は、ポロポロと涙を流し始めた。すると圭一郎は「子供のような気持ちなんだ・・・」と小さな声で言った。

「子供???」

「可愛くて、愛しくて。とにかくなんとかしたくて。大好きで・・・でも、それは恋愛関係じゃなくて・・・子供に幸せに生きて欲しいと思う親の気持ちと一緒なんだよ」

あまり上手く言えなかった。ただ、圭一郎の気持ちとしては、おおよそこのようなものであった。

すると綾乃はしばらく考え込んだ。そして「わかった・・・」と言って涙目で微笑んだ。

「ごめん・・・」

「ううん。全然いいよ。ノンちゃんの言う通りかも。私、本当は心の何処かでお父さんを求めてるの。とにかく誰かに甘えたくて・・・でも・・・嫌いにならないで・・・」

「嫌いになんてなれないよ。俺は綾乃さんが大好き。だからこれからも何かあったらいつでも言って欲しい。絶対に力になるから。俺、綾乃さんの為だったら何でもするよ」

「ありがとうノンちゃん・・・」

綾乃はそう言うと、ポロリと涙をこぼした。そして自宅前にたどり着くと、綾乃は「またね」と言って、手で雨よけをしながらマンションの玄関へと走り去って行った。