フォーエバー・フレンズ -237ページ目

15、決戦(4)

7回表、港南学院は円陣を組んでいた。

そして古屋監督は「お前ら若狭にフォークボールを自由に投げさせるな。やりたい放題やられているぞ」と言った。

「だってよ・・・あんなフォーク打てねえよ」文麿は最後の最後まで、ぶータレだった。

古屋監督は「司、説明頼む」と言って、ベンチに座った。

すると司が自慢げに「単純な攻めだよ。追い込んでからフォーク、追い込んでからフォーク、って感じで・・・みんな面白いように振っているよ」と説明しだした。

「司、どうすればいいだろう?」陽一がそう聞くと、司は「この回だけでいいから、バットを短く持って、フォークを叩こうよ」と言った。

すると今度は真が出てきて「簡単に言うな、どれだけ落ちると思ってんだよ!お前バッターボックスに立って見て来い!」と言って司にくってかかった。

司はあきれた表情で「だからあ、落ちる前に叩くんだよ」と言った。

「落ちる前に叩く????」

「そう、若狭君のフォークは恐ろしい程手前で、ストンと落ちるんだよね。でもバッターボックスの一番前に立つと、まだ落ちる途中になるんだよ。それを叩くんだ。追い込んだら絶対フォークだから読みやすい」

「それじゃあ速球がきたらどうする?」陽一がそう尋ねると、司は「大丈夫!150キロマシンを持っているウチのチームは絶対に打てる」と断言した。

仙台学園のエース若狭にも以外な弱点があったのだ。

その弱点とは手前で落ちる落差のあるフォークだった。

バッターボックスの最前に立てば、そのフォークが完全に落ちきらない内に叩けるのである。

今までの対戦チームは、若狭の速い球に合わせようと、バッターボックスの後方に立っていたので、面白いようにフォークボールの餌食になっていたのだ。



7回表の攻撃は陽一から始まる。

陽一は、マウンド上の若狭をじっと見つめた。

そして若狭はあっという間に陽一を2ストライクに追い込むと、最後にフォークボールを投じた。

陽一は司の指示通り、その決め球のフォークボールを打ちに行った。

すると陽一の打った打球は、レフト線上に落ちていった。

陽一は全力で一塁ベースを駆け抜け、2塁へと到達すると、セカンドベース上でガッツポーズをした。

「さすが司、これならなんとかなる」

そして続く4番の真も、フォークボールを叩いた。

すると、レフト線上の2塁打となり、陽一は俊足を飛ばして3塁を駆け抜け、一気にホームインした。

真はヒットこそ打ったが、嫌いな司の言う通りになった為、少し複雑な気持ちになった。

そして二塁ベース上で「なんかむかつくんだよなあ・・・」とつぶやいた。

そして続く俊介もフォークボールを叩いてレフト前ヒットとなった。

真は、ホームへ帰ってきて港南学院は一気に逆転した。



マウンド上には、仙台学園の内野陣が集まっていた。

堀場は「フォークボール攻略されてるなあ」と言ってうなだれた。

すると前原が「あいつら、バッターボックスの前に立ちだしたぞ」と言った。

それを聞いた堀場は「そうかあ・・・ストレートに自信持ってるんだな・・・」と言って甲子園の夏空を見上げると「淀商とはちょっと違うな・・・」とつぶやいた。

そして若狭に「とりあえず、フォークボールを決め球には使えないな」と言った。

若狭は下を向いていた。

フォークボールを封じられたら、配球が物凄くしづらいのだ。

しかし他に作戦もなく、若狭は小さくうなずいた。

7回表、3―2で港南学院が一点リード。



港南学院の選手達が各ポジションへ散って行くと、仁科先生は嬉しそうに「監督、なんとかなりそうですね」と言って話しかけてきた。

だが古屋監督は難しい表情をしていた。

「監督、どうしたんですか?」

「こりゃ、荒れるよ・・・」

「荒れる?」仁科先生は不思議そうな顔をした。



7回裏、仙台学園のベンチが大きく動き出した。この回の先頭打者を思い切って左打者に替えてきたのだ。

そう、港南学院の考えた若狭のフォーク封じと同じように、仙台学園は清志朗のビーンボール封じに出て来たのだ。

当初、投手戦で始まったこの試合は、頭脳により両エースの伝家の宝刀を封じられ、これより打撃戦へと転換しようとしていた。

そして今、ゲームの流れが大きく揺れようとしていた。


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