フォーエバー・フレンズ -236ページ目

16、ゴールドメダル(1)

恵は何も語らずに、試合を見ていた。

すると恵の顔を知る報道関係者がやってきた。

先程オーロラビジョンに映ってしまったので、試合会場にいる事がバレてしまったのだ。

「やあ、恵ちゃん」

「ど・・・どうも・・・」

「徳永君、勝つといいね」

「はい」

「ところで、徳永君は最近何処の球団に行きたいとか言ってるかな?」

これが嫌で、恵は試合に来なかったのだ。

「特には・・・はい・・・」

「西武とか阪神に行きたいとか言ってない?」

記者のウザイ質問にも、恵は丁寧な言葉使いで「すみません。何も聞いてないんです」と応えた。

「本当かなあ?恵ちゃん知ってるんじゃないの?デートの時とかに、俺本当は西武に行きたいんだとか言ってない?」

「私、何も知らないんです・・・」

恵は下を向いてしまった。

見るにみかねた茜が「ちょっと!」と言い出した。

すると恵は「いいの、いいの」と言ってニコッと笑った。

結局恵は、その後も「はい、ええ」と言って、報道関係者の質問を適当にかわした。

報道関係者が去っていくと、茜は「恵、よく我慢できるね」と言った。

すると恵は「仕方ないよ。私が失礼な事言ったら、陽一が悪く言われちゃうし・・・」と寂しく言った。

恵もつらい立場だった。



7回裏、仙台学園は清志朗のビーンボールが通用しない左打者に、オーダーを組み替えてきた。

そしてビーンボールが全く通用しなくなった清志朗は、じりじりと苦戦を虐げられる事となる。

先頭打者にいきなりヒットを浴びてしまったのだ。

そして次の打者に、バントをされると、打順は一番に戻った。

清志朗は懸命に投げたが、一番打者に長打を放たれてしまった。

3―3の同点で、しかも1アウトランナー2塁。

追いつけ追い越せの試合展開に、観客は固唾を呑んだ。

「タイム!」淳紀は清志朗を心配して、マウンドへとやってきた。

「なんだよ淳紀」清志朗は少しイライラしていた。

しかし淳紀は真っ青な顔で笑顔を作り「落ち着いていこうよ」と言った。

「お前よう、自分の心配しろや。そろそろ交替してもらえよ」

「僕は大丈夫」

清志朗は淳紀の顔を見つめると「困った奴だな・・・」と言った。

すると淳紀は「お互い様だよ」と言って、笑って去って行った。

「あいつ・・・」

淳紀の言葉に清志朗は少し落ち着きを取り戻したのか、次の打者を三振にしとめた。

次の打者は、強打者の堀場である。

清志朗は、堀場の顔をじっと見つめた。

そしてセットポジションから、全力で堀場に向けてビーンボールを投げた。

しかし堀場はまるで読んでいたかのように、ピクリとも動かなかった。

「ボール!」

「ちくしょう!」

そして清志朗は第二球を投げると、これもボール。

堀場は物凄い集中力を見せていた。

そして第三球目、堀場は清志朗の甘く入ったシュートを見逃さなかった。

カキーンという金属音がなると、堀場の打った打球はセンターの陽一の頭上を越えて行き、そのままフェンスへと直撃した。

2塁ランナーは悠々ホームインし、陽一と同じく俊足の堀場は2塁ベースをけって、一気に3塁へと走っていった。

陽一はサードに向けて全力で投げたが、堀場の足は速く、結局3ベースヒットとなってしまった。

これで4―3となり、港南学院は再び逆転をされてしまった。

そして次の打者は、今日ホームランを放っている前原だった。

「クサイとこついていこう」淳紀のサインに清志朗は首をたてに振った。

そしてカウント2―3、清志朗の投げたスライダーがすっぽ抜けてしまった。

「まずい!」

「もらった!」

前原はそのすっぽ抜けを思いっきり振りぬくと、カキーンという音とともに、ボールはセンター奥深くへと飛んでいった。

誰もが入ると思った。

仙台学園ベンチは、全員立ち上がってガッツポーズをした。

しかし名手陽一はそれを許さなかった。

陽一はフェンス一杯に張り付くと「届け!!!!」と叫びながら思いっきりジャンプをした。

そして前原の打ったボールはスタンドに入る前に、陽一のグラブにスポッと入ったのだ。

ボールをキャッチすると、陽一は地面にドドッと音をたてて着地した。

陽一のファインプレーに甲子園は多いに沸いた。

「入った・・・助かった・・・」陽一は、芝生の上にそのまま寝転がって空を見た。

「陽一!ナイスキャッチ!」そう言いながら真がやってくると、手を差し伸べて陽一を引き起こした。

7回裏を終わって4―3。

港南学院は1点のビハインドで、終盤を迎える事となる。

見事なファインプレーに、スタンドから徳永コールが沸き起こった

「とーくーなが、とーくなが、とーくーなが」

その観客の声援に応えるように、陽一は右手を高々と上げると、スタンドから「ワー!」という大歓声が起った。

そして陽一はベンチへと帰っていった。

「陽一君!ナイスキャッチ!」茜はそう言ってパチパチと手を叩いた。

しかし恵は何も言わずに、笑顔で陽一の姿を見続けた。




あの人は本当に陽一なのかな?

ひょっとして、どこかで入れ替わってるんじゃないの?

本当の陽一は宿舎でご飯食べてたりして・・・。




恵はそんな事を思いながら、スーパースター陽一の後姿を見続けた。