16、ゴールドメダル(3)
港南学院応援席は、もう生徒達が「やったあ!やったぜ!」と泣き叫んでいた。
堀場は大歓声の甲子園の中、真がホームランを放ったライトスタンドをじっと見ていた。
「やられた・・・」
真がベンチに戻ってくると「陽一!」と叫んで、陽一に飛びついてきた。
「真!」
真の筋肉隆々な体に抱きつかれると、あまりにもの重みで、二人はそのまま倒れこんでしまった。
「やったぜ!陽一やったぜ!」
「ああ!やったな」
陽一と真はまるで少年のように、寝転がって抱き合った。
スコアボードの8回表のところに「4」と言う数字が点灯した。
7―4、港南学院は終盤で一気に4点をもぎ取り、仙台学園に3点差を付けた。
8回裏、港南学院の各選手は守備位置へと散っていった。
すると陽一が清志朗に「清志朗!頼むぞ!」と言って、肩をポンと叩いた。
「まかしとけ!」
清志朗はそう叫ぶと、ゆっくりとマウンドへと歩いていった。
そしてマウンドに上がると、左手に付けたグラブをじっと見つめた。
「お姉ちゃん、見ててくれ。絶対に勝つから」
そう言うと清志朗は、甲子園の夏空を見上げ、姉の恵理の笑顔を思い出した。
「お姉ちゃん。絶対に負けない!」
消えかかっていた清志朗の闘志に、再び火がついた。
「どらあ!!!!」
清志朗の大きな声は、甲子園に響き渡った。
「ストライク!バッタアウト!」
「よっしゃあ!」
清志朗は大きなガッツポーズで、思いっきり吠えまくった。
仙台学園は、心に火がついた清志朗に、完全に圧倒されだした。
そして清志朗の気合のこもったビーンボールは、左打者でも通用しだした。
やがてその清志朗の「おりゃあ!」と言う掛け声に、観客は興奮し大声援を送りだした。
「いいぞ!大谷!」
「清志朗!がんばれ!」
完全に試合の流れは港南学院ペースとなり、仙台学園は、総崩れとなっていった。
1年前、たった3人の野球同好会に、ある日陽一が入部してきた。
そして真や修二や文麿が入部し、夜空に9発のロケット花火で復活の狼煙を上げた港南学院高校野球部。
そして2011年8月。
彼らは今、甲子園の栄冠をつかもうとしている。
9回裏、仙台学園の攻撃。
2アウトランナー無し。
バッターは4番の前原。
そして前原の放った打球は、センター上空へとあがった。
陽一はその前原の放った打球をしっかりと見つめると、落下してくるボールを両手でしっかりとキャッチした。
この瞬間、優勝が決まった。港南学院高校の優勝が決まったのだ。
選手たちは、一斉にピッチャーマウンドの清志朗のところへと駆けていった。
そして選手達は涙を流し、もみくしゃになりながら、抱き合った。
外野にいた陽一や真も駆けつけ、みんなと同様に抱き合った。
しかし陽一は、すぐに淳紀がいない事に気がついて、ホームベースの方を見た。
すると淳紀がうずくまっていた。
それを見た陽一は「淳紀!」と言って駆け寄って行った。
淳紀は泣きながら笑っていた。
「徳永さん・・・もう限界です・・・痛くて歩けません・・・肩貸してください・・・みんなのところに連れて行って・・・」
「ああ!わかった!」陽一は笑顔でそう言うと、淳紀に肩を貸した。
淳紀が、陽一に連れられてマウンドへやってくると、清志朗が「淳紀・・・お前って奴は・・・」と言って泣き出した。
「清志朗君・・・」淳紀も少年のように泣き出した。
一年生バッテリー。