フォーエバー・フレンズ -232ページ目

17、メジャーへ(1)

「由香子、何、この車椅子?」恵は、由香子のド派手車椅子を見ながらそう言うと、由香子は自慢げに「デコ車椅子」と言った。

「障害者だって、お洒落が必要じゃん。あ~私もあの車椅子に乗ってみたいなあって思われたい。可愛そうとか言われるのが一番イヤ」

新学期がいよいよ始まった。

恵はいつものように由香子と一緒に通学をしていたが、夏休みの間に由香子は女子高生が携帯電話をデコるようにして、車椅子をデコっていたのだ。

そして今日、この『デコ車椅子』のお披露目となった。

恵は相変わらずの由香子の発想の良さに感心してしまった。

「ねえ由香子、卒業後の進路決まった?」

「私?女優になりたかったけど、諦めてデザイナー専門学校に行く」

「デザイナー?」

「そう、それで将来は障害者向けのファッションブランドを作る」

「凄いなあ・・・」恵は由香子の壮大なスケールに圧倒されてしまった。

「恵は料理学校にでも行くの?」

「働くよ。学校に行くお金が無いもん」

「料理の仕事?」

「そうだよ」

「どこで働くの?」

「何個かはあるんだけどね。陽一の進路次第」

「陽一と結婚しちゃえばいいじゃん。そしたらプロ野球選手の奥さんとして遊んで暮らせるじゃん。料理は趣味でやりなよ」

「それは嫌」

「どうして?」

「自分の力で生きたいの。自分でちゃんと働いて、それでいて陽一の面倒もみたい」

「ふ~ん・・・私には理解ができない」


真は今日退学届けを持ってきたが、提出するかどうか悩んでいた。

学校を辞めずにプロのスカウトが来るのを待つか、それとも辞めて働きながらプロテストを受けるのか、この夏休みの間ずっと考えていたのだ。

そして放課後、真は帰ろうと思っていた時、校内放送が流れた。

「3年F組の遠山君、至急校長室まで来てください」

真にとって放送で呼ばれるのは、1年半ぶりだった。

1年半前は、悪さをしてよく放送で職員室に呼び出されていたからだ。

「なんだよ・・・何もしてねえだろ」

真は面倒くさそうに、校長室へと向かった。


真は校長室の扉をノックした。

すると部屋の中から校長先生の「入りなさい」という声が聞えた。

真は扉を開くといきなり「なんだよ校長」と言った。

すると一人の男性がソファーの上座に座っている事に気がついた。

真をその男性に軽く会釈をした「こ・・・こんちわ」

その男性は「こんにちは」と言うと一枚の名刺を真に手渡した。


『阪神タイガース スカウト担当部長取締役 若林忠彦』


「阪神タイガース?」真は名刺を見て驚いた。

そして真もソファーに座らされ、校長と若林部長の3人の話となった。

「はっきり言う。俺は遠山君を指名したいと思うとる。俺は金本の後任は遠山君しかないと思ってるんや」

「ほ・・・本当かよ!」

「うん」

「助かる、1月始めに子供が生まれんだよ。子供の為にも稼ぎがいるんだ」

「そうか・・・そら頑張らんとなあ。ただし、俺が指名したくても、会議で否決されるかもしらん」

「否決???」

「つまり、俺一人が遠山を指名したいと言っても、他の人間が反対するかもしれんのや」

「そうなったらどうなるんだ?」

「指名はできん」

「そうか・・・」真は少しがっかりした。

「それでや・・・遠山君、プロ志望届けというものを、高野連に提出して欲しいんや。どちらにせよそのプロ志望届けを出してもらわんと指名が出来へんのや」

「プロ志望届け?」

「そう。ドラフト会議前までに、提出が無ければ指名する権利がないんや。顧問の先生に高野連に連絡してもらって用紙とか取寄せてもらえばいい」

結局真は、この日退学届けを出さなかった。

そしてその代わりに、仁科先生にプロ志望届けの手続き準備をしてもらった。